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 ⑧⑤

家という物はとても不思議で不可解な建物だ。先ず1つは自分が産まれた時には既に家という物が存在しているという事だ。


そんなのは両親がいるのだから家があるのは当然だ、と言う人が大半だろう。だが考えても見て欲しい。


その両親でさえ産まれた時には当然のように家があった筈なのだ。例えそれが一軒家でなくても、マンション、アパート、寮などといった物が確実に存在していたわけだ。


つまり家という物が存在していない世界は太古の昔まで遡らなければならない。いや違う。その太古でさえ竪穴式住居という物や更に遡れば人間は風雨から身を守る為の洞穴といった家があった。


つまり家という物はこの世界に人類が産まれた時から存在し続けている。人間の先祖が猿であってもその時代時代に様変わりはしたが、命の出現と共に、まるでセット商品のように常に人間の側に家は存在していた。

無いという事がない物。それが家であった。


もう1つ不思議な事は家には臭いというものがある。それは個性的であり、同一の臭いを持った家は存在しない。ほど近いものや似ている臭いがする家は確かに存在している。が、あくまで似ているだけで、別の家だ。


使っている資材などでも変わって来るのだろうが全くと言って同じ臭いがしないのはやはり不思議な事だった。体臭やタバコの臭い、芳香剤などでより変化は顕著に現れる。


英永剛(はなぶさ えいごう)の場合もそれに漏れず、産まれた時には家があった。そしてただ泣くだけの肉塊の頃から今まで、英永剛はこの家で育ち暮らしていた。


そんな英永剛が赤児の頃からこの家には大量のゴキブリが住み着いていた。物心ついた時には既に英永剛の周りにはザワザワと這い回る何種類ものゴキブリが家中を徘徊していた。


寝ている時も、首筋や腕を這い衣服や下着の中に入ってくるのも英永剛にとっては普通の事だった。まだ生まれたばかりの小さなゴキブリが鼻の穴から入って来ては咳き込み、口から吐き出すのも年齢を重ねるごとに上手くなった。


両親は家に住まう大小様々なゴキブリについて英永剛に話して聞かせた事は1度もなかった。永剛も産まれた頃から当たり前のように目にしていた光景だった為、それがおかしな事だとは思ってもいなかった。


ゴキブリは暖かい場所を好むようで流し台やその下にある棚の中や風呂場の天井を好んで集まっていた。乱雑にビニール袋に詰めた生ゴミの周りにはこぞって集い、だが逆に食後の食器を洗う時などは露骨に嫌がりシンクの中や周りから素早く逃げ出して行った。


父が機嫌が悪い時は決まって家の中のゴキブリが被害に遭った。踏み潰されたり、食器用洗剤をかけられたり、はたまたガスバーナーで燃やされたりした。殺されたゴキブリの死骸は見せしめのようにその場に放置された。


その放置された死骸を夜な夜な他のゴキブリが食しに来るのを見るのが幼い頃の永剛は大好きだった。でもそれ以上に大好きな事があった。それは大根のような色白で細く指の長い母の手の平によって叩き潰されたゴキブリが息絶えて行く姿を見るのが永剛には何より大好きで楽しかった。


食事の時などは3人家族とは思えない程、賑やかだった。テーブルを囲む3人のおかずや、永剛に離乳食を与える母の持つスプーンに小さなゴキブリが這っていた。


食器やコップの縁を這うゴキブリは父の怒りを買う事はなかった。


逆に母はそんなゴキブリを毛嫌いし見つけたら平手で潰していた。トイレに行く時やお風呂に向かう時、床一面に集まったゴキブリ達は向かう先まで潮が引くように道を作った。


そんな英家の臭いは独特だった。いわゆるゴキブリ屋敷の臭いだ。そのゴキブリ特有の臭いは家から数メートル離れていても臭っていた。


鼻につくそれは言葉にする事が出来ない臭いだった。やはりゴキブリの臭いとしか言いようがなかった。この臭いは数匹程度では臭わない。数千匹、いや数万匹のゴキブリが家に住ってなければ臭っては来ないだろう。


犬猫を飼っている家もやはりゴキブリ同様に、犬の臭い、猫の臭いが染み付き家から漏れ出ている。


英永剛が小学生の頃、近所の野良猫を集め、自宅で飼っていた老人がいた。その老人は去勢や予防接種などは受けさせずただ家の中で野良猫として育てていた。糞尿の始末もせず、家中、糞だらけだった。ある時、その老人の家の前を通りかかった英永剛は、その臭いを嗅いで嘔吐した。こんなに臭い生き物がいるのかと涙を流しながら、嘔吐し続けた。猫に殺意を覚えたのもこの頃だったと記憶している。


