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おっさん漁師、神になる   作者: 祭人
第一章 お嬢様と女海賊に困る
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第3話 白銀の戦士

 この人は――誰?


 私――ミッシェルは心の中で呟いた。


 白銀の戦士が、剣を押し返す。戦斧が跳ね上がり、海賊の巨体がよろめいた。


「下がっていて」


 静かな声だった。


 私は言われるまま、数歩後ろへ下がった。


「一人だ。囲め!」


 海賊たちが一斉に襲いかかる。


 ――けれど、勝負にはならなかった。


 剣が弾かれ、斧が飛び、海賊たちは次々と石畳へ転がっていく。


 一人が剣を振り上げたと思った次の瞬間には、その剣が宙を舞っていた。


 別の男が背後から襲いかかる。白銀の戦士が振り向いたときには、男の身体は石畳の上に転がっていた。


 速い。


 目で追おうとしても、追いつかない。


 白いマントが翻るたび、海賊が一人、また一人と倒れていく。


 十数人いたはずなのに、ほんのわずかな時間で、立っているのは白銀の戦士だけになった。


 誰も死んではいない。


 倒れた海賊たちは呻き声を上げ、ある者は腕を押さえ、ある者は武器を失って座り込んでいる。


 これほどの力があるのに、一人も殺していない。


 それなのに、再び立ち向かおうとする者は一人もいなかった。


 私は、ただその背中を見つめていた。


 強い。


 そんな言葉では足りない。


 怖いほどの力を持っているはずなのに、不思議と恐ろしいとは思わなかった。


 この人は――何者なの?


 彼がこちらへ戻ってくる。


 もう大丈夫だ。


 そう思った途端、張り詰めていた力が一気に抜けた。


「あ……」


 膝から力が抜け、身体が傾く。


 倒れかけた私を、彼の腕が支えた。


 一瞬、息が止まった。


 白銀の鎧がすぐ目の前にある。


 顔を上げると、銀色のアイマスクの向こうに彼の目が見えた。


「あの……助けていただき、ありがとうございます」


「ここから離れて」


 それだけだった。


 自分が何者なのかも、どうして助けてくれたのかも語らない。


 けれど、このまま行かせてしまったら、もう二度と会えないような気がした。


「お待ちください。あなたのお名前を――」


 港から、再び海賊たちの雄叫びが響いた。


 彼が私から離れる。


 思わず、その背中を目で追った。

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