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OTRA VIDA  作者: 杜松沼 有瀬


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7.金属と彫金と合金と 6

「今後、金銀なんかの貴金属を扱うなら気にせんでえぇが、イーリクのような合金、一種類の鉱石じゃなくて、複数の鉱石を混ぜて一つの金属にするときは、混ぜる鉱石の比率が重要になる。おそらく、イーリク以外にもこのゲームにしかない合金があるじゃろうが、合金によって比率が異なるから、最初はこの比率を見極めるのが重要になる」

 四月朔日(ワタヌキ)さんが、すっとミッテルマビグとノーメラをそれぞれさしながら続ける。

「さっき、わしが何度も黒いもんを作っとったのは見とったじゃろ?」

「ん」

「あれが合金の比率を見極めるのに必要な工程の一つじゃ。一度作れれば、必要な素材だけあればインゴットにできるんじゃがの。ああやって比率を見極めて、一度インゴットを自力で作らんと、たとえレシピを見聞きしても作れんのじゃ」

 四月朔日さんが作業テーブルの上のミッテルマビグとノーメラの近くにコムペンサミシェンの入った小さな試験管を転がすと、手のひらをかざして「インゴット生成」とつぶやいた。

 すると、素材が光って一瞬後、そこにはさっき型から取り出したのと同じ棒みたいなイーリクがあった。これ、多分アメリーさんが薬を作った時と同じだ。

「ふむ、やはり一度炉で鋳型(いがた)に流し込んでインゴットまで持っていけば、スキルでも生成できるのぅ」

 テーブルの上に現れた棒みたいなの(多分、インゴットって名前なんだろうなぁ)を持ち上げて、光に透かしたりしてる四月朔日さんを見て、そういえばと思う。

 あの時、アメリーさんは「時間をかけずに稼ぎたいから、職人はスキルを使う」みたいなことを言ってた気がする。本当にそうなのかな。

「ねえ、聞いてもいい?」

「うん? なんじゃ?」

「なんでスキルを使うの?」

「……ほ?」

 僕の問いかけに、四月朔日さんが目を丸くしてこっちを見返してくる。そんな質問をされるとは思ってもいなかったみたいだ。

 四月朔日さんは、持ってたイーリクをテーブルの上に置いてから、う~んと唸り声をあげた。

「なんで、なんでかぁ……。考えたこともなかったのぅ」

「そうなの?」

「そうじゃの。おそらくわし以外の面子に同じ質問をしても同じじゃろう。わしらはなんだかんだOtra Vida(このゲーム)以外のゲームでも、何度か顔を合わせとる。でもって、大体のゲームにおいて、何かを作成するときに大体必要になるもんがスキルじゃ。じゃから、スキルを使って何かを作成するっちゅー事が当然になっとる」

 何かを思い出すように、四月朔日さんは目をきょろきょろと動かしながらも、丁寧に答えてくれる。

「うむ、改めて考えたがの、やはりわしらは「モノづくりをするならばスキルを使う」っちゅーのが頭にあるから、意識してのことじゃないってくらいしか答えられんのぅ」

「ふぅん……そうなんだ」

 アメリーさんは「時間をかけずに稼ぎたいから」って言ってたけど、少なくとも四月朔日さんたちはそうじゃないっぽい。

「あぁ、後はあれじゃな。高品質にはならんが、品質を安定させられるっちゅーのもあるのう」

「品質の安定?」

「そうじゃ。比較的、わしのような鍛冶師は、一点物として同じものを作ったときに品質のばらつきがあっても何とかなるんじゃが、最中(モナカ)のような同じものを大量生産が必要なやつらは、安定して同じ品質のものを作るためにスキルを使うことも多いの。最中のやつなんかは、低品質なら低品質で千~二千と普通にこさえなきゃならんからの」

「バラバラじゃいけないこともあるんだ」

「そうじゃな。特に、最前線攻略をしてるやつ等なんかは、品質で見えないHPのどれくらいを回復したから、残りがどれくらいで……なんて計算をしとるから、品質の一定化は必要じゃ」

 品質の一定化、っていうのは考えたことがなかった。

 ついでに、四月朔日さんの言ってることもよくわかんなかったけど、同じ名前の薬なのに効能が違ったら困るのはわかるから、そういう意味で品質を一定化する必要があるっていうのは理解できる。

「そうなんだ」

「そうじゃな。で、なんでそんな質問になったんじゃ?」

「ん、ここに来る前にいた街で、いろいろ教えてくれた人がいて、その人が「時間をかけずに稼ぎたいから、職人はスキルを使う」、みたいなことを言ってたから、そうなのかなって思って」

「なるほどのぅ」

 僕が答えると、四月朔日さんはもう一度ふむ、と考えこんだ。

「たしかにそういうやつはおる。作る楽しみよりも、金稼ぎを優先してる、職人というよりは商人というやつじゃな」

「……商人」

「そうじゃ。持っとるスキルは職人と同じでも、そういう奴らは向上心がない」

 ……向上心がない?

「不思議そうじゃな。商人と変わらん奴らは、いかに楽に、いかに金銭を多く手に入れられるか、それが基準になっとる。採取採掘は他人に委託して、レシピも他人から聞くだけ。やつらは自分で見つけるという手間は全部省いて、手を抜いて金を稼ぐことに注力しとるのが大半じゃ。じゃから、やつらの販売しとるもんは、品質は良くてもDくらいなんじゃ」

「そうなんだ」

 アメリーさんは、多分そういう人たちのことを言ってたのかな。そういう、楽にお金を稼ぎたい人と、四月朔日さんみたいに「モノづくりをするときにスキルを使う」って固定観念がある人、どっちも最終的にスキルを使って作るから、結果は同じになって、アメリーさんはあんな認識になったのかも。

 これ、帰ったらアメリーさんに教えてあげようかな。

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