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第87話 異世界初の取り調べ(被疑者モード)

急遽、長期の出張に駆り出されていたため投稿が遅くなりました。

更新が遅れてすみません・・。


 Q:ここはいったいどこでしょう?

 A:はい。守備隊の取り調べ室ですよ。


  はい。僕達は何故か守備隊の取り調べ室で尋問を受けています。


 尋問と言っても、あくまでも暴行罪の疑いで任意の取り調べのような感じなので、守備隊長とのやり取りは紳士的であるが。


「さて、冒険者タクとその仲間たち。

 本日の未明に君たちが野営広場で冒険者に暴行を働いたという届け出があった。

 届け出を受理したからには調べざるを得ない。」


「はあ。全く見に覚えはありませんが、取り調べには応じます。

 ちなみに黙秘権はありますか?

 また弁護士を呼ぶことは可能ですか?」


 と元の世界の刑事物のドラマにでてくるような台詞を言ってみる。


 このプロセスは外せないよね!


「両方とも聞いた事がない言葉だな。」


「黙秘権とはあえて答えない権利のことですよ。

 弁護士とは取り調べや裁判において法的観点から助言や答弁の代行をしてくれる職業の人のことですよ。」


「ふむ。なるほど。

 それはわかったが、そのような仕組みはここには無いな。

 自分の無実は自分で語る。

 何も難しい話ではあるまい?」


「わかりました。先の質問のことは忘れてください。」


 なんと、黙秘権も弁護士もないのか?


 それでは定番の「黙秘します。」の台詞や、小さな穴のたくさん空いたガラス越しに弁護士と面会する、といったテンプレイベントが経験できないじゃないか!


 まあ、そんなことを楽しんでいる時間的余裕はないが。


 僕には早くお城に戻ってチャロンといろいろするというミッションがあるのだ!


「うむ。では取り調べを続けよう。

 君たちの容疑だが、夜間に商隊の警備を実施中の冒険者に弓矢による攻撃を放ち、その後、剣を持って襲いかかったというものだ。」


「なおその冒険者は、君たちの暴行行為のせいで護衛任務の遂行を阻害されたとして、冒険者ギルドに依頼失敗に対する救済措置を求めている。

 冒険者ギルドとしても本来なら依頼成功で得るはずだった収入を補償してもらう必要がある。

 よって君達の犯罪を暴き責任を取ってもらうべく守備隊に訴えたのだ。」


 と守備隊長の後ろに座るギルド職員のモーリスが補足してくる。


 はあ? 何ですと!


 守備隊に訴えたのはあの逃げた冒険者だな?


 自分が護衛任務を放り出して逃げたのを、人のせいにして責任逃れしようという魂胆か?


 逃げるだけでも冒険者として問題有りなのに、仮にも命の恩人の僕達に自分の不始末の責任を押し付けるとは、人として如何なものか?

 厚顔無恥とはこのことだな!

 冒険者の風上にも置けないやつだ!


 ここはしっかりと反論する必要があるな。

 交渉人スキルを発動してキッチリと詰めてやろう。


「こちらの言い分を説明してもよろしいか?」


「うむ、問題ない。」


「まずはじめに確認ですが、その冒険者の証言を裏付ける証拠はありますか?」


「証拠はない。本人の申告だけだ。」


 まあ、目撃者がいないのは知ってるけどね。

 黒ゴブリンを倒すところは誰にも見られてないしね。


 それにしても、当事者の申告だけで逮捕も辞さないとは荒っぽいな?

 普通は証拠を集めて裏取りするだろう?


「わかりました。

 では当時の状況を説明しましょう。」


 と言うと、夜中の状況を順を追って説明する。


・その冒険者が寝ていたこと。

・従魔のクロロが黒ゴブリンに襲われそうな冒険者を発見したこと。

・弓の攻撃で黒ゴブリンを止めたこと。

・冒険者が黒ゴブリンを見て逃げ出したこと。

・黒ゴブリンをなんとか倒したこと

等々。


「と言うことで、我々はその冒険者に感謝されることはあっても、訴えられる筋合いは1mmもないですね。

 ちなみに、その冒険者が黒ゴブリンを見て逃げ出した事は私の仲間が目撃していますので証人はいますよ。」


 と付け加える。

 チャロン達はウンウンと頷いている。


「ふむ。話の流れに引っかかる部分はないな。

 ところでモーリスよ。くだんの冒険者は黒ゴブリンの事は何か言っていたのか?」


「いいえ、言っておりませんでした(汗)」


「冒険者タクの言うことが本当なら、その冒険者は魔物から依頼主を護衛する責任を放棄したことになるぞ。

 悪いのは冒険者タクではなく、その冒険者じゃないのか?

