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OTRA VIDA  作者: 杜松沼 有瀬


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6.幻獣と加工と調剤と変人 17

「キュイッ!?」

 大きな音でキーンとした音が耳の中で反響する中、合わせてニニのびっくりした声も響く。寝てたところに爆音が聞こえたから、驚いたのはわかるけど。爆発音と合わせて僕の耳には大ダメージなんだけど。

「っはぁぁぁ、やらかしちゃった」

 若干遠いところから少しぼわぼわと壁越しみたい感じに、最中(モナカ)さんの声が聞こえた気がする。

「キューイッ、キュキュキュイイイイイッ!!」

「ん? あれ、幻獣くんの声がする?」

「キュッッキュキュッ、キュイイイイッ!!」

「あ、もしかしてタイミングよくドア開けちゃった?」

 ニニと最中さんが言い合いし始めてるけど、まだ耳がキーンとする。朝から耳がキーンとすること多くない? 僕、なんか変なことしてるのかな? 普通に過ごしてるだけのつもりなんだけど……。

 ニニと最中さんは言語が違う(ニニはそもそも鳴き声だよね)なのに言い合いしてる中、耳が元に戻るまでに数分時間を要したと思う。現実でもこんなにキーンとしたことないんだけどね。

「……あの」

「あ、カナカくんごめんね。調剤室のドアを閉めて実験してたんだけど、実験失敗で爆発したのと同じタイミングでドア開けちゃったでしょ?」

「わかんないけど、多分? 耳痛かった」

「それはごめんね」

 最中さんの返事は軽かったけど、顔を見れば一応悪いとは思ってくれてそうな表情はしてた。

「で、どうしたの。早速作りに来た?」

「うん。……失敗すると、爆発するの?」

「爆発するよ。って言っても、ボクが扱ってるのが爆発性の高い素材が多いから、さっきみたいな爆発になるだけで、カナカくんが作りたい接着剤なんかはそうでもないから安心していいよ」

 そうなんだ。じゃあ安全なのかなって思ったけど、あくまでも今欲しい接着剤とかが問題ないだけで、今後別の溶剤とかが必要になったときは、間違ったら爆発するかもしれないってことか。

 今後、別の薬剤や溶剤が必要になったら、気を付けて調合するようにしよう。

「確か、木材用の接着剤だったよね。とりあえず中に入っておいで」

 最中さんにそう促されて、僕はニニを持ったまま調剤工房の中に足を踏み入れる。

 調剤工房の中は、多分基本的な家財は僕が使わせてもらってるアクセサリー工房と同じだと思う。見覚えのある作業テーブルと、壁に備え付けの素材棚があった。

 違うのは、作業テーブルの上にがっつりと括りつけられた、実験道具を動かないように固定するための金属器具だ。学校の理科実験室で見かけたような、ビーカーや丸フラスコ、三角フラスコなんかがいくつもその器具で固定されていて、フラスコもビーカーも、底部分にはアルコールランプのようなものが置いてある。

 その金属器具の一番左端の部分がひしゃげ、その辺りにおそらくビーカーかフラスコだったと思われるガラス片が外に向かって広がるような円状に散らばり、一部は作業テーブルに突き刺さっていた。

「……これ……」

 鋭くギラギラと光っている、作業テーブルに突き刺さった破片を見ながら最中さんに声をかけると、最中さんは「あぁ」と慣れたようなしぐさで作業テーブルをトントンと指先で軽く叩く。

 すると、ポップアップウィンドウがヒュンっと表示され、それを軽くタップすると、その破片やひしゃげた金属器具がブブっとブレたように歪み、ガラス片や爆発の衝撃のようなものはすべて消え、ほかの部分と同じ綺麗な作業テーブルと金属器具になった。

「……何これ」

「うん? もしかして、カナカくん、作業テーブルの清掃機能を使っていないのかい」

 清掃機能ってなに。

 そう考えてると、最中さんが表示されていたポップアップウィンドウをこちらにすっと押し流してくる。目の前にやってきたポップアップウィンドウを見れば、作業テーブルメニューと表示されたそれには、「作業テーブルの基礎設備」や「作業テーブルの清掃」などのメニューがいくつも表示されてた。

「生産系スキルで必要とする作業テーブルは、鍛治や調理も含めて全部同じ作業テーブルだけど、用途によって基礎設備を設定できるからね」

 へぇ、そうだったんだ。HELPに書いてたから必要だってことは理解してたんだけど、作業テーブルってアクセサリー制作以外でも使うんだ。知らなかったや。

「その様子だと知らなかったみたいだね。作業テーブルにも結構いろいろ機能があるから、後で調べてみるといいよ」

「ん、そうする」

 最中(モナカ)さんの言葉にうなずくと、最中さんはくすくすと笑いながら、僕に作業テーブルの備え付けの椅子へ腰を下ろすように促してくる。それに素直に椅子に腰を掛けると、最中さんはそっと作業テーブル端の器具を半分くらい片づけてテーブルの天板を広く開けた。

 そのスペースの空いた場所に、今度はどこからか(多分インベントリからかな?)素材をいくつも取りだして広げた。

 広げられた素材のいくつかは、僕も知っているものだった。

 先ほど採掘をしているときに見かけた石がいくつかと、アメリーさんのところで見かけて買ったことがあるメランカリシャと、見かけたけど買ってないル・エイン、それにセンスクト草とフリューデ草だ。

 メランカリシャは自分の工房にしまってきたから持ってきてないけど、センスクト草とフリューデ草は、昨日むしった中にも混じってた気がする。後でアクセサリー工房を確認しとこ。

「これ、さっき言ってた……?」

「そうだよ。あ、あとこれね」

 すっと一枚の紙切れが差し出される。何だろうと受け取ると、大体はがきよりもちょっと大きいかなってくらいの大きさのその紙面いっぱいにちょっと癖の強い、でも読めなくはない小さな文字がびっしりと記入されている。

 癖は強いんだけど、ほんのりと丸みのある文字は、多分最中さんの手書き文字なんだろうな。とても女の人とは思えない粗雑な扱いをされてるけど、女の人なんだなぁって感じした。

 で、何が書いてあるんだろうと思ったら、「鉱石ボシャフト+魔力水=ボシャフト剤」……? …………あ、これ調剤のレシピ?

「とりあえず、ボクが収集した中で、アクセサリー職人から注文されたものと、木材や金属の加工/調整に使えそうなのをまとめといたよ」

 ざっと中身を読み込んでみれば、今までに使ったことがある、アメリーさんのところで購入した薬剤もあれば、使ったことも見たこともない名称のものもあるし、名前を知ってる素材で作られる知らない薬剤もあった。もちろん、僕が今欲しい接着剤や塗料のレシピもある。

 フレシェバーン液とか、僕が知ってるレシピと違うレシピが書いてある。このレシピの素材は知らない。同じ薬剤を別の素材でも作れるんだ……。気になるから、帰ったらアメリーさんに素材のこと聞いてみよ。

 それはそれだ。僕が欲しい接着剤のレシピを改めて確認する。

 「鉱石メランカリシャ+ボシャフト剤+魔力溶ゲル化剤=材木用接着剤(強)」って書いてる。……魔力溶ゲル化剤って何だろう。あと、(強)なら、(弱)もあるの? 材木用ってことは、金属や鉱石には使えないってこと? 花は大丈夫なのかな?

 レシピを見ただけなのに、疑問が大量にあふれてくるのはなんでだろうね?

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