①③②
妊娠を危惧してコンドームを付ける事を楓は頑なに嫌がった。射精時も体外でしようとする僕を楓は全身を使って永剛を抱きしめ離さなかった。
結果、毎回、中に出す羽目になるのだが楓はそれが何より嬉しいようだった。
射精後に膣内でビクンビクンと動くペニスがより楓を幸せな気持ちにさせ、私で興奮し、私が気持ちよくさせてあげて、私で我慢出来なくなって、私の中に出される事が、愛の証だと楓は思っていた。
「妊娠が怖く無いの?」
見守りの会に入会した日の夜から、10日経った午後、学校から直接、楓のアパートへ向かった。部屋に入ると今し方起きた寝起きの楓がいきなり永剛を求めて来た。
それに応えた後、楓を抱きしめながら永剛はそのように尋ねたのだ。永剛自身、楓が妊娠する事に怯えてはいなかった。子供が出来たら出来たで構わない。どの道、今の環境では良くて高校までしか進学は出来ない。大学は諦めていた。だから働くという選択肢は常に持っていた。
世の中、そんな甘くないという言葉は飲み屋街を歩いていると酔っぱらいの口から漏れ聞く事もあるが、そんな事は永剛にもわかっているよといつも思った。
実際、この年で社会に出て働くとなると、学生と違い付き合うのは全て目上の人間になる。だから常に上の人間に対して気を配らないといけないだろうし、下っ端だから面倒な事もやらされるだろう。
おまけにこんな田舎町だと中卒で雇ってくれるのは土建屋くらいなもんだ。毎日穴掘りを繰り返し、掘った土をネコグルマに入れトラックへ積み込む。
特別体力に自信があるわけじゃないから、その仕事内容を想像するだけで、ウンザリした。
やっぱり今の時代、それなりでも大学や専門学校に入る事はかなり大事な事だった。楓の妊娠が嫌という訳じゃなく、妊娠して子供を産むとするならせめて自分が高校を卒業してからの方がいいと思い、コンドームを使ってしようとしたのだけど、
楓は
「絶対に嫌!それならやらない」
と拗ねるくらい避妊を拒んだ。そういう経緯から永剛は楓に尋ねたわけだが楓は永剛の言葉に唇を固く結んだ。頬の筋肉が引き締まり、これまで見せた事のない気丈なまでの表情で楓は言った。
「私、妊娠出来ない身体だから」
何故そうなったのか、いつから妊娠出来なくなってしまったのか、生まれつきなのか、楓に聞きたい事が沢山あった。けれど普段見せた事のない楓の表情を間近で見ると出かけた幾つもの言葉は永剛の喉の中で止まった。
開いた口から出るのは掠れたような呼吸音だけで、聞きたいと思っていた言葉を上手く吐く事が出来なかった。
聞いたらいけない。どんな人間にだって聞かれたくない事の1つや2つあるものだ。気になるからって、思った事を直ぐに言葉に変換し、あけすけに聞くのは馬鹿な人間のやる事だ。
永剛は咄嗟に聞くべきじゃないと思えた事に内心ホッとした。代わりに楓を抱き寄せ頭を撫でた。目を閉じ永剛に寄り添う楓を眺めながら永剛は思った。
妊娠出来ない身体だから楓は子供好きになったのだろうかと。そういう人は少なからずいる筈だ。
子供に恵まれず養子を取る夫婦もいるくらいだ。だから楓が子供好きになるのは何ら不思議な事じゃない。
けど、そんな子供相手に楓は今まで、セックスをして来たのだろうか。
小児性愛者の対象は概ね10歳未満の筈だ。自分の年齢だと基本小児性愛者の対象外となる。
となれば楓が小児性愛者だと思っていた僕の考えは間違いだというのだろうか。けど楓が働く店のお婆ちゃんママは楓に他所の子に手を出すなと言っていた。
それは単に楓が妊娠出来ない身体のせいで子供好きが過ぎて他人の子供に対して楓は行き過ぎた行動に出たとも考えられる。僕を誘ったように。
だとしたらやはり定義されている小児性愛者の対象外の年齢にいる永剛をこんなにまで性的に求めて来るのはやっぱり小児性愛者としての楓の素質と永剛の現状が上手く合致したせいなのかも知れない。
何故なら永剛をどれだけ性的対象として捉えていても、それを咎める人間、つまり永剛の両親はいないのだから。
永剛は楓の性器から垂れた少量の精液を丁寧にティッシュで、拭き取ると半身を起こしゴミ箱を狙って投げた。ティッシュはゴミ箱の手前数センチの所へ落ち一度跳ねてから止まった。
「下手くそ」
憎まれ口を叩いた楓に永剛がくすぐりを仕掛けた。楓は永剛にちょっかいを出せば必ず戯れて来る事を知っていた。そうする内に永剛が自然と欲情していくのも楓にはわかっていた。