 モーリスよ、冒険者ギルドはしっかりと聞き取りをしたのか?」


 と守備隊長がモーリスに静かに詰め寄る。


「も、もちろんですよ。

 それよりもこの冒険者が黒ゴブリンを倒したと言う話が本当かどうかわかりません!

 ちなみに貴様たちのランクは何なのだ?」


 とモーリスが聞いてくる。


 うーんどうやら守備隊長は公平な人だが、ギルド職員のモーリスに問題がありそうだぞ。


「我々はFランクだが何か?」


「Fランクだと!

 Fランクごときがあの黒ゴブリンを倒せるわけがないだろう!

 うちのギルド支部のDランク冒険者ですら手に負えなかったんだぞ!」


 とわめき出す。


 うーんなんかこいつが怪しいな・・。

 なんか隠してそうだね。


「ふむ。冒険者タクよ。

 君たちが黒ゴブリンを倒したという証拠はあるのか?

 我々が現地を確認した際には、戦闘の痕跡はなかったのだが。」


「ええ、もちろん。

 それで疑いが晴れるのでしたらとびっきりの証拠をお見せしましょう。」


「うむ、では早速見せ給え。」


「はい。いいですよ。ですがその前に1つ確認しても?」


「うむ、よいぞ。」


「仮にですが、私達が有罪となった場合はどうなるのですか?」


「そうだな。暴行罪は罪が重い。

 ましてや今回は武器を持っての暴行だからな、逮捕のうえ犯罪奴隷として罪を償うことになるだろう。

 また犯罪奴隷としての強制労働で得た収入で冒険者ギルドに損失を補填する事になるな。」


「なるほど、わかりました。」


 逮捕即奴隷かよ!

 この世界の刑法ってどうなってるんだ?!

 誤認逮捕ならどうするんだよ?

 三審制とかはないんかい?!


「では仮に、私達の無実がわかった場合は、その冒険者はどうなりますか?」


「そうだな。冒険者としては依頼失敗の扱いになるだろう。

 そのペナルティは冒険者ギルドの規定による。

 ただし今回は守備隊に訴えているからな。

 その訴えが虚偽であれば、相応の罰を受ける必要があるだろう。

 もし仮に君達を犯罪奴隷として強制労働させた対価をもって不当に利益を得ようとしていたならば重罪だ。

 何しろ悪意をもって無実の者を奴隷にしようと企んだわけだからな。

 高額の罰金を納めるか、払えないなら犯罪奴隷として強制労働させられるかのどちらかだ。

 少なくとも冒険者タク達が受ける見込みであった罰と同等以上になるだろう。

 そうでないとバランスが取れないからな。」


「なるほど。よくわかりました。」


 うん、そのコメントが聞きたかったよ。

 守備隊長さんありがとう。


 僕は冒険者者ギルド職員のモーリスの方を向くと、


「だそうですよ。モーリスさん。

 私が持つ証拠を見せれば、我々の無実は明らかになりますし、逆にその冒険者が罪に問われるでしょう。

 仮に誰かがその冒険者と共謀しているならば、その協力者も罪に問われるでしょうね。」


 と語りかける。


 その途端にモーリスは滝のような汗をダラダラと流しだす。


 やはり怪しいな。

 絶対に何か隠しているだろう。

 もう少し畳み掛けておくか。


「少しだけ我々の話をしてもいいですか?」


「うむ。よいぞ。」


「それでは少しだけ。

 実は我々は王城の関係者です。誰とは言わないですが、とある王族の下で秘密の任務についています。昨夜野営広場で野営していたのも任務の一環です。

(うん、嘘ではない。クレア王女に召喚されて、彼女の命で訓練中だからね。)

 この国の国民を魔物の襲撃から救った王族のスタッフを虚偽の訴えにより拘束した事が表ざたになれば、虚偽の訴えをした冒険者とその共謀者はただでは済まないでしょうね。

 その冒険者の訴えは真実なのですか、モーリスさん?

