312.シェリルと精霊
『ノイラートの男が逃げた?シェリルを追い回した挙句に倒れたっていうあの?ちょっと、警備は何をしていたのよ〜!』
プリプリと怒りを顕にする水の精霊に、シェリルが宥めながら答えた。
「逃げたというか…仲間に攫われた、という感じかしら…。お兄様の話では、城に居た時は魔法で眠らせていたみたいで、それが解かれるまでは目覚めないけれど、仲間に起こされたらまた私を追うだろう、って」
今シェリル達がいる場所は、昨日の城での騒動が見える距離なのだが、シェリル達は空間内にいたので、城での出来事はハーレイの手紙を読むまで知らずにいた。
『また、移動しなきゃいけなくなるかなぁ?』
光の精霊がしょんぼりした顔で呟いた。
「お兄様が、アンリエッタの魂とアリアとアリシアを、結界に閉じ込めるみたい。あ、あと、魔術師団の団員3人が行方不明なんですって。その中の1人が雷魔術を使えるみたいで、あとの2人は闇魔術が得意らしいの」
『闇…ノイラートの奴と同じってことね。もしノイラートが目覚めなくても、その魔術師が従魔を放つ可能性もあるわね。それでも元凶が結界内にいるなら、もし従魔に見つかっても大丈夫かしら…』
『…シェリル、攻撃魔法の練習をしておこう』
突然の風の精霊の言葉に、シェリルが目を瞬いた
「攻撃魔法の…?それは戦うと、いうこと?」
『ああ。魔力の交換はあと数回で終わる。それにシェリルは精霊の湖から離れない方がいいと思う。だから、もし見つかっても逃げずに倒して、どうしようもなくなったら森の別の場所に転移するのがいいと思うんだ』
「私が湖から離れない方がいいっていうのは、何か理由があるの?」
風の精霊がシェリルの疑問に答えるのを躊躇しているのを見て、水の精霊が代わりに答えた。
『シェリルが番と出逢うのがリンデンバウムの湖でしょ?国境なんかを通らずにそこへ行く方法が、魔の森の湖から行くしかないからよ』
「あっ…そ、そうなのね…」
番と聞いて、ぽっと頬を染めたシェリルが俯いた。
最近も、精霊達から色々と番の話を聞いていたシェリルは、まだ見た事もない番をかなり意識してしまっている。
「こんな話の最中に、私ったら…」と言いながら顔を煽ぐシェリルを、精霊達が微笑ましげに見つめた。
『多分、ノイラートの従魔よりは性能が劣るだろうし、倒してもすぐに捕まることは無いんじゃないかな。だから攻撃魔法を練習するのは良いと思うよ!』
『基礎は出来ている。風も水も光も俺たちが教えれば、すぐに実践で使えるようになる』
『そうだね、火と土と闇も必要なら、仲間を湖から連れてくるよ』
『そうね、そうしましょ!』
シェリルは頼もしい精霊達にお礼を述べ、ハーレイから結界に閉じ込める事に成功したという知らせを受けるまでは湖には行かず、攻撃魔法の練習をする事にした。




