↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
54/96

第五十三話 双堂の主



礎石の奥、地面が大きく盛り上がり、砂煙とともに、巨大な影が姿を現した。


その姿は、異様だった。右半身は、烏帽子(えぼし)を纏う神の如き白い衣、左半身は、袈裟を纏う仏の如き墨染め――ひとつの体に、神と仏、両方の相貌(そうぼう)が同居していた。


「ようこそ参られた」その声は、ふたつの声が重なり合うように響いた。「わしは、かつてこの二上山に祀られていた者。名すら、今はもう定かではない」


「あなたが、この山の……」紡樹が身構えながら言った。


「神仏分離の折、わしを祀る双堂は引き裂かれた。片方の社は残り、片方の堂は壊された。……そして、わし自身もまた、真っ二つに引き裂かれかけた」


密迹が、懐の那羅延の欠片を強く握りしめた。


「引き裂かれかけた、とは?」


「かろうじて、ひとつの意識として持ちこたえたのだ。……だが、それも限界が近い。長年、光と影、真の忌み子が現れる日を待ち続けておった」


巨大な影は、紡樹と結樹を、交互に見つめた。


「お前たちが、その対か。……見せてもらおう。ふたりで、真に境界を結び直せるだけの覚悟があるのかどうか、をな」


「見せろって、どうすれば」結樹が問う。


「わしを、鎮めてみせよ。力ずくでも、言葉でも構わぬ。……ただし、片方だけの理では、わしは鎮まらぬ。光と影、両方が揃わねば意味がない」


影の輪郭が、揺らめきながら膨れ上がっていく。神と仏、ふたつの気配がせめぎ合い、辺り一帯の空気を重く歪ませた。


「阿形さんたち、援護は……」紡樹が振り返ると、鏑木が首を振った。


「今回ばかりは、神使のみなさんの手を借りるのは、趣旨が違う気がします。……これは、紡樹さんと結樹さんの対話に近いものかと」


結樹が、肩をすくめながらも、覚悟を決めたように前へ進み出た。


「――仕方ない。付き合うよ、紡樹」


「うん」紡樹も頷き、朱印帳を強く握った。「一緒にやろう」


巨大な影が、ゆっくりと両腕を広げた。


「では、参るぞ。――示せ、光と影の理を!」


二上山全体が、轟音とともに震え始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。