第15話 作戦会議2
「……じゃあ、役割を分けよう」
アドリアンが立ち上がり、黒板の前に移動した。
まるで軍議でも始めるかのようにチョークを走らせる。
「まず僕は、扉の前で人が来ないよう見張る」
さらさらと「見張り:アドリアン」と書き込む。
「エレーナは中を探す役だ」
「えっ、私が……?」
エレーナは思わず声を上げる。
「でも……本当に大丈夫なの? 見つかったら……」
「大丈夫さ!」
レオンが椅子を蹴って立ち上がり、胸を張った。
「僕が教師を引きつける。こういう時のために僕がいるんだ。しっかり者だからな!」
「……僕にはむしろ破壊の神にしか見えないが」
アドリアンの冷たい毒舌が飛ぶ。
「なっ……!? しっかり者だってば!」
レオンが慌てて声を上げる。
「じゃあ聞こう。廊下で壁を吹き飛ばしかけた件はどう説明する?」
「うぐっ……あれは風向きが悪かっただけだ!」
「では、食堂でスープを吹き飛ばして料理人を泣かせたのは?」
「……あ、あれは……鍋が軽すぎたんだ!」
「偶然にしては回数が多すぎる。絵画をぶち破った件もあったな」
「お、おい! いつのことを持ち出してんだよ!」
「極めつけは木に登って降りられなくなった件だ。あれは見ものだった」
「な、なんでまだ覚えてるんだよ!? あれは子供の頃だろ!」
「結論。君は“しっかり者”ではなく“しっかり騒ぎを起こす者”だ」
アドリアンは冷静に言い切った。
「な、なんだとぉ!? アドリアン、今すぐ廊下にでろ!」
レオンが椅子をがたんと鳴らして立ち上がる。
「ちょ、ちょっと二人とも!」
エレーナが慌てて間に割って入った。
「喧嘩してどうするの! 大事なのは協力することでしょう!」
「……ふむ」
アドリアンは肩をすくめ、黒板に「囮:レオン」と書き足す。
「ほら! ちゃんと必要とされてるだろ!」
レオンはふんぞり返って胸を張る。
「僕が囮をやれば完璧さ!」
「……あんまり自信満々に言われると逆に不安になるんだけど」
エレーナがぼそっとつぶやくと、レオンは「アハハ」と乾いた笑いでごまかした。
(……でも、この二人となら、きっとやれるかもしれない)
エレーナは小さく息を吐き、机の上にそっと震える手を置いた。
(……不安だけど、やってみるしかないわ。じゃないと、マルセリーヌはずっと犯人にされたままだから)




