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ふたりで灯す、やさしさのかたち  作者: 流浪の旅人
第2章 ふたりで、ゆっくり歩き出す — “やってみたい”が、芽吹いた日
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56.届け、“あの人”に ― 投稿ボタンに込めた静かな祈り

夜、部屋の灯りを少し落として。

尚人は、スマホの画面をそっと見つめていた。


選び抜いた、あの一枚。

鏡の前で何度も試した“守るような笑顔”。

そして、悩みに悩んで添えたキャプション。


「“大丈夫”の裏に、

ほんとの気持ちを詰め込むことってあるよね。

この笑顔が、誰かの背中を少しでもそっと押せたら。

……そんな気持ちで撮りました。」


「p.s. “あの人”にも、いつか届きますように。」


指先は、投稿ボタンの上にそっと置かれていた。

でも、まだ押せない。


(これ、もし姉ちゃんが見てくれたら――

何か、感じてくれるかな)


(いや、気づかなくていい。

でも、心に、ふっと残ってくれたら…)


尚人は、深く、深く、息を吸い込んだ。


静かな夜。

誰もいない部屋の中で、尚人の胸の中だけが、

やさしく、あたたかく、揺れていた。


(この一枚に、俺の“今の全部”を込めたんだ)


(だから……)


スマホの画面を見つめながら、尚人は小さく呟いた。


「届いてくれ――姉ちゃんに。

そして、見てくれた誰かの心にも。」


そのまま、ゆっくり、そっと。


“投稿する”ボタンを――


押した。


画面に表示された、自分の投稿。

静かに微笑むキャラが、尚人自身の気持ちを

映し返すように、そこに佇んでいた。


尚人はスマホを胸に当てて、目を閉じた。


「あとは、この子が…俺の代わりに語ってくれる」

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