 よく確認されたのですか?」


 とモーリスに淡々と語りかける。


 その途端にモーリスの顔が青ざめて、ワナワナと震えだす。


「うむ、どうなのだモーリスよ?

 その冒険者の訴えはよく確認したのか?」


 モーリスは小刻みにワナワナと震えながら


「も、もちろんしっかり確認しましたとも!

 こいつらが冒険者を襲った事は間違いありません!

 それにこいつらが王族の関係者である証拠はないでしょう!

 こいつらこそ嘘をついているかもしれません!」


 とわめき出す。

 うんいい感じで焦ってるな(笑)


「うむ。そこはどうなのだ、冒険者タクよ。何か証拠はあるのか?

 もし嘘の言い訳をするために王族の名を出したのであれば重罪だぞ。

 最悪は死罪も免れんぞ。」


 おお!やはり王族の名を語って嘘をつくと重罪なんだね。

 王族の権威ってすごいな!


「はい。嘘ではありませんよ。

 重罪を受けるリスクをおかしてまで嘘をつくメリットはないですからね。

 私の話が真実なのかを知りたければ、王城に問い合わせてください。

 早馬とか伝書鳩を使えば今日の午後には確認結果が届くでしょう。

 ただし、回答を持って来るのは王城の騎士団と魔法士団でしょうけどね。

 鑑定スキル持ちの魔法士が我々の主張の真実を確認して、嘘をついている方を騎士団が逮捕するでしょう。

 どちらが悪いにしろ、王族の名誉を汚したわけですから。」


 と淡々と回答する。

 実際のところ、クレア王女がわざわざ召喚した勇者を4人も拘束されたら、事実確認のために誰かを派遣するだろう。


「ふむ。それもそうだな。

 では王城に使いを出しても問題ないか?」


「はい。私は全く問題ないですよ。

 むしろ早くそうしてください。

 そのほうが私の無実が早く判明するでしょうから。」


「了解した。では、モーリスよ、お主はどうなのだ?

 お主と訴えた冒険者の主張が真実なのであれば、王城に問い合わせても全く問題はあるまい?」


 と守備隊長がモーリスにナチュラルに追い込みをかける。


 モーリスは既にガクブルで汗ダラダラである。

 うん、こいつ絶対に何か隠してるな。

 間違いない。


 恐らくくだんの冒険者とつるんで何か不正をしているんだろう。


 ここはさらに追い詰めておこう。


「守備隊長さん。仮に私が先に黒ゴブリンを倒した証拠を提示して、私達の無実を証明したらどうなりますかね?」


「うむ。その場合はモーリスと訴えた冒険者を詐欺罪などで取り調べる事になるだろうな。

 合わせて冒険者タク達が王城の関係者であることの確認が取れれば、王城関係者の業務を不当に妨害した罪にも問われるだろう。」


「重罪になりますかね?」


「そうだな。まあ下手をすれば君達5人の人生を大きく狂わせるところだったからな。

 しかも君達が王城の関係者だとしたらさらに重罪になるだろう。

 まあ、犯罪奴隷として鉱山にでも送られて死ぬまで働かされる可能性は高いだろうな。」


「それはえらいことですね。

 我々も下手したらそんな目に合うかもしれないと思うとゾッとしますね。

 では我々もさっさと証拠を見せて無罪を証明するとしましょうか。」


 と言って、モーリスを見る。


 もう生気を失っているのかと思うくらいに真っ青な顔をしている(笑)


 もう黒なのは間違いないだろう。


 このまま倒した黒ゴブリンを証拠として見せてもいいのだけれど、その後の事情聴取や黒ゴブリンがどんな感じだったとかの話が長くなると面倒だ。


「守備隊長さん。仮にですが、モーリスさん達が訴えを取り下げたらどうなりますか?」


「うむ、その場合は暴行罪の疑いは無くなって君達は無罪放免だ。

 今のところ訴えた冒険者には怪我はないし、明らかな証拠はないからな。」


 おお、それはいいぞ!

