49.この一枚、なんだろう――心に刺さった誰かの“本気”
週末の夜。
ことりは、ベッドに寝転びながら、
SNSをゆるく眺めていた。
「最近、タイムラインが充実してて楽しいな〜
みんな頑張ってて、刺激になる〜」
ふと、タグを辿って出てきた一枚が、目に止まった。
キャラは、ことりも大好きな少年キャラ。
だけど、それ以上に――
その表情が、目が、空気が――胸を打った。
振り返りぎみのポーズ。
毛先がふわりと舞い、
キャラの目が、“静かな覚悟”を宿していた。
キャプションには、短くこう綴られていた。
「目が合ったその瞬間に、
言葉よりも先に“空気”が届くような――
そんな写真を目指してみました」
ことりは、しばらく画面から目を離せなかった。
(……なに、これ……)
完璧じゃない。
でも――“心の奥”に、なにかがストンと落ちていく感覚。
「すごい…
この子……誰なんだろう」
名前を見る。
「trace_nao」――知らないアカウント名。
フォロー中になっているのに、すぐにはピンとこなかった。
(……あ、数日前にフォローした子だ)
(あのときも「空気感すごい」って思ったけど、
今回は……違う。“本気”が刺さった)
ことりは、そっと「いいね」を押し、
指が止まりかけて――思わず、コメントを書きかけた。
「この写真、…」
けれど、ふと指を止める。
(……やめとこう。なんか、コメントで空気を壊しちゃいそう)
その代わり、ことりは画面を保存し、
お気に入りの投稿フォルダにそっと入れた。
「…いつか、また見たくなる気がする。
そういうのって、あんまりないんだよね」
彼女はスマホを伏せて、静かに目を閉じた。
ほんの少しだけ、胸が温かくなっていた。
「ありがとう、“trace_nao”さん。
…なんだか、今夜は、少し強くなれる気がするよ」




