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 ①⑤②

初夏の香りが漂い始めて来た6月17日の深夜、永剛はラピッドの処理班の指示の下、新田美子の自宅の裏庭に待機していた。


怖いくらいに緊張感は無く、今か今かとその時を待っていた。


早いとこ、中に入らせてくれと怒鳴りつけたくなる気持ちを何とか堪えながら、携帯している折りたたみ式のナイフを幾度となく握り返していた。


新田美子の自宅は最近流行りの建て売り住宅と違って昔ながらの一軒家だった。


元々は平屋であったものに、無理矢理2階を付け足したような、バランスの悪さがその家にはあった。


待機している裏庭の勝手口は今どき珍しい木戸で、子供でも簡単に侵入出来そうな代物だ。庭というにはおこがましい程の小さな庭には物干し台と二本の物干し竿が置かれてある。


縁側はなく庭から直接ガラス戸を開けて室内へ入る仕組みのようだ。そのガラス戸にはレースのカーテンが引かれてあった。まだ6月の中旬というのに昼間の暑さは異常な程だった。


その暑さのせいでだろう。カーテンも薄手のレースのみにしているのかも知れない。


新田美子は両親との3人暮らしだった。その両親は毎月のように新田美子から旅行のチケットを貰い、今は10日ばかし留守にしている。


何処に行ったのか、三代子さんは教えてくれなかったが、戻って来た時には娘の美子は永剛に殺害され、その姿を処理班の手により、運び出され永遠に姿を消す。


と同時に今回が美子がプレゼントしてくれた最後の旅行となるわけだ。


存分に楽しんで来るがいい。永剛はナイフの刃を出し切れ味を確かめるように指の腹を刃先に添えた。


三代子さんの話によれば新田美子は消費者金融の支店長という立場を利用し、個人的に高利貸しをしているそうだった。


10日で1割、俗に言うトイチという金貸しがいるが、美子は10日で4割の利息をつける悪徳以上な事を裏でやっていた。


それを手引きしていたのは今の彼氏らしく、取立てもその男が行っているそうだ。その取立てた金で新田美子は両親の旅行チケットを何度も購入している。彼氏は金平郁夫といい元々闇金の使いっ走りだったらしいが、そこでヘマをやらかし、ボコボコにされ、路上の、ゴミの山に捨てられていたようだった。


それを拾ったのが新田美子だった。内縁の夫にするにはまだ、気が引けていたらしいが、その理由はまだ両親が現在だからだった。


時折、その2人を殺害する計画を練る2人の会話を盗聴したが、結局、未だ実行には至っていない。

その前に死んでしまうけど。永剛はそのように思いながらナイフを閉じた。


処理班の指示が出て勝手口が開かれた。永剛は直ぐに中へと入った。真っ直ぐガラス戸へ向かう。


どうやって中に入ったのかわからないが、人1人が通れるほど、ガラス戸が開かれている。その側に処理班の1人が身体を屈め待っていた。永剛はその者へ頭を下げた。


すれ違い様、その処理班は小声で囁いた。


「出る時も、こちらからお願いします」


言って2階を指差した。再び頷くと処理班の1人はレースのカーテンを閉めた。


リビングを抜けキッチンを横切る。仕切りのドアは開かれていた。ルートを示す小さな懐中電灯が所々に置かれていた。古い家のせいか、床を踏み締める度、ギィと軋む音が家内に響く。階段も同じだった。


一気に駆け上りとっとと殺してやりたかったが、それで新田美子が起きでもし、騒ぎ立てたらここまでの段取りをつけてくれた処理班に申し訳が立たない。


その為に永剛は流行る気持ちを堪えながらゆっくりと階段を登って行った。


階段を登り切った所に再び懐中電灯が置かれてある。その明かりが新田美子が寝ている部屋の戸を照らし出している。部屋の前につくと金のメッキが剥がれた古びたドアノブに手をかけた。


