表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
282/302

 ①⑦②

みっちーは永剛の予想より3日も長く生きていた。あっさりと殺してしまうのもありだと思ったが、やはり最後の最後まで苦しめたかった。


かと言って出血による衰弱は著しく酷く、これ以上、手を加えてしまうと死ぬのは明らかだった。


だから放置する事にしたのだ。その間、永剛は自分の身体の回復に費やした。栄養のある物を食べ、言われた通りに薬を飲んだ。TVを見たり読んだ本を又、読み返したりして、1日という時間を費やした。


その間にふと思い出したように畳を上げ、床板を外しみっちーの様子を伺った。息をしていないと気づいたのが3日目の昼頃だったのだ。


永剛は風呂場にブルーシートを敷き、そこへみっちーを運び込んだ。足首や足の付け根、膝下という具合にノコギリを使って切断して行った。首を切り落とした後、髪の毛を掴み持ち上げた。じっくりとその表情を確かめた後、永剛はジーンズを脱いだ。


ブリーフの横からペニスを引き出し半開きになったみっちーの口へペニスを押し込んだ。両手で挟むように側頭部を押さえ前後へ動かす。中々、勃起しなかったが、頭の中で楓の事を思い出すと、直ぐにペニスが膨張した。


熱を持ったペニスはみっちーの口の中で、自由に動き回り、口の中へと射精した。楓の事を思い出さなければならなかった事に永剛は腹だだしい気持ちになった。みっちーが生きている間にやらせればよかった。そうすれば、みっちーも助かるかもしれないと希望を持ち、必死に永剛のペニスを舐めまわしたかも知れない。


今度誰かを監禁した時はそうしようと思い、永剛は精液を含んだみっちーの頭を床に置き、眉間へ向けハンマーを振り落とした。陥没したそれはみっちーの表情をいちぢるしく変貌させた。人間の顔というものは中央部分が凹むだけで、こうも可笑しな顔になるんだなと思った。


バラバラにしたみっちーの体を、更に細かく切り落とていく。後回しにした栄養失調のような亀に似た胴体は、まるでその物自体が妖怪のように永剛の目に映った。


乳首が眼でへそが口といった具合だ。浮遊する胴体妖怪。へそから語られる言葉はお腹すいただよー。永剛は自らの妄想にクスクス笑いながら包丁を手に取り胴体の鳩尾に突き立てた。両手を使いへその方へと切り裂いていく。


包丁の切れ味が悪いのかナメクジが這ったような切り口がなんとも無様だった。同じように数回、切り裂いた後、今度は鳩尾の部分から繭の形のように腹を裂いていった。


腹部の皮膚と皮下脂肪を切り取った後、永剛はみっちーの胃や腸を引きずり出した。手にした肝臓が異常な程、弾力があり、ニンニクと醤油を塗せば、食べられるんじゃないかと思った。