どちらかといえば永剛は早漏の部類に入る。イキそうになるのを堪える為にしばらく腰を動かす事を止めるのもその為だ。その行為を楓はいじらしいと感じていた。
だから永剛の動きが止まると楓はわざと自ら腰を動かしたり下腹部力を入れ膣圧を締めペニスに圧をかけ永剛をいたぶった。
そんな時、永剛は決まって頭を横に振った。止めて。という意味だ。それを見ると楓はたまらなく興奮した。既にぐっしょりと濡れている性器がより激しく濡れていった。
さっきの言葉で戯れあいながら、楓は永剛のペニスに手を伸ばす。今さっき出したばかりというのに、永剛のペニスは再び硬く反り勃ち、熱を帯びている。楓はそんな永剛のペニスの先端に指の腹を這わせた。既に永剛も濡れていた。楓は濡れた指の腹で鬼頭を撫で回す。
「もう」
永剛が楓の耳元でそう囁いた。
我慢出来なくなって来ているのだ。けど2回目の今回は焦らすつもりだった。楓の中に入れようとする永剛を押し留め、性器に触れるか触れないかの距離でペニスを這わせてやる。鬼頭が楓も同じように濡れているのを察すればより永剛は私を求めて来る。
この瞬間が何より楓を幸せな気持ちにさせた。けど簡単には入れさせてあげない、楓はクスッと笑いながら永剛のペニスから手を離すと僅かに腰の位置をずらした。ペニスが楓の性器から遠ざかる。楓は両手で永剛の髪の毛をかき乱しながら、ゆっくりと自分の性器の方へと押しやっていく。楓の求めている事に気づいた永剛は乳房を揉みながら鳩尾から臍にかけて直線上に舌を這わせていった。
臍の穴を舐めながら硬くなった楓の乳首を摘む。指先で引っ掻くように乳首を弄ると楓が掠れた喘ぎ声を上げた。
永剛はもう片方の腕を楓の太腿の下にいれ、持ち上げる。そのまま楓の身体へと押し上げながら、永剛は楓の性器に顔を埋めた……
1か月間、週2回見守りの会に参加したが母の件について未だ進展はなかった。
正直、その結果にガッカリさせられたけど、永剛は阿波という女の人がどのような報告をあげるのか知りたくて、引き継ぎ見守りの会に参加し続ける事にした。
楓も1か月の間、永剛に付き添って来ていたが、来るメンバーはいつも違っていたり、愚痴や文句ばかりを聞かされる事に嫌気がさしたみたいだった。
「私はもっと楽しい話しを聞きたいの」
会を辞める事を田山に告げた帰り道、楓はそんな風に言った。
「えーちゃんは続けて良いよ。これからも月謝は私が払ってあげるから。だってお母さんやお父さんの事、知りたいもんね?」
「うん」
永剛は足を止め楓の手を握った。指を絡ませ少しばかり力を入れる。自分には、今の自分にはこの歳上の女が必要だ。楓の年齢が幾つとか、自分と何歳離れいるとか、そんな事はどうでもいい。ただ自分が生きていく為に楓を失うわけにはいかなかった。
「結果がわかったら教えてね」
楓は言い永剛にアパートの鍵を手渡そうとした。
「帰らないの?」
「うん、今日は三代子ちゃんも出ないし、他の子も生理で休んだみたいたがら、私が出なきゃお店大変だもん」
「そうなんだ。わかった。けど今日は良いよ」
「どうして?」
「多分、母から荷物が届いてるだろうから一度家に帰りたいんだ」
「そっか」
楓はいい、出した鍵を、バックにしまった。
手を振りながら楓と別れると、永剛はゆっくりと家路へと向かった。その途中、久しぶりに河川へと立ち寄った。
足を止め道路から河川を見下ろした。それだけで永剛の中にある光景が蘇って来る。理科の実験で使うからとウシガエルを捕まえ、そして大型トラックがハンドル操作を誤り土手へと落ち、それに巻き込まれ潰されて死んだ老人。
豪雨に見舞われ河川の水嵩が増し河川とは反対側にある民家や畑へと流れ込み人々が築き上げていた物を一瞬にして破壊していった膨大なエネルギー。それらが一つに集まりどす黒い大きな塊となって永剛の中で蠢いている。
永剛はほくそ笑みながら、ここは自分にとってあらゆる死を呼び寄せ司る場所だ、と思った。永剛の頭の中にあのの男の姿が蘇る。
2人の女の前で馬鹿みたいにラジオ体操をしてみせた男だ。永剛はその滑稽な姿を思い出しながらその場から立ち去った。
無意識にラジオ体操の歌が口をついて出る。
「あーたーらしーいあさがきた きーぼーをのあーさーが…」