だがそこに至るまで生き物に対して殺意を抱く事はなかった。いや殺意という気持ちを理解出来ていなかった。


そんな英永剛は普通の子供より早く言葉を喋れるようになった。勿論、教育熱心な両親の教育の賜物ではなく、ほったらかしにされていた結果、自然とそうなっていた。


言葉を覚えた英永剛は常に側にいる大量のゴキブリに話しかけるようになった。両親と話すよりゴキブリと話す方が多かった。


ある時、何処からか水槽を盗んで来てその中に沢山ゴキブリを入れた。そして近所の野っ原で捕まえたキリギリスやセミ、カマキリなどをその水槽の中へと投げ入れた。単にこれらの異種が自分の家族でもあるゴキブリと対峙した時、どうなるだろう?という興味から永剛をそのように駆り立てた。


結果、ゴキブリはキリギリスと蝉を食した。だがカマキリは自分の家族の中の2匹を鎌で捕らえ補食した。


それを見た永剛は水槽の中に手を入れゴキブリを食べているカマキリの頭を摘んで捻り引きちぎった。この時、永剛は家族以外の多種は信じたらいけないのだと思った。


潰すという行為に異常に執着し始めたのは小学生3年の時だった。そのきっかけは夏休みに入った夜だった。


久しぶりに鼻から入ったゴキブリを吐き出したせいで夜中に目が覚めた永剛は瞼を擦りながら身体を起こすと寝る前に飲んだ麦茶のせいか、急に尿意を覚えた。


自分の寝床として使っていた押し入れの戸を開けると四つん這いの体勢で押し入れから出て行った。立ち上がりトイレに向かおうとした時、普段であれば、父と母が寝ているその場所に2人の姿がなかった。


変だなと思いながら襖を開けキッチンがある部屋へ入ろうとした時、永剛はおかしな声を耳にした。その声は隣の部屋から聞こえて来た。


まるで猫同士が喧嘩をしているような声だった。襖を開けると月明かりに照らされた父と母が裸で抱き合っている。2人は密着しながらおしくらまんじゅうのように動いていた。


父は流し台の中に両手を入れ母に背を向けていた。母はそんな父の背中を見つめながら自分の身体を押し付けたり、離したりしながら、時より、悲鳴のような声を漏らしていた。


父はその度に唸り頭を上下左右に振りながら母に何かをお願いしていた。そんな父の腕や肩、そして背中に、ゴキブリ達が這っている。


母はその色白な腕で、ゴキブリ達を潰しながら父に何かを尋ねていた。母が言葉を発するたびに父はお願いです、この通りです。止めないでください、と震える声で母に頼んでいた。


母は母で父の言葉が嬉しかったのか、ゴキブリがいないにも関わらず父の背中や太腿などを平手で叩き続けていた。その度に父は呻き声をあげて流し台に伸ばした手を振り上げたり、また踏ん張る為に流し台についたりしていた。


しばらくの間、永剛は2人のその姿を眺めていたが、尿意を我慢出来なくなりトイレへと駆け込んで行った。


いきなり永剛がトイレに入って来た為にゴキブリ達は急いで永剛の周りから離れて行った。永剛はブリーフを下げ、急いで性器を摘んでオシッコをした。


その音に混じってキッチンから両親の声が永剛の耳に届いてくる。数匹のゴキブリが永剛の足の甲に乗って来た。


そちらに目線を移すと爪ほどの大きさのゴキブリが凄い速さで永剛の脛を這い上がり、いつしか永剛の性器にたどり着いた。そして性器の先から出ているオシッコに近づき、その小さな口をオシッコに当てた。


暑くて喉が渇いていたのか。永剛はそのように思い、オシッコが止まるまでゴキブリはそのままにしておく事にした。


オシッコが終わると永剛は性器を揺らし尿道についた滴を払った。ゴキブリはまだ尿が出ると思っているのかその揺れにも慌てる事なく永剛の性器にしがみついていた。


永剛はそのゴキブリにデコピンを食らわすとゴキブリは便器の縁に当たり、溜まった水と永剛の尿が混ざった場所へと落ちて行った。ゴキブリはその細く小さな足をバタつかせながらその尿混じりの水の中から逃れようとしていた。


