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圭介はマリヤに手伝ってもらい何とかトランクから段ボールを引き出した。台車に載せるとその時点でマリヤは手を離した。どうやら疲れてしまったらしい。
「明日やるから」
そう圭介に言うと呆気に取られた圭介を他所にマリヤは欠伸をしながらいなくなった。
圭介は仕方なしに1人で台車を押し、何とか小屋の中まで運び入れた。全身から汗が吹き出し、直ぐに水で顔を洗った。何重にも重ね貼りされたガムテープにカッターの刃を立て上部を割いて段ボールを開いた。
途端、異臭が鼻をつき圭介は手で顔を塞いだ。
段ボールの中には胎児のように丸まった2人の人間が入れられていた。この段ボールが重かったのは、英永剛がデブなわけではなく、単に人間が2人入っていたせいだった。
「あいつ嘘をつきやがったな」
1人は綺麗な程の円形状に頭頂部が禿げた衣類が血塗れな男ともう1人はショートヘアの女のようだった。身につけた衣服は汚れあちこちが裂けている。ようだったと言うのは女の方がかなり腐敗していたからだ。おまけに、片腕、片足が欠損している。
圭介は肩を落としながら工具棚の方へ向かい、マスクをつけゴム手袋をはめた。
引き出す時に腐敗した女の体液が飛び散り目に入るのを防ぐ為、一応、ゴーグルも付けた。再び段ボールの元へ戻り2人のうちの1人、頭頂部が禿げた英の腕を掴んだ。
持ち上げ、その脇に腕を差し込む。持ち上げタイル床に放り出すと、英の死体は横向きに寝ているような体勢になった。
次は女だった。残っている二の腕を掴むと指が皮膚の中に入り、骨を過ぎて肉を貫いた。
どれくらいの期間、死体を放置していればこのような状態になるのか、圭介には全くわからなかった。
腕の中にめり込んだ5本の指をフックのように折り曲げ、掴んだ二の腕を引き上げた。そのまま英永剛と思われる男の横に転がす。その反動で腕の肉がずるりと剥け赤い肉片のこびりついた骨が露わになった。圭介は手を振り、指や手の平についた肉片を払った。
恐らく英永剛はこの女の死体の処理の最中に、ラビットの連中に襲われたのだろう。
不意を突かれた感じとなり、反撃もままならなかったと思われた。それでも死体を運んで来たラビットの人間は怪我をしていた。英永剛も漂白者としての経験で、最後まで必死に争ったのだろう。
だが、結果は見ての通りだ。多勢に無勢だ。
数には勝てやしない。ましてや逃げながら戦えるような場所もなかった筈だ。そもそもラビットのやり口として寝静まった所を襲うのが常だからだ。どれだけ広く大きな家だとしても複数の人間に一気に襲われたら限界がある。
圭介は段ボールを折り畳み、2人の死体を見下ろした。
マリヤは明日、やると言っていた。
圭介は2人の衣服を脱がし裸にした。
衣服は纏めて小屋の隅へ置いた。これは細かく切って燃やすとしよう。
圭介は装備したゴーグルや手袋を外した。自然と欠伸が出る。明かりを消して小屋を出た。




