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OTRA VIDA  作者: 杜松沼 有瀬


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6.幻獣と加工と調剤と変人 18

 知らない素材も薬剤の名前も大量にあるんだけど、今後ほぼ確実に使うんだろうなぁって感じるのは、「鉱石アンベソネン+鉱石フルチェイサム+魔力溶ゲル化剤=鉱石研磨剤」、「鉱石ムンター+鉱石ナチシクト+魔力水=金属酸化防止剤」、「鉱石ナチシクト+鉱石カルツェルヅィグ=金属研磨剤」辺りかな。

 ほかにもいろいろあるけど、正直「金属溶化剤」とか、「鉱石発光剤」とか、何するために必要なのかわかんないんだけど。でも、ここに書いてあるってことはアクセサリー関係で最中(モナカ)さんに注文が入ったんだよね。いつか使うのかなぁ?

「正直、そこに書いてあるのはほんの一例だと思ってほしいな」

「一例?」

「そう。OTRA() VIDA()以外だったら、その基本レシピでほぼ完ぺきなんだけどね。OTRA() VIDA()には代替レシピが大量にあるんだよ」

「そうなんだ」

 僕は代替レシピあるっていいことなんじゃないのって思ったんだけど、最中さんの表情がずいぶんと渋い。どうしてもその素材が手に入らないときに代用できるっていうのは悪いことじゃないと思うんだけど……。

「代替レシピはだめなの?」

「いいや、そんなことはないさ。だけどね、代替レシピが多すぎるんだよ」

「……?」

「カナカくんが使いそうなもののレシピで例を挙げようか。君が欲しがっていた材木用接着剤だけど、基本的にはメランカリシャとボシャフト剤に魔力溶ゲル化剤で作成する。しかし、そもそもこのレシピのボシャフト剤は材料になるボシャフトが鉱石であること以外の情報がなく素材からの作成ができなくて、生成済みのボシャフト剤自体もそこまで大量に購入できるわけじゃないから不足しがちだったことから、比較的用途の近いエラザフルンとレゥーエに魔力溶ゲル化剤でできるエラザフルン剤や、ネウギヤーとミクレディットに魔力水でできるネウギヤー剤に置き換えたり、魔力溶ゲル化剤が不足しているときにヴォルクスマーチェン花とミサス花を純水で溶いた水成魔剤に牙猪の皮革を漬け込んだ後の牙猪のゲル化剤を使ったりといった具合で、とにかくいろんなもので補完ができるもんだから、あとからあとからレシピが増えていくんだよ。代替レシピだと効能が若干違ったりするし……」

 はぁ、と長々と説明したうえでため息を吐く最中さん。生姜さんに散々言われてきたせいか、早口ではなかったんだけど、やっぱり立て板に水って感じで僕の右耳から左耳に流れていくみたいに頭に入らない。

 とりあえずわかったのは、最終的に同じ効能の薬剤を作るためのレシピは一つじゃなくて、いくつもの方法がある、その方法によっては若干効能にブレがある、そういう代替レシピがどんどん見つかるってくらいかな。

 僕としては、あんまり手に入らないものがあって、それがほかのもので代用できるのはいいことだとおもんだけど、最中さんにとっては違うのかもしれないね。

「とりあえず、カナカくんはまず基本のレシピでやる方がいいよ。代替レシピは結構素材容量の対比がシビアになって大変だから、基本で慣れるのが先だと思う」

「基本レシピは緩いの?」

「緩くはないけど、代替レシピほどじゃないって感じだよ」

 そういうものなんだ? と思ったけど、まあ、始めたては基礎からやった方がいいっていうのは納得かな。独学って案外難しいしね。

「じゃ、カナカくん。どれからやる?」

「材木用接着剤と塗料を作りたいかな」

「オッケーオッケー。じゃあ材木接着剤からやろう」

 最中さんはそういって、ささっと作業テーブルの上を整理して、三つの素材を僕の前に差し出した。差し出されたのは手のひらよりも小さな鉱石が一つと、栄養ドリンクくらいの小さな瓶が二つ。瓶の中身は両方とも液体で、片方は若干とろみのついている、粘度のある液体で、もう片方はさらさらとした、ところどころ細かい何かの粒子が混じっている液体だった。

 このなかで、鉱石は見たことがある。アメリーさんのところにもあって、一回購入してみたけどまだ使ってないメランカリシャだ。ほんのりと黄みがかった黒い色をしてる。アメリーさんのとこで見かけた時に、今後金属系のアクセサリーを作るときに、アクセントにできそうだなって思って買った記憶がある。

 さっき見たレシピだと、鉱石であるメランカリシャ以外に必要だったのは、ボシャフト剤と魔力溶ゲル化剤の二つだから、瓶はそのどちらかがそれぞれ入ってるんだろう。まあ、粘度がある方が魔力溶ゲル化剤で、サラサラな方がボシャフト剤だと思うけど。

「じゃあ、とりあえずボクがやってるの見ててね」

 そう言って、最中さんはメランカリシャを手に取ったかと思うと、素早い動きでメランカリシャを作業テーブルの角に何度か叩きつけて亀裂を入れてから、メランカリシャが入るくらいの大き目なすり鉢にメランカリシャを入れて、すりこ木でメランカリシャを細かく砕いていく。

 サラサラの粉状にまで砕けたら、粉のメランカリシャが入っているすり鉢の中に、ボシャフト剤を入れて、軽くすりこ木で中のものをかき混ぜる。ボシャフト剤に軽く浮いていたメランカリシャの粉が沈殿しきってから、魔力溶ゲル化剤の瓶を軽く傾け、少しずつすり鉢に流し込みながら、すりこ木で勢いよく中身をかき混ぜる。

 時間との勝負と言いたげに手早くかき混ぜ続けていると、中身の色が濁った薄い黄色になっていく。濁りは全然取れないけれど、なんとなく最初はそれぞれで層ができていたような気がするけど、それがなくなっていく。

 最終的に、最中さんは先の補材が入っていた瓶よりももっと高さがないけど、もっと口の広い瓶にすり鉢から中身を流し込んでいく。最初の魔力溶ゲル化剤の時よりも明らかに粘度が高くなっているそれをビン詰めし終えると、僕の方にその瓶をすっと流してきた。

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