 モーリス達に足止めされたのは腹立たしいが、奴らが訴えを取り下げればさっさと王城に戻れるぞ。

 ここは交渉人スキルを発動してモーリスの奴に訴えを取り下げさせよう。

 奴もみすみす重罪になりたくないだろう。



「モーリスさん。物は相談ですがね。

 私達も任務で忙しい。

 既に予定が1時間近く遅れている。

 これ以上長引けば本日の任務に影響を及ぼし、何があったかを報告せざるを得ない。

 そうなれば私達の有罪無罪に拘らず、あなたは王城の騎士に厳しい取り調べを受けるだろう。

 明確な証拠も無しに私達を足止めして王城の業務を止めたんだからやむを得ないでしょうね。」


 とプレッシャーをかける。

 モーリスはもうガクブルである。

 さて、ここで逃げ道を用意してやるかな。


「とは言え、今ならまだギリギリで任務復帰が可能な時間だ。

 我々も少しだけ急いで行動しないといけないが、任務には影響ないだろう。

 なので、あなたが今ここで自分の訴えを取り下げるなら、私達も何も言わずに立ち去りましょう。

 今なら王城にはこの件は内緒にしておきますよ。

 今ならね。

 誰だって間違いはありますからね。

 あなたが素直に自分の間違いを認めるなら、我々もとやかく言うのはやめておきましょう。

 1度くらいの間違いを許さないほど我々は狭量ではないですよ。

 さあどうしますか?」


 と手を差し伸べる。


 モーリスはそれでも「グヌヌ・・」と言って固まっている。

 すぐに食いついて来ないあたり、何かよほどの事情があるのか?

 もうひと押ししてみるか?


「モーリスさん。何をそう悩む必要があるんですか?

 そもそもですが、今回の件はあの冒険者が自分の仕事を失敗しただけの話で、あなたに非はない話では?

 あなたが正面に立って守備隊に訴える話じゃないでしょう?」


「それはギルドの支部に損害が・・」


「どんな損害があるのですか?

 仮に何か損害があったとしても、依頼を失敗した冒険者が弁償すればいいでしょう?

 あなたには関係のないことだ。

 さあ、どうしますか?

 もう時間切れですよ。

 今ならこの件は王城には無かった事にしてあげましょう。

 さあ決めてください。」


 とたたみかける。

 焦らせて考える時間を与えないのが交渉のコツなのだ。

 何か押し売りするわけでもないから、多少追い込んでも問題はないはず。


「うむ。どうするのだモーリスよ。

 冒険者タクの言うとおり、時間を無駄にするのはよくない。我々も忙しい。

 このまま訴えを続けて取り調べを継続するか、訴えを取り下げるかどちらかを選ぶのだ。

 その代わり前者を選ぶなら徹底的に調べる事になるぞ。」


 と守備隊長さんもかぶせてくる。


 どうやら守備隊長さんもモーリスが怪しいと気づいたのかな?


「さあ、早く結論を出してくださいね。

 念のために言っておきますが、私は嘘を言ってませんからね。

 証拠もありますし、証人もいますしね。何よりお城のスタッフですから身分の保証も問題ありませんよ。

 あなたは仕事を放棄したバカな冒険者の嘘に巻き込まれて大切な物をいろいろ失ってもいいんですか?

 賢明な判断をしてくださいね。」


 と最後の引導を渡す。


 ここまで言っても訴えを取り下げないならやむを得ないね。



「ぐぬぬ・・。Fランク冒険者が黒ゴブリンを倒したり王城のスタッフな訳がない・・。

 だがもしも本当だったら取り返しのつかないことに・・。」


 とモーリスは歯ぎしりしながら小声で独り言を呟く。

 本人は誰にも聞かれていないつもりのようだが、従魔との感覚共有を体得している僕には関係ない。

 スノーとの感覚共有でバッチリ聞こえているのさ(笑)。

 最後にもうひと押ししておくか(笑)


「安心してください。ちゃんと黒ゴブリンは倒しましたよ。

 私が証拠を見せたら後に引けなくなりますから、早く訴えを取り下げたほうが得策ですよ。

 さあもう本当に時間切れです。これで最後のチャンスです。

 訴えを取り下げてください。さもないとあなたはここで終わりです。」


 と最後通牒を突き付ける。


 モーリスは「なんで聞こえてるんだ!?」的な顔をして驚くと同時に最後通牒を突き付けられて絶望の表情を浮かべている。


 ふっ、君の独り言を聞き取るくらい余裕なのさ!


