第86話 新たな魔道具の作成
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戦闘終了後はとにかくその場を収めるのに苦労した・・。
夜中にワイワイガヤガヤと戦闘をしていたら、他の商隊の護衛の冒険者達も「何事だ?」と気がついて集まってくるわけで・・・。
幸いにも僕達が黒ゴブリン達を倒した瞬間は目撃されていなかったので、黒ゴブリン達の死体をアイテムボックスにさっと収納し、ゴブリン達の血や肉片で汚れた地面はこっそりと「浄化」の魔法をかけてきれいにしたあと、さらに「放水」の生活魔法で流してごまかしておいた。
これで対外的には「商隊を襲おうとしたゴブリンを従魔が発見したので、僕達のパーティーで追い払った。」という体にして、様子を見に来た他の冒険者達に説明し、お引取りを願った。
駆け出しのFランクパーティーが黒ゴブリンを撃退したなんて言っても誰も信じてくれないだろうからね(汗)
こんなところで目立ってはいけないのだ!
チャロンだけは、
「タクさんはもっと自分の能力をアピールされてもいいと思いますが・・。」
と言っていたが、
「お城の管理下にある間は目立つわけにはいかないしね。
旅に出た後は普通に対応しようね。」
と言って宥めておいた。
やはりお世話係たるもの、自分の主人には功績を上げて欲しいそうだ。
まあ、この世界の常識の1つとして覚えておこう。
「じゃあ、あと片付けも終わったから戻ろうか?
明日というか朝に備えて早く休まないとね。」
と言って、皆を連れて撤退する。
一つ気がかりなことは、僕達が戦っている最中もその後も商隊の人というか、荷物の持ち主が現れなかったことだ。
もしかして、冒険者に護衛を任せて街の中に泊まっているのだろうか?
夜中とはいえ、周囲にはそれぞれの商隊を警戒中の冒険者の眼があるので、荷物を盗みに来る輩はいないとは思われるが、絶対大丈夫とは言えないしね。
逃げてしまった冒険者を雇っていた商隊の荷物の警戒が気になったのでチャロンに相談してみたが、
「依頼者に同情はしますが、護衛を依頼する相手が悪かったとしか言えないですね。
残念ながら私達にできることはありません・・。
それに、さっき私達が戦っている間もその後も依頼者は姿を見せませんでしたしね。」
とバッサリと切り捨てられてしまった(汗)
この世界では旅の途中で何かあった場合は、護衛の質を見抜けなかった依頼者側にも責任があるらしい。
「自分の身は自分で守るのが基本」という考え方の延長線上とのこと。
これはチャロンの考えが良い悪いではなく、この世界の常識と僕達の世界の常識の差なんだろうね。
元の世界みたいに自衛隊によって平和が保障され、警察や海上保安庁等の法執行機関により治安が維持されている世界とは違うのだ。
この世界では、時と場合によっては自分の身を守るためには自分自身の手で武力を行使することも必要なのだ。
そこを見誤ると自身の身の破滅に繋がるだけだろう。
今の僕は仮にも5人+従魔達のパーティーのリーダーだからね。
甘い考えで自分のパーティーメンバーに危害を及ぼすようなら本末転倒である。
まさに「郷に入っては郷に従え」であろう。
「なるほどね。それは至極当然の話しというわけだね。」
「ええ。ただ、逃げた冒険者は護衛任務を放棄した扱いになるので、当然ながら依頼は未達成となり、冒険者ギルドからも何かしらのペナルティを受けるでしょうね。」
「そりゃそうだよね。
こんな事を許せば冒険者ギルドの看板に自ら泥を塗るようなものだしね。」
「はい。なので護衛任務の受注には一定の制限があるのですよ。
それに護衛任務をそつなくこなす冒険者は大きな商隊のお抱えになって指名依頼だけで食べていけますし、中には大きな商会に良い給料で引き抜かれて専属の護衛として就職する場合もありますから。
冒険者をいつまでも続けるのは大変なので、身を固めて落ち着きたい冒険者にとっては大きな商会に引き抜かれることは冒険者引退後の成功例の一つなんですよ。
むしろそうなりたくて護衛専門に冒険者をやっている人達もいますね。」
「なるほど。じゃあ、さっき逃げちゃった奴には明るい未来はないね。」
「ええ、逃亡者の汚名を着たまま低ランク冒険者の地位に甘んじるか、一度引退して遠くの国で別の名前でやり直すかのどちらかでしょうね。
そこも含めて自己責任なのが冒険者という職業ですから。
一攫千金を夢見るには、相応の対価が必要なのですよ。」
確かにそうだね。
チャロンのありがたい講義?を受けつつ自分たちの野営場所に戻った僕達は再び休みにつく。
留守番をしてくれていたマイティによると、こちらには異常は無かったらしい。
無事でなによりだ。
というか、従魔の存在は本当に助かるな。
テイマースキルの有用性を感じるぞ。
パーティーにテイマーを加えて従魔をたくさん使役すれば、護衛任務に特化できるのではないだろうか?