背中に当たる懐中電灯の灯りが、永剛の影を戸に映し出す。その影は天井へ向かって伸び、折れ曲がっていた。それはまるで永剛の中に棲むもう1人の永剛が現れたかのようだった。息を止めノブを回した。


戸を引きながらナイフの刃を出す。室内は真っ暗だった。だが開けた戸の隙間から、僅かだが懐中電灯の灯りが部屋の中へと伸び、そのお陰で新田美子が眠っている場所が把握出来た。


永剛の想像と違って、新田美子はベッドではなく、厚手の絨毯が敷かれた床に布団を敷いて眠っていた。


その絨毯のお陰で、近づく永剛の足音も、床が軋む音も遮断されたようだった。


永剛は新田美子の布団を跨ぎ上から見下ろした。僅かな明かりも嫌いなのか新田美子はアイマスクをしている。腰を屈め顔を覗き込んだ。小さな寝息を立てながら、新田美子は身体をくの字に曲げ眠っていた。


楽しい夢でも見ているのだろうか。口角が僅かに上向いている。ナイフを振り上げた。永剛は幸せそうな新田美子の首を目掛けナイフを振りおろした。突き刺し、引き抜く瞬間、永剛は返り血を浴びないよう布団を引き上げ新田美子の顔を覆った。


空いた手で新田美子の顔面を押さえつけると悲鳴が永剛の手の中で震えた。


腰を落とし新田美子の身体の上に座った。両膝を付き新田美子が暴れないよう両膝で身体を挟んだ。新田美子は自分の身に何が起きたのか確かめる為に暴れ始めた。


永剛は布団を引き下げ再び首目掛け刺し貫いた。アイマスクがズレ、新田美子の怯えた表情が見えた。その瞬間、永剛は勃起した。


新田美子は怯えた眼差しで永剛を見上げた。陸に打ち上げられた魚のように手足をバタバタとさせ暴れ回るが、首からの出血量が多いせいか、それも直ぐに静かになって行った。


永剛は一旦、ナイフを床に置き新田美子の身体から離れた。立ち上がり、ジーンズを脱いだ。白のブリーフも脱ぎ捨て布団を剥いだ。新田美子の足首を掴み、ショートパンツを剥ぎ取った。下着は付けていない。性器に触れてみたが、カサカサだった。永剛はショートパンツを捨て新田美子の両脚を持ち上げた。横へ広げながら押し倒した。無理矢理にペニスを押し込みゆっくりと腰を動かしながらナイフに手を伸ばした。両手で掴み、新田美子の鳩尾辺り目掛けて振り上げる。


「あたーらしいーあさがきたーきーぼーうのーあーさーが よろこーびに……」


無意識にラジオ体操の歌を口ずさみながら永剛は腰の動きを早めた。振り上げたナイフを振り落とす。最初は返り血を浴びない為に布団を使ったが、今はそれさえ構わずに、ナイフを何度も何度も振り落とした。


射精と同時に永剛の手も止まった。新田美子は恐怖で眼球が飛び出しそうな程、目を見開いていた。


微かに上向いていた口角から血が流れている。永剛はふぅと息を吐いてからペニスを抜き取った。ビクビクと動く鬼頭を見下ろしていると頭の中に楓の最後の姿が過ぎった。永剛は鬼頭を撫でるように、そこへ血塗れのナイフを当てた。そしてアイマスクを剥ぎ取り唇へキスをしようとした。が、止まった。Tシャツを捲り上げ乳房を露わにする。乳首に舌を這わせ噛み付いた。引きちぎると新田美子の顔目掛けペッと吐き出した。


永剛はナイフを折りたたみ下着をつけジーンズを履いた。


そして静かに部屋を出て行った。一階に降りてリビングから裏庭へ出ると、入れ替わりに処理班が家の中へと入って行った。永剛はしばらくその背中を眺めていたが、飽きたのか勝手口へ向けて歩き出して行った。


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