第七十五話 二上山、再びの対峙
雄岳と雌岳、ふたつの峰の間に広がる開けた平地に、両陣営が向き合っていた。
紡樹たちの背後には、金と紫の光を纏う四神使。結樹の背後には、影を纏う四人の同胞たち。
「――思ったより早かったね」結樹が、いつもの気だるげな調子で笑った。
「約束、守っただろ」紡樹も、静かに笑い返した。
温羅が、豪快に一歩踏み出した。
「小僧ども、面構えは悪くないな。……して、誰が予の相手だ」
阿形が、拳を打ち鳴らしながら進み出た。
「俺が相手します! 正面からの殴り合い、望むところであります!」
「ほう、威勢がいいな」温羅の口元に、笑みが浮かんだ。「よかろう、相手してやる」
将門が、大太刀を担ぎながら、密迹に目を留めた。
「――お主か。がっしりとした体躯、悪くない」
密迹が、拳を握りしめた。
「望むところだ。武人同士、正面からぶつかろうぞ」
土蜘蛛の重なり合う声が、吽形へと向けられた。
「……お主が、絶対防御の使い手か。……我らの数と、真正面からやり合えるか」
吽形が、静かに一歩前へ出た。
「受け止めるだけが、僕の役目ではありません。……お相手します」
最後に残ったのは、稲荷と、輪郭の定まらぬままの人柱の霊だった。
「……お主とは、初めて会う気がする」人柱の霊が、静かに呟いた。
「妾も、じゃ」稲荷は、いつもの軽い調子を消し、真剣な目で見つめ返した。「幻と、名もなき者――何やら、深いところで通じ合うておる気がするのじゃ」
紡樹と結樹は、それぞれの仲間たちが対を成すのを、静かに見守っていた。
「四対四、それぞれの由緒を懸けた戦いだ」結樹が言った。「僕らは、その後だね」
「うん」紡樹は頷いた。「みんなの戦いを、しっかり見届けよう」
風が、二上山の稜線を吹き抜けていった。八つの影が、それぞれの間合いを測り始める。長い旅の果てに辿り着いた、本当の意味での決戦が、今、幕を開けようとしていた。