そのほうが安定的にいい収入を得ることができそうだぞ。
明日以降にでも楓ちゃんに提案してみるか。
上手くいけばテイマーによる警備会社を作れるかもしれないね。
この世界への貢献の一つになるかも?
それはともかく、まだ夜中の3時過ぎなので、僕は引き続き警戒を実施しよう。
女子チームにはゆっくり休むように言っておいた。
特にチャロンは4時から警戒当番だからね。
チャロンはこのような交代制勤務?には慣れているらしく、睡眠時間を少しでも確保するためにすぐに眠りにつけるらしい。
それも獣人族の特徴の一つとのことだ。
皆が休んでいる間に朝食の材料の準備とか、できることをやっておこう。
チャロンだけに負担をかけるわけにはいかないからね。
◇◆
僕は朝食のメニューを考える。
まあ、いつもの朝食セットでいいか。
主食はご飯とパンの両方を準備しよう。
どうせハラペコ女子達が食べ尽くすだろうから、たくさんあっても問題はない。
お米は1升ほど準備して、洗って水につけておこう。
ちょっと早いが問題あるまい。
卵とベーコン、付け合せのキノコや野菜は直前に炒めるとして、サラダは作っておこう。
レタスに、オニオン、トマトにキャベツの千切り等、を準備したらボールに入れてからアイテムボックスに放り込んでおく。
こういう時は時間停止機能のあるアイテムボックスは便利だね。
スープもついでに作っておこう。
朝だから野菜とベーコンのコンソメスープにしておこう。
朝食セットによく会うんだよね、これが。
カマドに火をくべて鍋をセットすると、ジャガイモ、人参、オニオン、キノコ、ベーコンを炒めて軽く火を通してから水とスープの素を加えてコトコトと中火で煮込んでおく。
うん、既に匂いだけで美味しそうだ!
味見を何度もしたくなる衝動に駆られるが、皆が食べる分がなくなるといけないので心を鬼にして踏みとどまる(汗)
このスープの匂いにつられて、女子チームと従魔達が朝からガッツリ食べそうなので、串焼き用の肉も串に刺してたくさん準備しておく。
昨日の昼に亜季ちゃんが狩った小動物も何匹か解体して食材に変化してもらった。
解体もスキルのレベルが向上したのか、素早くこなせるようになってきたぞ。
しかも毛皮を痛めることなく剥がせるようになってきたので、ギルドに売り払う用にアイテムボックスに保管しておく。
特にノウサギや、キツネ、タヌキやアナグマの皮はフワフワなので冬の防寒着用としての需要が高いらしい。
皮だけでも高く買い取ってくれるのだ。
僕達の食欲も財布も満たしてくれるなんて、なんていい子たちなんでしょう。
まさに自然の恵みに感謝である。
とまり木で解体の様子をじっとみていたクロロとマイティには肉をおすそわけしておく。
まあ、僕の代わりに警戒をしてくれている対価ということにしておこう。
横からヤトノが「私の分は?」と念話で聞いてきたので、串焼きを1本焼いてあげたら喜んでパクついていた。
ヤトノはヘビなのに何故か人間と同じものを食べたがるんだよね。
何か理由があるのだろうか?
毒を生み出すには食事が重要とか?
いろいろ謎である・・。
それはともかく、ご飯の支度はこんなもんでいいかな?
