第七十二話 影たちの誓い
冥の別宮、黒漆の鳥居の下に、結樹は同胞たちを集めていた。
温羅が、腕を組んだまま口を開いた。
「小僧。景気の悪い顔をしておるな。……怖気づいたか」
「そんなんじゃないよ」結樹は苦笑した。「ただ、少し、思うところがあってね」
「……語れ」土蜘蛛の声が、幾重にも重なりながら響いた。「我らは、お主の同胞なのだから」
結樹は、静かに息を吐いた。
「僕は、紡樹という奴と、本当に、友達になれたと思ってた。……でも、僕には、彼とは違う場所から見える景色がある。消された者たち、名も残らなかった者たち――君たちのことを、僕はずっと、覚えていたいんだ」
将門が、豪快に笑った。
「友を持ちながら、己の道を曲げぬ。……それでよいわい。生半可な覚悟の方が、よほど不誠実というものよ」
「……ここに埋められていた者も、同じ気持ちだ」人柱の霊が、静かに頷いた。「お主は、初めて、我らに形を与えてくれた。その恩は、忘れぬ」
結樹は、皆の顔を見回した。かつては影に過ぎなかった者たちが、今は確かな輪郭を持ち、確かな意志を宿している。
「今日で、決着をつける。……勝つにしろ、負けるにしろ、僕らがここにいたということだけは、誰にも消させない」
「無論だ」温羅が不敵に笑った。「予たちの名は、もはや、忘れられはせぬ」
土蜘蛛の声が、静かに、しかし力強く重なった。
「……我らの声を、聞き届けよ。世界に」
結樹は、対紋にそっと手を当てた。金と黒の光が、静かに脈打っている。
「紡樹。……君は、今頃、視聴者に何を語っているんだろうね」
誰にともなく呟いた言葉が、冥の別宮の暗闇に、静かに溶けていった。
「――行こう。僕らの、答え合わせの時間だ」
黒漆の鳥居の奥、四つの影と結樹の姿が、静かに光の中へと消えていった。




