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性悪な悪役に仕立て上げられた気弱令嬢は、友情を取り戻して真実を手に入れたい!  作者: 風谷 華
第一章

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第16話 監督室潜入

舞台は監督室前の廊下。

夕刻の鐘が鳴り終わり、校舎はしんと静まり返っている。

その中で、三人だけが息を潜めて立っていた。


「……よし!」

レオンが両手をぶんぶん振って肩をほぐし、大きく深呼吸する。

「僕の華麗なるおとぼけ作戦を見せてあげよう!」


「……華麗に失敗する未来しか見えないが」

アドリアンが即座に冷ややかな視線を投げた。


「任せてよ!」

レオンは胸を叩き、得意げににやりと笑う。

「僕は生まれながらのしっかり者だから!」


「……しっかり失敗する者の間違いだろう」

アドリアンの冷たい一言に、レオンは「おい!」と抗議する。


エレーナは苦笑しながらも、ぎゅっと両手を組み合わせた。

「お願いだから……本当にちゃんと時間を稼いでね」


「うん。じゃあ、いくぞ!」

レオンは勢いよく監督室の扉をこんこんとノックした。


「先生ー! 魔法式の課題が分からないんです!」

「む……?」

中から、低い男の声が返ってくる。


「ついでに姉さんの好きな人も分からないんですー!」

「ちょっ、ちょっと!」

エレーナは思わず真っ赤になって小声で叫んだ。

アドリアンは片手で顔を覆い、心底疲れたように息を吐く。


「はあ……仕方ないな。入れ」

サモン教師のため息混じりの声が響いた。


ーー

監督室は一階の奥、中庭に面した廊下の突き当たりにあった。

昼間は教師が頻繁に出入りするが、夕方以降は人影も少なくなる。

裏側には大きな植え込みが並んでいて、窓はほとんど誰の目にも触れない。


だからこそ――潜入するなら、今しかなかった。



レオンの大声とサモン教師の怒鳴り声が、監督室の中から響き渡る。

廊下の陰で耳を澄ませていたエレーナは、裏の窓に目をやった。


「……ここから、入れるかしら」

声が震える。窓は固く閉ざされ、簡単には開きそうにない。


「風魔法を使え」

廊下の角で見張りをしているアドリアンが、短く告げる。

「……あの手紙にも“風を使え”とあっただろう」


「わ、分かったわ……」

エレーナはごくりと唾を飲み込み、指先を錠に向ける。


(お願い……!)


ひゅうっと小さな風が吹き込み、かちゃり、と軽い音を立てて錠が外れた。


「……開いた!」

「急げ」

アドリアンが周囲を警戒しながら低く声をかける。


エレーナは窓を押し開け、そっと音を立てないように部屋へと滑り込んだ。


ーー


中は薄暗く、書類や帳簿の匂いが漂っていた。

机の上には整然と紙が並び、棚には分厚い魔法書や記録簿が収められている。


(……どこ? どこに隠してあるの?)


エレーナは引き出しをそっと開け――厚い封筒を見つけた。

封蝋には王立学園の校章。


「……これ……!」


中から出てきたのは―― 試験問題の原本。


用紙には画鋲の穴や折り目が残っていて、確かに中庭に張り出されていたものと同じだった。


(間違いない……これが、あの日張り出されたもの……!)


張り出されていた試験問題の原本がここにあるということは、教師の中の誰かが犯人なのだろうか。


だが、胸の奥に重苦しさが広がる。

(……でも、これを見つけただけじゃダメ。教師の中の誰かが“拾って保管した”って言い逃れできる……

……そして、これを持ち出すのは危険。もし“勝手に盗んだ”って言われたら、私まで罪を着せられる……)


エレーナは深呼吸をして、掌を原本の上にかざした。


「――〈映写〉」


淡い光がぱっと広がり、張り出されていた試験問題が監督室にある光景が空中に浮かび上がる。

折り目も、画鋲の穴も、そのまま――映像として忠実に魔法で写し取られていく。

そして張り出されていた試験問題の写しも羊皮紙へ。


「……これなら……証拠になるはず」

小さく呟き、光の写しを魔力で羊皮紙に転写した。


懐にその写しをしまい込み、原本は元の引き出しに戻す。

(盗んだことにされたら終わり……。でも、写しなら、誰にも気づかれない)


その瞬間――。


「先生ぇ! 恋ってどうしたら実るんですかぁ!」

レオンの大声が監督室に響き渡った。


「勉強の質問をしろと言ってるだろう!!」

サモンの怒声が返ってきて、エレーナは思わず笑いをこらえる。


「……ありがとう、レオン」

小さくつぶやき、急いで窓へ向かった。


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