ここ数日は野外で調理ばかりしているから、生活の一部に料理の実施がしっかりと加わってしまった(汗)
きっとお城の厨房の皆さんや、街の食堂の経営者の方々はこんな生活なんだろうね。
多くの人たちの食を支えるために朝早くから働く人たちには頭が下がる思いである。
◆◇
食事の準備も一段落したので、スープの火の番をしながら先程の戦闘を振り返る。
結局のところ、戦闘を大きく支配したのは飛び道具なのだ。
しかも楓ちゃんの「土魔法のバール」は戦局を大きく変えたのだ。
一発で黒ゴブリンをふっ飛ばしたからね。
やはり次に作るべきは銃なんだろうね。
元の世界でも火縄銃がそれまでの戦闘の様相を大きく変えることができたように、銃を実用化すれば攻撃魔法を使えない人達も大きな戦力を手にいれることができるだろう。
他方、悪用を防ぐ事ができるように、所持の要件や罰則規定などの法整備も必要となってくるだろうが、それは僕にはハードルが高いし、そもそも僕の仕事ではない。
だが僕が作った銃を僕の信頼できる仲間に使用させる分には問題ないだろう。
「となれば、早速試作品を作ってみるか。
ただ、あまり複雑な構造はイメージしづらいから、おもちゃの拳銃のイメージで作ってみるかな。」
と独り言をつぶやくと、作るものをイメージする。
完成品のイメージとしてはよくある拳銃型の水鉄砲だ。
形状のイメージは問題ないが、引き金部分と弾倉部分は要検討だね。
とりあえず弾倉は交換できるようにしておこう。
「石礫」の魔法は魔力の燃費が悪いからね。
弾倉部分は元の世界の拳銃の弾倉の形状を参考に交換可能にしておく。
サバゲーで使用していた拳銃の構造を参考にすれば特に問題はない。
弾倉をいつもの真鍮で作って中に黒樫の炭の粉を詰めておけば専用の魔力電池になるからね。
問題は引き金部分か・・。
本物の拳銃と同じような構造は難しいので、いつもの魔道具用の押し釦を丸い筒型ではなく平たいく浅い三日月型の形状にしたものを作成する。
これをグリップ部分に取り付けて、魔法の発動のキーとすれば問題はないだろう。
あとはセーフティーロックをイメージした部品を取り付けておく。
と言ってもただの小さいレバーのようなものを本体の側面に取り付けるだけだが。
レバーを下げないと魔法が発動しないようにしておこう。
本体は実在の拳銃をイメージして作成する。
自衛隊制式採用の9mm拳銃を真似ることにした。
理由は特にないが、個人的に好きで雑誌等で写真をよく見ていたのでイメージが容易だと言うくらいである。
ちゃんと照準用の照門と照星もつけておく。
細部のデザインもできるだけ再現しておこう。
材料は昨日購入した剣と槍のジャンク品だ。
出先では鉄が入手できないので、購入しておいてよかったよ。
イメージを固めると「物体作成」スキルで各パーツを作成する。
「物体作成」もかなり使い慣れてきたので、イメージどおりの物を容易に作れるようになってきたね。
弾倉は真鍮だけだと表面の強度に不安があるので、真鍮で作った長方形の魔力電池を薄い鉄の板で巻いたものにしておく。
これくらいの造形なら特に問題はない。
ただ、細かい部分の造形をイメージするのが難しく、一番苦労したのは意外にもセーフティーレバーと弾倉を保持する部分の加工だった。
本物の拳銃のようには加工できなかったので、セーフティーレバーは本体側に薄く加工した押し釦を埋め込み、それをレバーで押さえ込む方式にした。
レバーを上げて押し釦を抑えている間は魔法が発動せず、レバーを下げて押し釦を解放すれば魔法が発動可能って感じだね。
本物の銃とはかなり構造が異なるが、とりあえずレバーの上げ下げで制御できるのでこれでよしとしよう。
弾倉の保持部分は操作のスピードを考慮すればボタン式になるんだろうけど、構造が複雑なので、とりあえずはヒール式のマガジンキャッチっぽい構造にしておいた。
加工した細い板とバネを組み合わせてそれっぽいものができたので良しとしよう。
マガジンはあくまでも魔力の電池なので、保持できれば何でもよいのだ。
本体はむき出しの鉄だと滑るので、グリップ部分は表面に斜めに溝を何本も切って滑り止めをつける。
最後の仕上げはサビ対策だよね・・。
剣や槍なら日々のお手入れで対応するんだろうけど、拳銃の表面はそういうわけにもいかないしね。
ここは通信制大学で学んだ知識の流用かな。
鉄の表面に酸化膜を形成すれば腐食を抑えることができるとか習ったな。
黒錆だったっけ?確か四酸化三鉄と呼んでいたっけ?