永剛はその姿を不憫に思いそこに手を入れゴキブリを助け出してやった。しばらく手の平の上で遊ばせていたが、再びキッチンから叩く音を耳にすると永剛は母のあの白い腕と細くて長い指の事を思い出した。


あの手で叩かれ潰されたのはどんなゴキブリなんだろう?潰された時、ゴキブリは父のような声を上げるのだろうか。そう思った時、永剛は手の平で遊ばせていたゴキブリ共々、壁に向かって押し付けていた。


潰れたゴキブリは変な汁を出しながら壁をずり落ち永剛の足坂に落ちた。腹を上にしながらヒクヒクと動くその姿に永剛は言いようのない楽しさを覚えた。


トイレの水を流しキッチンへ出ると父と母はまだ裸で変な声を出し合っていた。トイレに行く時はわからなかったが、母の下半身にはキュウリがぶら下がっていた。キュウリの根元に穴を開けてそこに紐を通し、その紐を腰に巻きつけている。


母はそのキュウリに手を添え先端が上向きになるよう持ち上げながら父の背中に近づいて行く。近づくとそのキュウリは父のお尻の割れ目を弄りながら父の中へと入っていく。


その度、父はか細く強い息を吐いた。母がもたれかかった父の背中から離れるとキュウリは又、父のお尻の割れ目からその姿を現した。


ゆっくりと、そしてたまに素早く母は腰に巻きつけたキュウリを前後へと動かしていた。それを繰り返しながら母は父の耳元で何かを囁き、父が頷くと不敵な笑みを浮かべた。その行為が繰り返される中、周囲に逃げていたゴキブリ達は再び集まり父や母の身体を這い上がって行く。


そのゴキブリ達を母は1匹、1匹、その白く長い手で叩き潰していた。その度に父は嬉しそうな声を上げ、頭ごと流し台の中へ入れ髪を振り乱した。その姿を呆然と眺めていた永剛の視線に母が気づき手招きをした。父のお尻や腰、はたまた背中を這い回るゴキブリを指差し、


「思い切り潰してあげなさい」といい母は永剛の頭を撫でた。永剛は言われた通り、母同様に手を広げて名一杯力を込めてゴキブリを潰した。その1発で父は壊れたミキサーのように喉を鳴らし流し台の中に入れていた両手の拳を握り締めた。握った拳で排水口付近を殴り出し、


「母さん!母さん!」


と言い続けた。


母はキュウリを父の中へ出し入れしながら永剛に次のゴキブリを指差した。その後で父の背中に噛みついた。2匹目のゴキブリを永剛が叩き潰すと母は


「本当、お前は聞き分けの良い子供だねぇ」


といい、ゴキブリの姿が見えないのに、父の背中やお尻を力一杯叩き出した。


「もう寝なさい」


母に言われるまま永剛は部屋に戻り、押し入れの中へと入って行った。横になると性器がむず痒くなった。


ブリーフの中に手を入れ性器に触れるとオシッコが出る場所からドロっとした液体が流れ出した。同時にお漏らしをしたと焦った永剛はそのヌメヌメした液体を手の平で受け止めた。


そしてブリーフから引き出した手を顔に近づけその臭いを嗅いだ。その臭いは自分が暮らしているこの家の臭いに似ていた。家中に住まうゴキブリ臭と同じだと思った。


永剛は自分の性器から出たこのヌメヌメした液体はゴキブリの卵なのかも知れない。ひょっとすると沢山いるゴキブリ達は父や母の性器から産まれた子供達なのかも知れない。もしそうならどうやってこの卵を孵せば良いのだろう。


わからなかった永剛は閉めた襖を少しだけ開き月明かりを押入れの中に取り込んだ。その明かりを頼りに永剛は押し入れの中にいるゴキブリを探し出し、手の平に出したヌメヌメしたゴキブリの卵が入った液体を、壁に止まっているゴキブリに向かって、叩きつけた。永剛はその手を壁に押しつけた。


手の平を通じゴキブリが潰れその身体や足を痙攣させているのが感じられた。永剛はその手を左右に動かしながら、ゴキブリを壁に擦り付けた。


手を離すとゴキブリは永剛が出した液体に塗れながら、壁から剥がれ床へ向けて落ちて行った。ポトリと音のしたそこには永剛の性器から出た液体に塗れ、潰されたゴキブリの死骸が転がっていた。


