17.別の話題、でも響く言葉 ― 姉からの“無意識な応援”
日曜日の午後。
尚人は、ことりと一緒にカフェでのんびり過ごしていた。
今日の話題は、珍しくコスプレの話ではなく――
「最近ハマってるお菓子作り」についてだった。
「ねぇ尚人、マカロンって作ったことある?」
「え、マカロン?作ったことないし、なんか難しそう」
「ふふっ、私も最初そう思ってたの。
でも、失敗しても形がちょっと崩れるだけで、味はちゃんとマカロンなのよ!」
「…へぇ、それって慰めにはなるけど、崩れたらちょっとショックじゃない?」
「うん、でもね、不思議なんだけど――
“自分で作ったマカロン”って、それだけでめっちゃ愛着湧くの」
「……愛着?」
「そう!きれいにできたかどうかより、
『これ、自分で作ったんだ!』って思えた時の達成感って、すごいんだよ〜」
尚人は、紅茶を口にしながら、その言葉を静かに飲み込んだ。
(……なんか、今の話、すごく響いた)
(衣装とかメイクとか、完璧じゃなくても――
“自分でやった”って思えるだけで、それって、意味あるのかも)
姉の言葉は、お菓子の話のはずなのに――
尚人の中では、まるで“コスプレ”のことを言われているように感じた。
「姉ちゃんってさ、どんなことでも、
自分の“好き”を楽しめる人なんだね」
「えっ、何それ、急に褒めてくるじゃん(笑)」
「いや、マジで思っただけ」
ことりはちょっと照れくさそうに笑ったけど、
尚人はふとスマホを取り出し、
カートに入れっぱなしだった“小道具セット”をポチッと購入していた。
(俺も、そろそろ“自分だけのマカロン”作ってみるか)
その夜。
尚人はノートに、姉の言葉をそっと書き留めた。
「完璧じゃなくても、“自分でやった”っていう気持ちがあれば、
それはもう、ちゃんとカタチになってる」
そして、その下に小さく――
「今の俺、たぶん、ちょっとずつ“俺のコスプレ”になってきてる」
そんな自信が、そっと芽を出した日だった。