化学式はFe3O4だったはずだ。
確か元の世界の銃の表面もこの処理がされていたので表面が黒かったはずだ。
とは言うものの、高温に熱するとか、いわゆる黒染め処理をしないと自然には発生しなかったはず・・。
うーん困ったな・・。
知識はあってもそれを作る工程を知らなければ再現できないぞ(汗)
こういう時に元の世界のネットの便利さを再認識するよね(汗)
ここでふと、自分のスキルの中にいろいろと未使用のものがあることを思い出した。
そういえば昨日の朝のステータスチェック時にスキルのレベルの差をなんとかしなきゃ、と考えていたのだった。
今こそ、死蔵している未使用スキルを活用する時ではなかろうか?
「何か使えるスキルはないだろうか?」
とステータスを見ながらチェックする。
すると【錬金術系】のスキルに「物質生成(見習い)」というのがあった。
おお!これはあれだね、錬金術士ボーイのレンくんに教えてもらったのはいいが、今まで一度も使ったことがないスキルだな。
たしか、2種類以上の素材を合成して新たな物質を生成できるスキルだったはず。
これは今こそ活用すべきでは!
「これだよ、これ!早速試してみよう!
材料は鉄と酸素だけだから、既に存在しているのも都合がいいね!」
と独り言をつぶやきながら、ウキウキ気分でスキル発動の準備をする。
僕は四酸化三鉄化学式をイメージしながら拳銃と弾倉の表面に「物質生成」を発動する。
この時、膜の厚さが均一になるようにイメージすることを忘れない。
表面が凸凹になったらかっこ悪いからね。
するといつものキラキラエフェクトが拳銃と弾倉を包んだかと思うと、それらはイメージどおりにつや消しの黒色で覆われた状態に変化していた!
「おお!イメージどおりだよ!9mm拳銃っぽいね!」
僕は予想以上の仕上がりにウキウキである。
やはり男子の特性なのか、銃を見たら興奮するよね。
僕のサバゲー熱がフツフツと湧いてきたぞ!
まあ、この世界では毎日がリアルなサバイバルゲームなのだが(汗)
拳銃と弾倉を組み合わせると、いい感じでカチッとはまった。
マガジンキャッチも特に問題なく、弾倉の脱着もスムーズだ。
あとはセーフティレバーの動作だが、こちらもまずまず問題はなさそうだ。
レバーの動きをスムーズにするために押し釦のトップにテーパーを付けて緩やかな三角形に修正する。
これでレバーの上げ下げがスムーズになったぞ。
「後は魔法の付与だけだが・・、どうせなら「石礫」の大きさも実際の拳銃と同じ大きさにしよう。
楓ちゃんにあげた「土魔法のバール」と同じだと魔力を一瞬で使い切ってしまいそうだしね。
やはり拳銃と言えば9mmパラベラム弾だよね。
薬莢部分は不要だから、弾頭部分の直径9mmのどんぐり型の部分だけ回転しながら射出するイメージで魔法を付与しよう。
では、いざ魔法付与開始だ!
自分のスキルを信じるんだ!」
と、僕は自分を励ますように付与魔法をかける!
特に意味はない。
夜中なので無意味にテンションが上がっているだけである。
動作、石礫のサイズや射出の条件を強くイメージしたので大丈夫であろう。
そして再び拳銃はキラキラエフェクトに包まれる・・。
僕は付与魔法をかけ終わった拳銃を手に取ると、「目利き」で仕上がり具合を確かめる・・。
すると、
土魔法の拳銃(魔導具)(上級):
・引き金風の押し釦の操作で「石礫」を発動できる。
・石礫の大きさは9mmパラベラム弾の弾頭と同じ。
・連続使用回数は20回。(弾倉交換により連続使用可能)
・有効射程50m(最大)
・セーフティーレバー付き
・1時間で再チャージ可能。
と、表示された!