失血死したと思われた癖に、まだかなりの量の血液が体内に残っていて、タイル床の上に敷いたブルーシートがあっという間に黒くねっとりとした血溜まりとなっていた。


取り出した臓器は1つにまとめゴミ袋に詰めた。後でミキサーにかければゴキブリの餌になるだろう。肋骨はペンチと金槌を使って折り、それは風呂場の隅へまとめた。

ミキサーに入り切らない部位をノコギリを使い更に細かく切断する。肉を削いで骨だけにしたかったが、面倒くさくなり辞めた。1番、手間がかかったのは頭部だった。


鋏で頭髪を切り落とし口角から頬へ向け小型のノコギリを使った。耳を削ぎ落とし頬骨と顎の骨をハンマーで砕いた。ペンチで舌を引きずり出し、ハサミで切る。


歯は1本1本、引き抜いた。歯茎の奥で動く歯の根っこが、グラグラと揺れる感触がペンチを通し手の平まで伝わっくる。


歯科医は抜歯の時が1番楽しいのかも知れないと、ペンチを前後左右に動かしながら永剛は思った。


全ての歯を抜き取ると、全身から汗が流れ出していた。額から垂れる汗を何度も拭い喉が乾き吐く息が臭かった。この時点で既に永剛は疲れ切っていた。


水分補給する為に休憩を取る事にした。蛇口を捻り頭から水を被った。口をつけ苦しくなるまで水を飲んだ。濡れたまま臓器を入れたゴミ袋を持ち、一旦、風呂場から出た。タオルで手足を拭き、居間に戻り、床下へ臓器をぶちまけた。


床板と畳を元に戻すと永剛は疲れた身体を休める為に、少しだけ横になった。瞬く間に眠りの中へと引きずり込まれていった。


期日の1カ月が経ち、永剛は縫われた傷口の抜糸の為、都内の病院へいった。その帰り、永剛は例の駐車場の車の中でジッとしていた。


勿論、ここで待っている理由はみっちーの女を拉致する為だった。みっちーが居なくなってから、その仲間や女がどのように生きているかは当然、わからない。あの女は新たな男を見つけたかも知れないし、仲間は仲間でリーダーがいなくなった事を良い事に、仲間内での立ち位置が代わり、新たな組織図が形成されているかも知れない。


奴等が何処のクラブを根城にしているか知らないが、人1人いなくなったくらいで、それすら変えるような事はしないと永剛は踏んでいた。


人間、一旦馴染んだ場所を捨てるというのはそう出来るものではない。馴染みの場所では顔も効き、優越感にも浸れるわけだから、離れる理由など何処にも無い筈だ。


永剛はトイレと食事の買い出し以外、車内から出る事はなかった。ひたすら前方の道に意識を集中していた。おおよそあのような人間が現れるのは夜から深夜にかけてだろう。だが、それでも午後から見張っているのは、もしも現れた時、1人でいる確率が高い筈だと考えたからだ。


もし奴等の内の1人でもこの近くで働いているのであれば、職場を特定出来るかも知れない。


そうなれば俄然、こちらが有利な条件を1つ手にした事になる。だから永剛は待っていた。


刻々と過ぎて行く時の中にあっても、決して集中力を失う事なく、前方だけを注視していた。

だが夜9時を過ぎても奴等は現れなかった。


クラブに行くにはまだ早い時間帯なのかも知れない。そういった事に疎い永剛は自己肯定をする為にそのように考えていた。


だが、生憎、その考えは深夜2時を回った所で、ようやく砕け散った。付近も明るくない為に見逃した可能性も高かった。だとしてもこの徒労感は否が応でも永剛の苛立ちを掻き立てた。正直、奴等以外でも構わない。誰かを攫って殺してやりたかった。


永剛は車から出ると通りに向かって歩いて行った。父のお下がりのジーンズの前ポケットには折り畳み式のナイフが入っている。永剛は片手をそのポケットに突っ込みナイフの柄を指でなぞりながら通りへと出て行った。


足を止め自分が襲われた場所を見下すような冷めた目で見下ろした。この身体から流れ出たかなりの血の跡はもうどこにも見当たらない。


当時の事が蘇り胃がムカムカとして来た。視線を上げ左右を見渡した。みっちーや、みっちーの仲間達があの女を追って来た少し上り坂になってる道の向こうにチラッと人影が見えた。


それは2、3人であり、酒に酔っているのか、会話する声がこちらまで聞こえてくる。1人ががなり声をあげると、一斉に笑い声がした。


その声は深夜の裏通りにあるビルの壁や窓ガラス、シャッターなどに反響し、まるでピンボールのようにあちこちぶつかりながら永剛の所まで届けられた。


無意識にポケットに入れた手に力が入った。楽しげにはしゃいでいる人間達への苛立ちは、単なるやっかみでしかなかった。永剛自身、友達と呼べる人間は1人もいなかった。小さい頃から他人と関わる事も避けて来た。


