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OTRA VIDA  作者: 杜松沼 有瀬


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6.幻獣と加工と調剤と変人 15

 わしゃわしゃとするカササギさんの手が離れて行ったかと思うと、やわらかくて暖かい風が拭いてくる。何をどうしてるのかわからないけど、僕の髪に温風を当てて乾かしてくれてるらしい。

鸞瑪(スズメ)、それよりもこうした方が髪が傷みませんよ」

 向かいの席からカチュさんが自分の前に用意されていたお皿を少し避けて、身を乗り出して僕の方に手を伸ばしてくる。細長い指が、僕の髪をよくわからないけど触ってるのがわかる。カササギさんの時はそうでもなかったけど、カチュさんに髪を触られるのはなんだかくすぐったい。

「カナカくんの髪ってさぁ、キャラメイクん時にどういう指定したの? 色味は桜色とかそんな感じっぽく見えるけど」

 カササギさんとカチュさんの二人がかりで髪を乾かしてもらってるのはなんだか不思議な感じなんだけど、それを眺めてたらしい最中(モナカ)さんからそう聞かれて、僕はキャラメイクって何だろうと思ったけど、すぐにこのゲーム内の姿を、一番最初に作ったときのことかと思い至る。

 髪の毛の色、と言われたので、まだしっとりとしている髪の毛先をつまんで眺める。人に言われて改めて自分の髪の毛を見てみると、あのウサギが選んでくれた薄ピンク色に染まった髪の毛がある。そういえば、今見て気が付いたけど、薄ピンク色なのに加えて、なんか髪の毛キラキラしてない? 目の瞳孔のこともあるけど、あのウサギ、もしかして僕で遊んでたりしたのかな。

「よくわかんなかったから、ウサギにお任せにした」

「あ、ランダムなんだ?」

「ん、指定はあるかって聞かれたから、よくわかんない、似合う色ある? って聞いたら、こうなった」

 僕が最初のことをぼんやりと思いだしながら答えると、最中さんが驚いた仕草をしてみせた。

「お任せなんてあるんだね。でも、確かにカナカくんの顔立ちによくあってる色彩だと思うよ」

「うんうん。リアルだとここまで鮮やかにはならないだろうけど、カナくんは明るい色に染めてもいいかもねぇ」

「……」

「ま、本当に染めるかどうかは、もうちょっと良くなってから考えようね」

「ん……」

 一瞬髪を染めるというカササギさんの言葉に考え込みそうになったけど、すぐにまだ先のことだと言われて、どこかホッとした気分になった。髪の毛の色なんて、現実じゃまだ考えることもできない。

「ちょっと、あんたたち。ごはんにするからテーブルをあけな。カチュは身を乗り出すのをおやめ」

 大きなボウルと大皿を抱えた真鯛(マダイ)の刺身さんに注意されて、「あら、失礼いたしましたわ」と言いながら、カチュさんが上体を起こして立ち上がり、テーブルを回ってきた上でまた僕の髪を触り始める。

 いつの間にか吹いてた温風はなくなっていて、若干毛先がしっとりとしているような気はするけど、毛束がまとまっているほどの湿り気はなくて、毛が一本一本方々に跳ねてる状態になってた。

 服が濡れることもない、ほぼ乾燥した状態になってるにもかかわらず、カチュさんとカササギさんは僕の髪を触って何かをしてる。一瞬、何してるんだろうと思ったけど、二人がつかんでる部分が前髪に近い部分だったから、多分みつあみ飾りを何とかしてくれようとしてくれてるのかなと思い至った。

「鸞瑪、カチュ、それよりも先にご飯にしな。カナカくん、もし髪が邪魔だったらこれでまとめるといいよ」

 僕とニニの分を持ってきてくれたらしい真鯛の刺身さんが、僕の前に二枚のお皿を置きながらそう言って僕に一本のヘアゴムを差し出してきた。反射的に受け取ってから、このヘアゴムでどうすればいいのか考えてしまう。

「うーん、イベントが終わったら洗髪訓練も含めて髪の毛の扱い方の訓練もしよっか。ま、イベント中の入浴介助くらいならできるだろうから、次は俺と一緒に入ろうか」

 僕の手からひょいっとヘアゴムをもっていったカササギさんは、そういいながら僕の髪の毛をさっと首の後ろで一つにしばってくれた。なるほど、まとめるときはこうすればいいのか。

 それと、入浴介助は助かるかもしれない。疑問点ができたら、その場でカササギさんに聞けばいいし、こういうことでカササギさんが嘘や冗談を教えてくることはないから、信用ができる。

「俺の女神(ヴィーナス)と一緒にお風呂!? スズにぃの変態!! 破廉恥(はれんち)!!!」

「お前の気持ち悪い煩悩にまみれたその脳みそかち割ってやろうか」

 遠くの席についていたあの変な男が突然叫びだしたけど、カササギさんが冷めた声でそう吐き捨てるのと同時に、男の隣に座ってた(コウ)さんが、鋭い一撃を男の頭に叩き込んだのが見えた。その一撃で男が吹っ飛んで床に倒れ伏してたけど、誰も気にした様子もなく、それぞれの目の前に提供された食事に手を伸ばしてた。

 ……虹さんも結構手が早いんだ。あの男も毎回やられてる割に反応しないんだけど、反応が鈍いタイプなのかな。まあ、僕に被害が来なけりゃいいか。

「キュ~」

「ん、食べよ」

 そんなことを考えてたら、僕の手にしがみ付いて早く食べようと言わんばかりに鳴き声を上げたニニ。それもそうかと、僕は配膳されたお皿に手を伸ばし、食事を始めることにした。

すみません、10年ぶりにマイクラ熱が再燃してマイクラを毎日4~5時間触ってしまってます……。

なるべく週一更新できるように頑張りますが、間に合わなかったらお察しください……。

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