おお!成功だぞ! 魔道具(上級)になってるしね!
しかも性能は実際の拳銃と遜色ないぞ!
石礫の大きさを小さくしたおかげで連続使用回数は攻撃魔法の短筒よりも向上している!
これは良い意味でやらかしてしまったかもしれない。
「早速試し打ちしたいところだけど、夜中に物音を立てるわけにはいかないからね。
試射は明日の昼休憩の時に森に向かって実施しよう。
それよりも皆が欲しがるのは間違いないから作っておくかな。
弾倉の予備も必要だしね。」
と言うと、手持ちの材料を使って拳銃と弾倉をを複製しまくる。
付与魔法をかけ終えて、皆の分の拳銃と弾倉が完成した。
弾倉は1人あたり4本になった。
1本は拳銃の中に入れて、予備が3本だ。
何か思想があったわけではないが、手持ちの材料が尽きてしまったのだ(汗)
拳銃と弾倉をアイテムボックスに収納したところで時間を確認すると既に4時を過ぎてしまっていた(汗)
「いけない!チャロンを起こさないと(汗)」
僕は慌ててチャロンを起こしに行く。
物づくりに夢中になってると時間を忘れちゃうよね(汗)
◆◇
「チャロン、僕だよ。そろそろ交代の時間だよ。
起きれるかい?」
と優しく声をかけてチャロンを起こす。
「うーん、ムニャムニャ。
あ、タクさん、起こしてくれてありがとうございます。
すぐに行きますので待っててください!」
とテントの中からチャロンが答える声が聞こえる。
ふう、どうやら先程の戦闘のダメージは無いようだ。
僕はスープの火加減を調節しながらチャロンを待つ。
うん、コトコト煮込んだから根野菜が溶けそうなくらいに柔らかくなってるね。
味もしっかり染み込んでいるに違いない!
「タクさん、お待たせしました!
交代するので早く休んでくださいね!」
とチャロンがやって来た。
「チャロンお疲れさま。警戒は異常ないよ。
朝食のスープを煮込んでいるので火加減を見ておいてくれるかい?
いいところで一度火を止めておいてね。
食べる前にまた温めればいいから。
あと、お米は水に漬けてあるから、6時に炊きあがるくらいで火にかけておいてくれるかい?
その他のおかずは僕が起きてから準備するよ。」
と、調理当番のの申し送りをする。
「タクさん、ありがとうございます!
朝食の準備もしてくれていたんですね!
さすがタクさんです! 助かります!
後はやっておくので休んでください!」
「ああそうするよ。
今夜もいろいろあったから体力を回復させないとね。」
と言うと、僕はチャロンを優しく抱き寄せて唇に軽くキスをする。
「おやすみ、チャロン。」
「おやすみなさい・・、タクさん。
ヤトノちゃんもおやすみなさい・・。」
真っ赤な顔をして僕を見送るチャロンの姿に後ろ髪を引かれつつ、僕はヤトノを左腕に巻きつけて自分のテントに向かう。
テントの前の止まり木に掴まって寝ているクロロを優しく撫でながらテントに入って寝袋にくるまると、すぐに睡魔に襲われる。
ああ、今夜の戦闘では皆が無事でよかったよ。
目が覚めたらまた頑張ろう。
とりあえず今は寝よう。
おやすみなさい、異世界・・。
◆◇
「チュンチュン・・」
という小鳥の囀る音で僕は眼が覚める。
テントの隙間から入り込む光が朝の到来を告げている。
時計を見ると朝の6時少し前だ。
いつもと同じ時間に起きたということかな?
