6.幻獣と加工と調剤と変人 24
明日の作業について頭の中での整理を終えても、まだニニは食事を続けていた。口周りをオレンジ色に染めながら目を細めながらもぐもぐとしているのを、何もすることがないからぼんやりと眺める。
「そういえばカナくん、今日の採掘とかの感想聞いてなかったよね。どうだった?」
「……感想……?」
感想ってなんだ。カササギさんに聞かれてることはわからなくて首をかしげてると、カササギさんが苦笑してる。
「採掘してみて、疲れたとか、面白かったとか、感じたことない?」
感じたこと。お昼前の、あの場所のことを思い出す。本の数時間前の出来事。小さな池と、ニニに指示されて水を飲んだら現れた、青白く光ってる木々の空間と、性別のわからない、声だけの何か。
あれ? そういえば変なことに遭遇してたなって思い出す。
「ニニが案内してくれたとこに小さい池があって、ニニに池の水を飲めって合図されたから飲んだら、青白く光ってる木があるとこにいたんだよね」
「……ん?」
「なんだここって思ってたら、ニニが声だけの人と会話してたんだよね。ニニが「かーばんくるうらると」って呼ばれてたから、「かーばんくる」じゃないのかも」
「……」
「それから、なんかその声だけの人に宝石みたいな石をもらったんだ。感情石っていうらしいんだけど、僕が何かすると色が変わるらしいんだけど、色が変わったら感情鍵っていうのが作れるらしいんだ。そうしたらユーバーの使命が進むんだって」
「……ぉぅふ……」
「ユーバーの使命って何なんだろう?」
そういえばカササギさんに聞こうと思ってたんだっけと思ってカササギさんを見上げたら、カササギさんが目を丸くして顔を引きつらせてた。
「無欲の勝利なのか、これって……」
どうしたんだろうと思う間もなく、カササギさんが頭を抱えてテーブルに突っ伏した。……カササギさんがちょっと変になったなぁ、と思ったら、食堂にいたほかの人もぎょっとした顔で僕の方を見てた。変人だけなんか床に転がってるのか、姿は見えないけど「さすが俺の女神ぅぅぅぅっ!」とかなんとか叫んでた。
どうしようかなと思いながら、あの場所に行くきっかけになったニニを見ると、ニニもちょっと飽きれたような顔で僕を見てる。何が何やら。
「そういえば、カナくんにはこの世界でのプレイヤーの目的を教えてなかったっけ。まぁ、大多数のプレイヤーはほぼ格でギルドに行くから、ギルドから説明されるんだけどね」
そう言って、カササギさんは僕にプレイヤーの目的を説明してくれた。
僕は行ったことがないけど、HELPに書いてあったギルドに行くとそういうのも説明してくれていたらしい。そうなんだなぁと思いながら頭の中で話を整理する。
どうやら、このゲームの世界は数千年前に大きな戦争が起こった世界らしい。その戦争は人間同士じゃなくて、いわゆる神様って呼ばれる存在どうしの戦争だったらしくて、その戦争で神様がいっぱい死んで、世界が壊れそうになったんだそう。
へぇ、このゲームの世界は多神教なんだと、宗教観まであったことに感心してしまう。でも、そんな宗教染みたことは今のところアメリーさんたちからは感じたことないなぁ。
で、神様も全員死んだわけじゃなくて、若干生き残ってて、その生き残りが頑張って世界は壊れずに済んだけど、無理に引き留めてる感じだから結構ぎりぎりで、歪んでるらしい。歪みが原因で魔物が生まれて、魔物は魔物以外を滅ぼそうとしてるらしい。
歪んだ世界を安定させるために、神様がほかの世界に助っ人を要請して、派遣されたのがプレイヤーらしい。
だから、プレイヤーの使命は世界を安定させるための行動をとることらしく、その世界を安定させるため行動というのに、「感情石」というものが必要だというところまでは判明していたらしいけど、それ以上がわかってなかったらしい。
……あれ、このゲームって始まってからちょっと時間たってるんじゃなかったっけ?
僕がそう考えてるのが読み取れたのか、カササギさんが大きなため息を吐く。
「このゲーム、最前線組とかも結構手を尽くしてるんだけど、全くと言っていいほど先に進むためのヒントが出てこなくて、本当に手探り状態なんだよ。その中で、ようやくでてきたのが「感情石」って名称だったんだけど、どうやって入手するのか、感情石をどうするのかは一切情報がなかったんだ」
「ほへぇ」
「とりあえずカナくんが好き勝手やってるのをはたから眺めてたら、俺たちが欲しい情報全部転がってきそうなんだよなぁ……無欲の勝利だよなぁ……」
どこか遠い目をするカササギさん。大変そうだなぁ。
僕がぼんやりとそんなことを考えていると、カササギさんと、いつの間にか食べ終わってたニニが同時にため息を吐いた。
「そんなに情報が足りないなら、ニニに直接聞いたらいいんじゃないの? 僕はニニにそこに連れてかれたんだし」
素直に、僕は僕をその場所に招いた張本人に確認すればいいとカササギさんに伝えるけど、カササギさんは小さく首を振る。
「正直に聞いて、教えてくれるわけじゃないんだよ」
そうなの? 疑問に思ってニニを見ると、ニニは汚れた口元でほんのり汚れた手を舐めながら大きくうなずいた。
そうなんだ。とりあえず近くに用意されてたおしぼりでニニの口元と手を、力を入れすぎないように気を付けながら拭ってあげる。すると、ニニは大きく手ぶりをしながら鳴き始めた。
「キュイ、キュキュキュイーッ、キュィキュキュィーキュッ!」
「……えっと、条件がある……ってことでいいの?」
「キュイキュイ! キュキュキュ、キュィーイ、キュイ!」
「条件が満たされたときだけ、だから聞いても答えられない?」
「キュイ!」
手ぶりと鳴き声の雰囲気から、こういいたいのかなぁってことを口にして確かめると、あってたらしい。ふぅん、ニニに聞いてもダメなんだ。それは大変だなぁ。
僕は疲れたようなカササギさんに大変そうだなぁと思いながら、教えてくれたニニの頭を軽く指先で押した。




