6.幻獣と加工と調剤と変人 19
渡された瓶を鑑定すると、さっきのレシピにあった「材木用接着剤(強)」と表示される。
材木用接着剤(強)
性質:雷属性 品質:B 売価:2500B
材木専用の接着剤。調剤師によって作成された。
材木以外に使用するとうまく接着できない場合がある。
模範的な調剤レシピで作成されており、材木と植物系素材を接着するのに最適。
鉱物系素材も接着できなくはないが、接着力は弱め。
金属系素材に触れさせると、若干の腐食を引き起こすため、金属系素材とは相性が悪い。
ふぅん。今作りたいアクセサリーは木材と花で作ろうとしてるから、この接着剤が良いんだ。鉱石を接着するにはあんまりよくない、と。だから名前が「材木用接着剤」なんだ。
レシピの紙にもう一度目を通すと、他にも「接着剤」ってついてるレシピがいくつもあった。「金属用接着剤」、「鉱物用接着剤」、「水生用接着剤」。
……細かっ! こんなに細かいのってゲームだから? それとも現実でもこんな感じなの? イベント終わったら調べてみよう。なんか、現実で調べたいものがどんどん増えていくなぁ。
「調合や調剤の基本は、今みせた感じなことが多いよ。鉱物系素材は、強酸系の薬剤と混ぜ合わせるとき以外は砂状になるまで砕く。植物系素材の場合、生と乾燥とで若干やり方が違うのもあるけど、大体は同じように細かく砕くことが多いかな。飲料系の薬剤、ボクが大好きなポーション類は乾燥させてない薬草系の植物素材を魔力水とか純水で煮出して作ることが多いね。逆に、塗布系の薬剤は鉱物や乾燥させた植物系素材を細かく砕いで、魔力水や他薬剤、魔力溶ゲル化剤と混ぜ合わせることが多いかも。薬剤と素材を混ぜるときに火にかけるものもあれば、今の材木用接着剤みたいに火にかけないでひたすら混ぜ続けるだけのものもあるけど、比較的飲料系の薬剤は火にかけることが多いかな」
「ふ、ふぅん?」
ポーションの下りだけなんか急に早口でよくわかんなかったけど、とりあえずものによって作り方が若干違うってことはわかった。生姜さんがいたら途中で止められそうだなぁ。
「素材の比率とかって決まりがあったりするの?」
「それもモノによりけりかなぁ。今の材木用接着剤は、メランカリシャ100gに対してボシャフト剤50mlと魔力溶ゲル化剤50mlが基本レシピかな。基本レシピは大抵、基礎素材100gもしくは100mlに対して計算されるんだけど、水系素材は代替合計100mlになるようにするとうまくいく感じがあるね。材木用接着剤の場合はボシャフト剤と魔力溶ゲル化剤がそれぞれ50mlずつで合計100mlだし、三種類以上の場合は、素材強度が強いものは少なめ、素材強度が弱いものを多めに入れるといい感じになるよ」
「素材強度……?」
「そ。まあ、調剤になってから使う部分だけど、よく使う水系素材だと、純水<魔力水<ボシャフト剤=魔力溶ゲル化剤って感じかな。ボシャフト剤と魔力溶ゲル化剤の素材強度はほぼ同じだから、材木用接着剤は1:0.5:0.5の比率でちょうどいい感じなわけ」
調剤になってからっていうのがよくわかんないけど、とりあえずさっきみたレシピ一覧の中でよく見かけた名前だったし、今は聞いた順番に少なくなっていくって覚えておこ。
「一応教えておくと、基礎スキルが調合、調合をLv100にしたら取得できる派生が、上級調合と調剤、さらに調剤をLv100にすると上級調剤と調薬が取得できて、調薬をLv100にしたら上級調薬を取得できる。上級ってつくスキルを取得したら、それぞれ特定の薬剤の効能が上がるんだよね。調合は広く浅くで全部の薬剤が上がるけど、上がり幅は少なくて、調剤は飲料系以外、調薬は飲料系の薬剤効果がめっちゃ上がる感じかな。ボクは一応全部取ってるけど、無理に採る必要はないと思うから、必要と思ったときに取得すればいいよ」
へ、へぇ……、そうなんだ……? 知らなかったっていうか、そういえば僕はほとんどスキルって見てなかったや。っていうか、調剤とかって最初からスキルの一覧になかったっけ? あの一覧、数が多すぎて覚えられないんだよねぇ……。
まあ、必要になったら取ればいいか。
「さて、ボシャフト剤含めて、調合に必要そうなものは大体拠点倉庫に入れてあるし、ボシャフトが手に入ったことでボシャフト剤も量産可能だから、好きなだけ使っても大丈夫だよ。ここでやっても大丈夫だし、カナカくんの使ってる工房でも作れるよ」