体内時計って割と正確だよね。
「うーん、もう朝か。起きて朝食の準備をしないとね。
ハラペコ女子達が待っている・・。」
と、僕は自分を奮い立たせるとモゾモゾと寝袋から這い出す。
自分で設計したキャンプギアを初めて使ったキャンプであったが、思いのほか快適であった。
まあ、キャンプといえどもお風呂とトイレは完備で快適だし、バッジの魔道具のおかげで服も汚れなければ快適温度を維持してくれるし、とサービス満点なので快適なのは当たり前なのだが。
これが他の冒険者達がするような普通の野営なら寝心地が悪いばかりか、日を重ねるごとに不快指数がUPしていくのは想像に難くない。
「こればかりはスキルに感謝だね。
さあ、ハラペコ女子達のためにご飯と朝風呂の準備をしよう!」
僕は服装を整えてテントから這い出すと、朝食を準備中のチャロンの元へと向かう。
「おはようチャロン。異常はなかったかい?」
「あ、タクさん、おはようございます。
警戒中に異常は無かったですよ。
もう日が昇ったので大丈夫でしょう。
朝食の準備は実施中です。
ご飯も間もなく炊けますし、スープも温め直していますよ。」
「ありがとう。じゃあ先に朝風呂の支度をしてくるから女子達を起こしておいてくれるかな?
皆の朝風呂が終わったらご飯を食べよう。」
「はい、わかりました!
皆を起こしてきます!」
とチャロンはテントゾーンに駆けていく。
フサフサの尻尾が揺れてかわいいな。
僕はお風呂に移動すると、浴槽に「放水」の魔法で水を張り直して「火球」の魔法で湯を沸かす。
もう、適温のお湯を作るための「火球」の発動回数もわかったので、あっと言う間にお風呂の準備は完了だ。
何事も経験が大事だね。
キッチンエリアに戻ると早速朝食の準備だ。
昨夜のうちに作っておいたサラダと昨日購入したパンを配膳したら、次に大きなフライパンで目玉焼きを焼いていく。
卵が焼けたらベーコンの厚切り、大きめのソーセージと鶏の胸肉を贅沢に焼いていく。
今日は目玉焼きとミックスグリルの朝定食だ!
見てるだけで美味しそうだぞ!
本来なら5人分だが、なぜかヤトノが僕達と同じ食事をペロリと食べるので、はじめから6人分作っておく。
余ることは・・・、まずもってないだろう・・。
うーん、卵とベーコンなどを焼く音と匂いだけで食欲が刺激される!
これぞキャンプの醍醐味だね!
料理の匂いにつられたハラペコ女子達がテントから這い出てくる。
チャロンに越された時はムニャムニャ言っていたようだが、料理の匂いには勝てなかったようだ。
「おはようございます、タク先輩!」
「おはようございます、タク先輩。お腹が空きました・・。」
「おはようございます!昨夜はおつかれさまでした!」
と楓ちゃん、亜季ちゃん、アカネちゃんの順で挨拶してくる。
亜季ちゃんは若干本音が漏れてるぞ(汗)
「みんなおはよう! 異常はないかい?
昨夜の戦闘で汗をかいただろうから、先にお風呂に入ってスッキリしてきてくれるかな?
皆が戻ってきたら朝食にしよう。
チャロンも皆と一緒に行っておいで。」
と、女子チームに朝風呂を勧める。
女子チームは、
「「「「はい、わかりました!」」」」
と元気よく答えて皆でお風呂に行ったが、チャロン以外の3人の顔が赤かったのは何故だろう?
熱でもあるのだろうか?
お風呂から聞こえるキャッキャした声を聞きながら串焼きをセットしつつ、炊きあがったご飯を蒸らす。
うん、いい感じで炊けてるね!
スープの温めも終わりそうだし、朝食の準備は完了だ!
僕は従魔達を呼び寄せようと立ち上がる。
その際にふと周囲を見渡すと、またまた周囲の商隊の護衛の冒険者達がこちらをチラチラと覗いていた(汗)
どうやら朝食の美味しそうな匂いにつられたらしい(汗)
まあ、気持ちはわかるけど、君たちの分はないぞ!
◆◇
「「「「「いただきまーす!」」」」」「バウ!」「ワウ!」「ピィ〜!」「・・!」「ホゥ!」
と、キッチンエリアに元気な声が響く。
女子チームが朝風呂から帰ってきたので朝食の開始だ。
腹ペコ女子達は自分達の携帯用鍋セットにご飯やおかず、スープをよそうとモリモリと食べている(汗)
みんな食べることに夢中で会話もない(汗)
どうしてそんなにお腹が減っているのだろうか?
もしかしてまだ成長期?
先に言っておくと、成長は縦軸方向だけとは限らないぞ?