「モーリスよ、今すぐ決心するのだ。

 もうこれ以上は待てん。

 結論を出さないなら、今から調査を再開する。

 調査結果次第では2度とシャバに出れなくなるかもしれんぞ。

 冒険者タクの言うとおり、誰にでも間違いはある。よく考えて決心するのだ。」


 どうやら守備隊長もシビレをきらしてしまったようだ。


 さあモーリスはどうするのかな?


 モーリスは脂汗をダラダラ流しながらブルブルしていたが、ついに観念したのかガックリと首をうなだれると、


「わかりました‥。訴えを取り下げます・・。」


 と、この世の終わりのような顔をして力なく呟いた。


 こいつはいったい何を隠しているのだろうか?

 そんなにバレたらまずいことに係わっているのかな?


「うむ。訴えの取り下げは了解した。ではこれをもって調査は中止する。

 冒険者タクとその仲間達はもう帰ってよいぞ。時間を取らせて悪かったな。」


 と守備隊長が僕たちに声をかける。


 正直なところ、言いたい事は山のようにあるが、これ以上時間を浪費するのは避けたいのが本心だ。

 野営中に作った拳銃の試射もしたいしね。


「わかりました。訴えが取り下げられたならそれで結構です。

 それでは僕達はこれで失礼します。」


 と答えると、皆で席を立つ。


 部屋を出ていこうと振り向いた時に、うなだれ続けるモーリスと目が合った。


 モーリスは恨めしそうにこちらを睨みつけてくる。


 うーん、こちらは一方的に迷惑をかけられた被害者なのに、こいつに睨みつけられるいわれは全くないのだが‥。


 ここはもう一つ責めの手を打っておくかな。


「あ〜モーリスさん。訴えを取り下げたのは賢明な判断ですが、その態度はいただけませんね。

 無実の我々に迷惑をかけたのですから、一言くらい謝罪があってもいいんじゃないですか?」


 とモーリスに言い放つ。


 モーリスは心底悔しそうな顔で

「くっ、迷惑をかけて悪かった・・」


 と絞り出すようになんとか謝罪の言葉を絞り出す。

 よほど悔しかったのかな?


 本当にこいつは何を隠しているんだ?

 最後に1つ爆弾を落としてみるか。


「まあいいでしょう。

 ところで1つお尋ねしますが、今回の件はそちらのギルドの責任者はご存知なんでしょうね?

 まさかとは思いますがこんな大事に発展しそうな事をあなたの独断で内々に処理しようとしてないですよね?」


「も、もちろんだ! この件はギルドの副支部長もご存知だ!」


 とモーリスは焦りながら答える。

 なるほど、副支部長とやらも怪しいな。


「なるほど。まあいいんですけどね。

 ただ我々は今回の事は黒ゴブリン討伐の件も含めて王都の冒険者ギルドに報告しますので。

 もちろんモーリスさんから訴えられた件もね。

 そちらのギルドの支部には王都のギルドから調査が入るかもしれないので準備しておいたほうがいいですよ。」


 とリコメンドしておく。


 うん、何事も準備は大切だからね!


「ま、待て!訴えを取り下げたらその件は無かった事にするって言ったじゃないか!

 話が違うぞ!」


 とモーリスがにわかに騒ぎ出す。


「モーリスさん。私は王城には黙っておくとは言いましたが、ギルドに黙っておくとは言ってませんよ。

 他の冒険者や依頼人の安全を守るためには冒険者ギルドへの正確な報告は必要不可欠です。

 あなたもギルド職員ならその必要性は理解できるでしょう?」


 と淡々と事実を述べる。

 うん、決して嘘は言っていない!


