6.幻獣と加工と調剤と変人 25
「いいかい? 毎日の晩御飯の後でいいから、必ずその日一日にあった出来事の報告をするように」
「ん」
ニニに確認した内容をまとめ終わったらしいカササギさんが、僕にそう指示を出す。いつも報告してると思うけど、改めての指示に頷いて見せる。
それにカササギさんはホッとしたように息を吐きながら、「ほかに何かやらかしてることないの?」と聞いてくる。
やらかしてることと言われても……。正直、さっき話したことも、やらかしだったなんて知らなかったし。僕としては、何がカササギさんの考えるやらかしなのかなんてわからないんですけど。
僕がそんなことを考えてるのが分かったのか、カササギさんが「とりあえず全部吐きな~」と言われた。
「そういわれても……? 感情石をもらった後は最中さんと生姜さんと一緒にいたよ?」
「ふぅん? 最中、なんかあった?」
矛先が僕から最中さんに向かった。ほんの少しつまんなさそうにしてた最中さんは、カササギさんに話を振られても変わらない様子で、「別に何もなかったよ」とぼやいてた。
最中さん、なんであんなにつまんなさそうなんだろう? さっきまではそんなことなさそうだったのに。
「……なに、最中。なに拗ねてんの?」
「そんなとこ、絶対新しい素材がいっぱいあった……。なんでボクはそこに行けなかったんだよ……」
「あーね……」
最中さんはそういいながら食堂のテーブルに突っ伏してもごもごと何かを呟き続けてた。カササギさんも、ほかの人もそんな最中さんの様子に苦笑してるだけだ。多分、最中さんにはよくあることなんだろうなぁ。
指先でテーブルをいじいじとしている最中さんを眺めていたら、服をくいくいと下に引っ張られる感覚があった。そちらの方に視線を向ければ、ニニが僕の袖を引っ張りながらわたわたともう片方の手を動かしてる。
一瞬何を言いたいんだろうと思ったけど、そういえば似たような空間で昨日拾ったものがあったのを思い出す。
「昨日の?」
「キュキュイッ!」
ニニが頷いて、袖を離したかと思うと、最中さんに向かって腕を振り始めた。
「最中さんにあげろってこと?」
「キュイ!」
ニニが再度頷いたので、あの時拾ったものを思い出す。
あの青白く光ってた盛で拾ったのは、不思議な形をしたちょっと発光してる木の実、発光してた蔓みたいな木の折れた細枝、僕の両手よr値も大きなひし形が集まったみたいな木の実、くるくると巻いてる細長い落ち葉……。
他にも、パッと見た感じではどこからやってきたのかわからない木の実や枝葉もいろいろあった。そういえば、あそこで拾ったものはほとんど鑑定とかしてなかったなぁと思い返す。
一つだけ鑑定したホッフヌングの木の実は、中のわた部分が蛍光塗料にできるっていうくらいしか覚えてないし。
「あそこってまた行けるの?」
「キュキュイ~」
ふつうは行けないところなんじゃないかなぁと思いつつも、ニニにそう尋ねれば、ニニは大丈夫と言いたげに頷いて見せる。なら、足りなくなったらまたニニに連れて行ってもらって拾ってくればいいか。
「最中さん」
「なぁに」
「これあげる」
まだテーブルにいじいじとしている最中さんに、ニニの許可をもらった昨日あの森で拾ったものをぽいぽいと差し出す。
最中さんは不思議そうにしながら僕から渡されるものをぼんやりした様子で受け取ってたんだけど、渡されたうちの何かを鑑定したのか、目を丸くした後に「ひょあああああああああっ!!!!」って奇声を上げた。
「ちょ、最中うるさい!」
「でもこれ見てよ!!! 聖域産の素材なんだよ!!!!」
「は?」
一瞬、食堂内の空気が凍ったみたいに止まって、静かになる。聖域産ってそんなに珍しいものだったのかな。
僕がぼんやりとそんなことを考えてると、最中さんの手の中のものをにらみつけるように見てたカササギさんが僕に視線を戻して尋ねてくる。
「……カナくん、俺たちが見たことないものなんだけど、何渡したの」
怪訝そうな顔でカササギさんに聞かれたから、僕は正直に素直に答えた。
「昨日、ニニが連れてってくれたトコで拾ったやつ。感情石をもらったとこに似た場所だったし、またニニが連れてってくれるっていうから最中さんにあげた」
僕の言葉を無言で聞いてたかと思ったカササギさんは、ガッと僕の頭を鷲掴みして、ギリギリを力を込めながらにっこり笑った。
その笑顔は、背筋がぞわぞわするくらい、怖い感じだった。
「その話は聞いてないなぁ。詳しく聞かせてもらおうか」
そのあと、僕はニニと一緒に食堂の床に正座させられて、寝る時間になるまでカササギさんににっこりと詰問され続けた。