横軸と奥行き方向にも有りだからね。
食べすぎには気をつけようね!
もちろん従魔達も負けてはいない。
ムシャムシャゴックンと大忙しである(汗)
僕は自分の食事もそこそこに、従魔達の食事の準備に追われている(汗)
串焼きに、生肉の準備にと大忙しだ(汗)
ヤトノだけは僕達の定食と同じものを食べているが・・。
今ではフォークやスプーンを尻尾に巻きつけて器用に使いこなしている。
心なしか動作が人間ぽくなってきてないかい?
準備した料理が全て食べつくされた頃、ようやく女子達が言葉を発する。
「ふう〜、野外で食べる朝食セット美味しかったです!」
「朝風呂からの美味しい朝食なんて、キャンプと言うより温泉旅館に来た気分ですね!」
「一緒にお泊りした翌朝にタク先輩の手作り料理を食べるなんて・・。
これって同棲って言うんですよね。」
と、それぞれが感想を述べる。
ただし最後の亜季ちゃんのコメントは明らかに間違いだ!(汗)
これは同棲ではない、ただの野営訓練だよ!
僕は伝家の宝刀である「スルー」のスキル?を発動しておく・・。
「喜んでもらえて何よりだよ。
皆がいつも美味しそうに食べてくれるから作りがいがあるね。」
「本当に美味しいです!
これからも毎食作って欲しいです!
てゆうか毎日タク先輩の料理が食べたいです!」
と楓ちゃんがリップサービスしてくれる。
まあ、行動中の食事なら任せてもらって問題ないよ。
おっと、亜季ちゃんがジト目なのは何故だろうか?
何か問題でも?
「ははは、毎食だと流石にレパートリーが足りないかな?
まあ料理も頑張って研究しておくよ。」
と無難に回答しておく。
「タクさん、片付けは私達がやっておきますので、朝風呂をどうぞ。
従魔達も待ってますよ。」
「ああ、ありがとう、チャロン。
悪いけどお願いするね。」
と言い残すと、従魔達と一緒に朝風呂に向かう。
まあ、朝食作りを担当したから、あと片付けをお願いしても問題ないかな?
◆◇
「ああ〜、朝から外でお風呂って気持ちいいね!
露天風呂に入ってる気分だよ!」
と浴槽につかりながら思わず独り言が漏れる。
治癒魔法の魔導具で自動的に治療しているとはいえ、やはりお風呂に入ると疲れが飛んでいくように感じるぞ!
従魔達もお湯につかって蕩けている。
君たち、すっかり野生を無くしていないかい?
僕はお湯の上を器用に泳ぐヤトノを見ながら、
「それにしてもヤトノが毒攻撃を使えるとは驚いたね。
しかも即効性の麻痺毒だしね。
食べ物も僕たちと同じものを食べるし、やはりただのヘビではないのだろうか?」
と、ふと呟く。
するとヤトノから「フフン!」という念話が返って来た。
何故か得意げに胸を反らして、というか、わざわざ上体を起こしている。
まさかのドヤ顔?
なんか他の従魔と違って態度がどんどん人間ぽくなってきたな。
何か秘密があるのだろうか?
そんなことを考えつつ、体を洗ってお風呂を出る。
やはりチャロンがいないといまいちスッキリしないよね(汗)
何かもの足りないのだ!
その何かは明白なのだが(汗)
要するにご奉仕が足りない!
とりあえず、今日お城に帰ったら昨日の分までスッキリしてもらおう!
◆◇
従魔達を乾かして一緒にお風呂を出たら、キッチンの片付けは既に終了していた。
「みんな食事のあと片付けありがとう。助かったよ。
後はテントの片付けと土壁の現状復旧かな?
ササッと片付けて出発準備をしようか。」
と言って、皆で片付けを開始する。
片付けもキャンプギアの評価項目の1つだからね。
商品開発だと思って確認しながら片付けてみよう。
ブランケットと寝袋は・・、まあ、たためばいいだけだが、やはりかさばるよね。
僕たちにはアイテムボックスとか空間魔法のポーチがあるから問題ないけど、普通の冒険者にはちょっと不便か?
