↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふたりで灯す、やさしさのかたち  作者: 流浪の旅人
第2章 ふたりで、ゆっくり歩き出す — “やってみたい”が、芽吹いた日
PR
30/114

18.仕上げのワンポイント ― 小道具が“自分”を完成させる

ある夕方。

ポストを開けると、小さな箱が届いていた。


中身は、数日前に注文しておいたキャラ専用の小道具セット。

ネクタイピン、腕章、名札風アクセサリー、そして

そのキャラが物語中でよく持っている“小型の本”のレプリカ。


尚人は、箱を手にした瞬間――

心が「カチッ」と音を立てた気がした。


(……これが揃えば、ついに)


部屋に戻って、衣装に着替え、ウィッグを整える。

そして、ひとつひとつ、小道具をつけていく。


シャツの胸元にピンを。

腕にアクセサリーを巻き、手に本を持つ。


鏡の前に立ったそのとき――

まるで、“本当にそのキャラが立っている”ような気がした。


(……これ、俺なの?)


目を見開いた。

驚きと、嬉しさと、ほんの少しの照れくささ。


けれど、そこには確かに“完成した自分”がいた。


「……ふふっ。さて、次は誰をからかおうかな?」


キャラの決め台詞を小声で口にすると、

自然と口元に、いつもの自分では出せない“にやり”とした笑みが浮かんだ。


(なれるじゃん、俺)


それから数分後。

スマホを三脚に立てて、カメラを起動する。


まだ勇気が出なくて動画にはしなかったけど――

初めての“本気の自撮り”を、

数枚だけ、そっとシャッターに収めた。


後で写真を見返すと、

尚人は思わずふふっと笑ってしまった。


「ああ、これ。俺だ、俺なんだ」


“見よう見まね”から始まったすべてが、

いまは、尚人だけの“キャラ”として、確かに存在していた。


小道具のひとつひとつに手を触れながら、

尚人は小さく呟いた。


「ありがとう、俺の“はじめての推し”。

…次は、もっとちゃんと笑ってみよう」


キャラに、少しずつ“自分”が宿っていく。

そんな静かな感動があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。