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 ①⑧⑧

翌朝、小屋を覗きに行くと、戸が少しばかり開いていた。その隙間からムッとする臭いが漂い出ている。


鼻腔に張り付く鉄錆の臭いが、処理後の掃除をしていない事を物語っていた。


鍵も掛けずにまだやっているのか?と苛つきを覚えながら中へ入るとそこにマリヤの姿はなかった。


死体も中途半端にバラされたまま、部位や内臓が放置されている。2体とも頭部は無く、水槽に脚立が立てられてある為、どうやら頭は鰐に食わせたようだ。


途中で放り出して何やってるんだ。


更に苛立ちが募る圭介は、渋々合羽を着込み、放置された部位をバケツに入れ、水槽へと向かった。全て投げ入れた後で圭介は小屋の中の掃除を始めた。


その内、戻ってくるだろうと思っていたが、掃除を終えてもまだマリヤが姿を現す事はなかった。


風呂でも入っているのだろうと思い、小屋に施錠をし、家へと戻り風呂場を覗くが、そこにもマリヤの姿はなかった。湯船や床、マットレスが濡れていた為、風呂に入ったのは間違いないようだ。


こんな朝からどこほっつき歩いているんだ。又、刑事を刺した時のように1人勝手な行動を取っているのかも知れないと、圭介は嫌な予感を払拭しながら朝食の支度を始めた。


刑事殺傷のニュースを見た後で、刑事を刺した事を問い詰めた訳ではないが、帰宅して来た姿や態度で圭介はマリヤがやった事は間違いないと踏んでいた。だが、それについては聞く事はしなかった。誤魔化してはいたが、明らかに興奮状態にあったからだ。その興奮に味をしめたのか。

圭介はそんな風に思いながら朝食を食べ始めた。


ルーティンである魚釣りは、今日は必要ない。いや、充分な餌を与えてあるからしばらくは行く必要もないだろう。1人朝食を終え片付けた後、マリヤが小屋に戻っているかと思い覗いてみたが、姿はなかった。


部屋で寝ているとは考え難かったが、圭介が朝、小屋を覗きに向かった時、風呂上がりのマリヤとすれ違った可能性を思い、一応、覗いて見る事にした。

だが2階の部屋にもマリヤの姿はなかった。



圭介は無意識に溜め息を吐きながら机に向き合った。

昨夜、処理班の男と英永剛に邪魔され、殺し損ねた男の事を思い返した。


皺くちゃに折り畳まれたノートのページを広げ、書かれてある事を新しくノートに書き加える。苛ついている時は何かを書くで、その気持ちを忘れる事が出来た。それに今はこいつを殺すモチベーションすら湧かなかった。


新たに書き込んだページを読み直し、圭介はノートを閉じた。引き出しにしまい、手斧を取り出した。英の延髄に一撃をくらわせた手斧の刃に、まだ血の塊が付着していた。丁寧に洗ったつもりだったが、圭介自身、武器の手入れが疎かになっているという事に驚いた。突然の襲撃に帰宅しても尚、何処か冷静さを失っていたようだ。その手斧の持ち、圭介は部屋を出た。洗うついでに刃も研いでおくか。


武器や道具の手入れを終えても尚、マリヤは戻って来なかった。ドライバーの数が足りないかも知れないと思い数を数えたが、マリヤが使用していたドライバーは洗われる事なくドライバーの所に戻されてあった。マリヤがいない為、ドライバーも持ち出されていると思ったが、その考えは杞憂に終わり、僅かばかりホッとした。


だが、刑事殺傷事件の事を思えば、マリヤは刃物を手に入れていると考えられた。小屋から持ち出すと圭介に見つかると思い、マリヤは自ら何処かで購入したと思われる。もし、今日、明日にでも殺傷事件が報道されれば、恐らくその犯人はマリヤだろう。


マリヤのお気に入りの車椅子は、車のトランクの中に折り畳んで置いてあった。めっきり使う事は無くなったが、それについてマリヤから文句は言われなかった。

だが当然、不満はあった筈だ。スナック天使の店舗内で、刑事とやり合ってからは、2人とも大人しくする事を強要していたからだ。だがマリヤはそれを無視し、刑事を襲った。恐らくは今、いないのも、誰かを殺害する為に姿を眩ましたに違いない。


マリヤの無事を願ってはいるが、もし殺害しようとしている相手や警察に捕まりそうな事があれば、自害して欲しいと圭介は思っていた。生きたまま警察に捕まりでもしたら間違いなく報道され、顔バレしかねない。そうならなかったとしても、何処からか情報が流れ、マリヤが生きている事がラピッドに知られでもしたら俺達家族は皆殺しにされるかも知れない。マリヤを愛しているとはいえ、圭介はやはり家族の方が大切だった。


圭介は小屋の施錠を確かめ、家へと戻った。

そしてDVDプレイヤーを起動させ、何十回と観ている悪魔のいけにえを、再び鑑賞する事にした。




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