「ん、取り合えず自分のとこでやってみる。上手くいかなかったら、聞いてもいい?」
「いつでもどうぞ? たまに爆発してるかもしれないけどね」
アハハ、と笑って頷いてくれる最中さんに頭を下げつつ、渡された材木用接着剤はどうしたらいいんだろうと考えていたら、「それはお手本として持って行っていいよ」と言われたので、遠慮なくもらっていくことにした。
最中さんのいる工房を出たところで、いつの間にか僕の首筋の裏に隠れてじっとしていたニニが動き出して、僕の首に頭突きを繰り返し始める。若干痛いなぁと思ったけど、多分、ニニとしては怖い最中さんに文句を言ったから、何かされるんじゃないかと思って隠れてたっぽい。
僕が最中さんの話を聞いてたから我慢してくれて多っぽいなぁ、これ。感謝の意味も込めて、ニニの頭を指でぐりぐりとしておいた。
さて、とりあえず工房に戻って材木用接着剤を作ってみて、できたらアクセサリーの続きをやろ。
そう考えて階段を上って二階の工房に入ってから、そういえば採掘したものの確認をしてなかったことを思い出す。うーん、確認もしたいけど、とにかくアクセサリーの続きを先にやりたいから、まずは接着剤を作ってアクセサリーを形にすることから始めよう。
昨日のままになってる作業テーブルの上の、ニニを置いてた場所にまたニニを下ろしてから、さっき覚えた作業テーブルメニューを開いてみることにする。
作業テーブルメニューってどこから見るんだろうと考えたら、ひゅんっと僕の目の前にさっきも見たポップアップウィンドウが表示された。
ポップアップウィンドウには、さっき見たとおりにいくつもメニューが表示されていたけど、いくつかがブラックアウトしてるのに気づく。それは、「拠点倉庫から素材を取り出す」や「拠点倉庫へ素材を入れる」みたいな「拠点倉庫」ってついた項目ばかりだった。
拠点倉庫って、地下にあるあの倉庫のことかな。え、もしかして地下に取りに行かなくてもいいってこと? それはそれで楽だよね。この機能、今は使えないみたいだけど、どうやったら使えるんだろう。
ほかのメニューも見てみるけど、よくわかんないから、一度「作業テーブルの基礎設備」を選んでみる。そうすると、新しくポップアップウィンドウには「作業テーブルの付属設備更新」と、「機能の接続/解除」の二項目が表示された。
ひとまず、「付属説部更新」の項目をタップする。ウィンドウには、さっき最中さんのところで見た、フラスコとかフラスコを支える台とかが画像付きでいくつも表示されてる。その中には、小さいものをつまみやすいようなピンセットとか、丸い小さい部品をまとめるのに楽そうなトレーとかいろいろ表示されてて、もっと早く知りたかった気持ちが湧いてきた……。乾燥用の金網とかあるじゃん……。
とりあえず、すり鉢とすりこ木と、それから完成品を入れるための瓶(瓶、別に用意しなくていいのは助かるね)を出して、素材を用意すればいい状態にしておく。
ウィンドウの表示を一つ戻って、「機能の接続/解除」の項目を押してみると、今度は「接続中の機能数:0」と大きく表示されて、その下につらつらと「窯」とか「素材棚」とかいろいろ項目が並んでいて、そのほとんどは「接続可能な設備無し」になってたんだけど、「拠点倉庫」の項目には「未接続」の表示の横に「接続」のボタンがあった。
とりあえず「接続」ボタンを押すと、「未接続」になってた表示が「接続中」に変わって、今度はボタンが「接続解除」に切り替わる。これでもしかして最初に見たボタンが機能してるのかな。
ウィンドウの表示を戻して、一番最初の表示にしたら、「拠点倉庫」とついていたボタンに光が点灯して、押せるようになってた。「拠点倉庫から素材を取り出す」を押すと、新しいウィンドウがポップして、そこには文字でいろんな素材の名前がずらずらと並んでいた。
すご……と思いながら、素材の一覧をスクロールしてみる。見たことある名前もあるけど、見たことないものの方が多い中から、調合に必要なものに触れていく。
メランカリシャと、ボシャフト剤と、魔力溶ゲル化剤を、とりあえずそれぞれ一つずつ選択して、「取り出す」ボタンを押せば、シュンっていう音と同時に、作業テーブルの上にころりとした鉱石と、中身の入った小さな瓶が現れた。