テントもたためばOKだが、かさばるのは同じか・・。
いずれも背負って運ぶのは可能だけど、長時間だと背中が蒸れて不快だよね。
やはり空間魔法を付与したポーチをを商品化すべきかな?
値段と機能を抑えた廉価版で。
時間経過停止も無しで、容量が50リットルくらいあればキャンプ道具収納だけなら十分だろう。
値段次第ではヒット商品になりそうだよね。
問題は僕の能力がバレてしまうことだけど・・。
やはり早くお城を出ないといけないな。
帰ったらチャロンと相談しよう。
そんなこんなで荷物の片付けが終わったので、携帯用トイレと排水の魔導具を回収する。
あとは土壁の現状復旧だ。
これは楓ちゃんに任せてしまおう。
「楓ちゃん、土壁の復旧をお願いできるかな?
土魔法のバールの「物体作成」機能を使えば、土壁を壊して元の地面に現状復旧できるよ。」
「はい!お任せください!
タク先輩の楓が頑張って現状復旧します!」
と元気良く答えると、土魔法のバールを使って土壁を解体していく。
うーん、楓ちゃんが何かよくわからないことを叫んでいたが気にするのは止めておこう・・。
おや?亜季ちゃんが能面のような顔をしているが何かあったのかな?
もしかしてもうお腹が空いたのかい?
ものの10分程度で土壁が解体されて現状復旧が終了した。
すっかり「土魔法のバール」を使いこなしているね。
魔道具の存在を知らない人が見たら、楓ちゃんはテイマーではなく優秀な土魔法使いに見えるだろうね。
「ありがとう、楓ちゃん。
これで片付けは完了だね。
じゃあみんな王都へ向かって帰ろうか?
今日もいい天気だし、ピクニックを楽しみながら王都に戻ろう!」
「はい、タクさん!」
「わかりました!」
「タク先輩、昼ごはんも楽しみにしてますね!」
と、チャロン、アカネちゃん、亜季ちゃんが答える。
亜季ちゃん・・、もうお昼ご飯の心配かい?・・
「いやー!、野営訓練2日目の出だしも順調ですね!
美味しい朝ごはんと、気持ちのいい朝風呂を楽しんで最高の気分です!
でもあれでしたっけ、こういう時こそ気をつけないといけないんですよね?
確か『好事魔多し』って言うんでしたっけ?」
と、楓ちゃんがフルスイングでぶっこんでくる!!!
ヤバい!
すっかり油断していて楓ちゃんに箝口令を敷くのを忘れていたぞ!
「楓ちゃん」「カエデさん」「「楓」」「バウ」「ワウ」「ピィ」「・・」「ホゥ」・・
「「「「それはフラグだよ!(フラグですよ!)(フラグよ!)」」」」
「バウ!」「ワウ!」「ピィー!」「・・!」「ホゥ!」
と、みなの渾身のツッコミが野営広場にこだまする・・・。
その直後、後方に複数の人の気配を感じたと思ったら、年配の男性が僕達に声をかけてきた。
「あー、君たちちょっといいかな?」
声をかけられたので振り返ると、そこには年配の衛兵っぽいおじさんと、ギルドの職員っぽい中年のおじさんが立っていた。
何故かその後方には衛兵が20名ほど立っている。
もうトラブルの予感しかないぞ!!
僕は嫌な予感に囚われつつも、
「はい、何かご用ですか?」
と、丁寧に対応する。
おじさん達は、
「私はレッドウイングの町の守備隊長のグレンだ。」
「私は王都冒険者ギルドのレッドウイング支部のモーリスだ。」
と自己紹介してくる。
僕は、
「どうもご丁寧にありがとうございます。
私は冒険者のタクと申します。
はじめまして。」
と挨拶する。
それを聞いた守備隊長のグレンさんが唐突に、
「うむ。冒険者タクとその仲間達よ。
君たちには暴行罪の疑いがかかっている。
出発準備中のところ悪いが、守備隊の詰所まで同行を願えるかな?
ちなみに拒否する場合は逮捕して強制的に連れていくことになる。
好きな方を選びたまえ。」
と仰られた・・。
な!、なんですと!!
まさかの異世界でタイーホですか??
どうやら今回のフラグは過去最大かつ過去最大にパンチが効いているようだ(汗)
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