中には物好きな人間も少数いた。けれどそれもラビット、いや見守りの会に入ってからは変わった。その筈だった。楓と出会い、性欲を満たすだけの為に付き合ったつもりが、いつしか楓に夢中になっていた。


これが恋なのか?なんて事も何度か考えた事もあった。けど楓の死によって自分の中に構築されかけていた物が、確かにそこにあったものが、音も立てずに崩れ落ちて行った。


その後も、見守りの会の人達との付き合いはあったが、楓がいた頃とは違い、少しばかり距離を取るようになって行った。何も皆んなが嫌いなわけじゃなかった。ただ、それ以上に自分の中で崩れ落ちていった瓦礫を再び積み上げる為に、永剛は小さな頃から思い描いていた、人間を潰すという行為に、より没頭するようになって行ったのだ。


だからこそ、他人が楽しくしている事に、不快感を覚えても、ただのやっかみだろうがそんな事はどうでも良かった。自分の気分を悪くする奴等は、永剛が求めるものの為に全員殺してやればいい。ただそれだけだった。


永剛はしばらくの間、遠目からはしゃぐその人間達を眺めていた。1人でいい。1人でいいからこっちへ向かって降りてこい。永剛の切なる願いが天に届いたのか、甲高い笑い声の後に、人影が2人と1人へと別れた。


後ろ向きでこちら側へと下ながら2人に向かって手を振っているのは、先程、耳障りな程の甲高い笑い声を出した者のようだった。


声質からして女のようだが、所々、語尾が野太く聞こえる箇所もあった。酒焼けで喉がやられているのかも知れない。永剛はそんな事を思いながら道路から数歩下がった場所へ移動した。こんな深夜の裏通りに1人、道路で立っていたら警戒されると思ったからだった。


「お疲れー」「またねー」


などといった他愛の無い別れの言葉を言い合うと、2人は奥へと消え、後ろ向きだった女はこちらへ向き直り、身体を揺らせながら歩き出した。


永剛は再度、そいつの姿を確認してからパーキングの料金支払い機の陰に身を潜めた。


パンプスかハイヒールか知らないが、コツ、コツ、という足音が闇夜に響く。足取りは緩やかだが、確実にこちらへ向かって歩いて来ていた。機械の隅から顔を覗かせ姿を確認した。


顔までは見えなかったが、その女はフラフラと身体をくねらせ髪の毛を掻き上げていた。


パーキングの前を横切ったのを見て、永剛は身体を起こした。素早く、そして静かに歩を進ませた。


この場所からあまり離れてしまうと、車に連れ込むのが面倒だと思い、つい早歩きになってしまった。そのせいか、女がいきなり立ち止まった。永剛は更に足を早めた。


近づく永剛を睨むような目で女が見返してくる。

辺りが暗いのと酔っているせいで視界が歪んでよく見えないのだろう。更に女へと近寄っていく。ポケットに突っ込んでいた手に力が入った。ナイフを引き出し、手首のスナップを使い、刃を飛び出させた。


「あんた、何?」


答える必要などなかった。真っ直ぐに歩み寄り、下から突き上げるように脇腹へ向かってナイフを突き刺した。


「ヒィッ」


という声を発した女は肩にかけたバックをずり落としながら両膝から崩れ落ちた。永剛はナイフは抜かずそれを寸前で抱き止めた。身体を寄せ合い、腰に手を回した。バックを拾い、女の腕を自分の首へ回した。痛みに呻く女を他所に永剛はパーキングに向かって行った。


両足の爪先が地面に擦れ、片方のパンプスが脱げた。

永剛は靴には構わずに女を引きずっていった。


トランクを開け中に押し込むと脱げたパンプスを拾いに戻った。そして駐車料金を支払い、車へ乗り込んだ。

エンジンをかけ、家へと向かって車を急発進させていった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