翌朝、学校に向かう前、朝食を食べ終えた永剛はいきなり母の手を取った。母は何事か?と言いたげな表情を浮かべていたが、永剛にされるがままにしていた。その様子を着替え中の父が見つめていたが、その目は暗く淀んでいたが、包丁の先のように鋭かった。


永剛はしばらく母の細く長い、血管までもハッキリ見る事が出来るほどの白い手の平を見つめていた。そしてその手を自分の方へと引き寄せ身体のあちこちに叩くように触れさせた。こうする事で自分も父や母のように沢山のゴキブリの卵を身体から、いや性器から産み出す事が出来ると思ったのだ。


そうすればゴキブリを沢山潰し殺しても新しい子供が産まれて来てくれる。だから父や母はあちこちにいるゴキブリを叩いて殺す事も平気なのだ。永剛はその手伝いをしたかったのだ。


「そんな事をしてると学校に遅れるじゃないか」


母は微笑みながら永剛を諭した。永剛は頷き掴んでいた母の手を離すと行ってきますといい部屋から出て行った。


英永剛の小学校での成績はいつも「大変よく出来ました」の判子が押される程、よく出来る子供だった。


決して友達は多くなかったが、いないわけではなかった。ただ、そのどの友達も


「永剛君って何か変な臭いがする」


と口を揃えて言っていた。だが永剛はそれを悪口とは捉えず、気にもかけなかった。


どちらかといえば、おとなしい方で、協調性には欠けるが何かをやり始めると飽きて止めたり、出来なくて放り出したりする事なく、それが終わる、完成するまで黙々と取り組める忍耐力のある子供だった。


だから休み時間も友達と鉄棒で遊んでいても、永剛の気を引くような物を見つけると1人その輪から抜け出し、そちらへ行き休み時間が終わってもその場から離れる事はなかった。授業が始まって永剛の姿が見えない事に気づいた先生が呼びに来るまで永剛はそれに夢中でいられる、そんな子供だった。


夏休みに入ると永剛はいつもブリーフを脱ぎ自分の性器を眺めて1日を過ごした。あの夜以来、永剛の性器からヌメヌメした液体が出る事はなかった。それが悲しくて永剛は1日中、性器を見つめていたのだった。


何故なら毎日沢山のゴキブリを手の平で潰し殺しているのに代わりを増やす手伝いが出来ず、母を悲しませていると思っていたからだ。


だが、それはある時、唐突に訪れた。母と父が普段より早く仕事から帰って来て性器を眺めている永剛を見つけると右に母、左に父が座り、永剛の性器を弄り始めた。

父はスケベェなガキだなぁといい、母はあら?永剛はお父さんより、いやらしいわねとその顔に浮かんだ笑みを永剛に見せつけた。


2人の言った言葉の意味がわからなかった永剛は互いを見た後、再び自分の性器を眺めた。いきなり父が永剛の内腿をつねった。


「どうだ?」


「痛い」


「永剛をお父さんと一緒にしちゃダメじゃないか」


と母はいい永剛の性器に触れるとその長く白い指で性器の先にある皮を摘みゆっくりと引き下げ出した。


「痛いかい?」


永剛は首を横に振った。


「お父さん、何に対しも手順ってものがあるんだよ」


母は永剛の性器の皮をゆっくりと少しずつ上げ下げし始めた。最初は数ミリだったものがやがては数センチ近くまで動かし出した。それをしながら母はもう片方の手の平で永剛の背中や腰、お尻などを叩いた。


その合間合間につねられたり、爪で引っ掻かれたりしたが、全然痛くなかった。性器の皮が上下に動かされる中、母はその動きの速度に強弱をつけ始めた。


その瞬間、永剛の肛門の中で、父につねられ時のような痛みが走った。同時に性器の先から黄色く濁ったゴキブリに似た臭いを放つ液体が垂れ流れると母がそれを手の平で受け止めた。


その手に広がるゴキブリの卵が入った黄色い液体は、まるで遠浅の海を照らす太陽の光を浴びた砂のようにキラキラしていた。母はその手を持ち上げ顔に近づけそれを舌先で舐めると、


「良い子だねぇ」


と呟き、永剛の太腿を這うゴキブリの上へと叩きつけた。


少し痛かったが永剛は黄色く濁ったヌメヌメした液体の中で触覚を震わせながら蠢く死にかけのゴキブリを見ながら、これでお母さんも喜んでくれる、そして潰しても殺した数以上の新しい子供達が増えて行くのだなと、ジンジンと痺れる太腿付近をさすりながら永剛は思った。


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