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ふたりで灯す、やさしさのかたち  作者: 流浪の旅人
第2章 ふたりで、ゆっくり歩き出す — “やってみたい”が、芽吹いた日
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61.“誰にも言ったことない言葉”が、なぜここに ― 姉の胸に刺さる静かな一撃

ある日の夜。


ことりは、撮影用の衣装を手入れしながら、

SNSをぼんやりと眺めていた。


ふと、ひとつの投稿が目に留まる。


例の、少し気になっていたコスプレイヤー――

@trace_nao。


投稿は、静かな1枚。

キャラが空を見上げている横顔のショット。

風に揺れる髪。

やさしい光の中で、表情は見えない。


でも――“心が見える”ような写真だった。


キャプションは短い。


「無理しなくていいって、笑顔で言われたときが

いちばん泣きそうになった。

だから、今日は“誰かの代わりにそう言う側”になってみた。」


ことりの指が止まった。


「…………えっ」


時間が、ほんの少し止まったような気がした。


この言葉――


それは、ずっと昔。

まだ尚人と一緒に暮らしていた頃。

深夜のリビングで、ぽつんとひとり、呟いたことがあった。


「“無理しないでね”って、笑顔で言われるのって、

泣きたくなるよね……なんでだろうね」


あの時、家族には言わなかった。

誰にも伝えたことがなかった。


でも――

たしか、部屋の奥から微かな物音がしていた。


(……尚人、起きてたんだっけ)


まさか、とは思う。

でも――


スマホの画面をもう一度見る。

キャラの写真。

そして、そこに添えられた言葉。


(……偶然?)


でも、あまりにも“ちょうどそこ”を刺されたような感覚。


ことりは、スマホを伏せて、

しばらく天井を見つめた。


胸の奥が、じわっと熱くなる。


「この人…

私の中の、誰にも知られたくなかった気持ちに、

どうしてこんなに触れてくるの…?」


答えは出ない。

でも――


“ただの投稿”にしては、

心が動きすぎていた。

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