「そんな詭弁を使いやがって!

 だましやがったな!

 王都のギルドに報告されたら、我々の計画がバレてしまう!」


 とモーリスがついに核心に迫る発言をしてしまう!


 ふっ、馬脚を表すとはまさにこのことかな(笑)


「我々の計画とは何ですか?」


 と間髪入れずにツッコミを入れる。


「うっ! それは、あの、その・・」


 とモーリスは急にモゴモゴ言い始める。

 うん、これは自爆案件で間違いないな(笑)


「モーリスよ。なかなか面白い話をするじゃないか?

 その計画とやらについては話してもらうぞ?」


「いや、そんな計画は・・」


「モーリス、正直に話してもらおうか。

 貴様と今回の訴えを起こした冒険者には何か裏がありそうだ。

 これより冒険者タクとその仲間達に対して虚偽の訴えにより損害を与えた疑いで取り調べを開始する。」


「ば、バカな! そんな横暴が許されるのか!」


「ああ許されるとも。

 貴様の訴えにより我々守備隊の業務も邪魔されてしまったからな。

 守備隊に対する業務妨害の疑いも追加で取り調べてやろう。」


「そ、そんな・・」


「冒険者タクよ。帰ってよいと言ったばかりで悪いが、こやつの取り調べに少し協力してくれないか?

 なに、先程言っていた黒ゴブリンを倒した証拠を見せてくれるだけでよい。」


 と守備隊長がお願いしてくる。


 早くお暇したいのはやまやまだが、あと少しくらいなら協力してもいいだろう。

 モーリスの悪巧みの内容も知りたいしね。


「いいですよ。協力しましょう。

 ただ、ちょっとものが大きいので広い場所に出したいのですが。」


「ならば隣の訓練場に出してもらっていいか?」


「わかりました。案内してください。」


「うむ。こちらについてくるがよい。」


 と守備隊長はおもむろに立ち上がると僕達を守備隊の訓練場に案内する。

 ちなみにモーリスも守備隊員に囲まれながらついてきた。


 ふふ、目の前でとっておきの証拠を見せつけてやろう。

 絶望という名の深淵に叩き落としてくれるわ!


「ここが訓練場だ。このあたりに出してくれるか?」


 と守備隊長に言われたので、


「わかりました。ではご確認ください。」

 

 と言いながらアイテムボックスから黒ゴブリンの死体を3体取り出して訓練場の土間に並べる。

 1体は楓ちゃんの魔道具で頭を吹き飛ばされているから、実質は2.7体ぐらいだが・・。


「おお!これは、まさに黒ゴブリンではないか!

 冒険者タクよ、本当に倒していたのだな。」


 と守備隊長が感嘆する。


「ええ、なので本当に倒したと言いましたよね。

 私は嘘はついてませんよ。

 誰かさんとちがってね。」


 と言いながらモーリスを見ると、モーリスは両手両膝を訓練場の土間についてワナワナと震えながら、


「ま、まさか本当にFランク冒険者が黒ゴブリンを倒していたなんて・・。

 そ、そんなばかな・・・。」


 とぐったりしている。

 うん、リアルで「orz」になっている人を初めて見たぞ!

 ちょっと笑ってしまった(笑)


「モーリスよ。観念するんだな。

 これで冒険者タクの供述が正しいことが証明された。

 さあ、洗いざらい吐くんだな。

 先に言っておくが嘘をついたり隠したり、背後にいる人間を庇ったりしたら余計に罪が重くなると思え。」


 と守備隊長がモーリスに引導を渡す。


「もう終わりだ・・。副ギルド長の口車に乗ったばかりに・・。」


 とモーリスは力なく呟きながらうなだれている。

 どうやら、ようやく観念したようだ。


◆ 

  

 一度観念したら、その後の展開は早かった。

 モーリスは自分の罪を少しでも軽くしようと思ったのか、あっさりと企みの全容を語った。


 端的に言うと、レッドウイングの街の特徴を利用したビジネスにおける不正である。


 レッドウイングの街は王都に向かう商隊にとっては最後の宿泊地である。

 商人としては運んできた商品を少しでも高く売りさばきたい。

 そのためには王都に入る前に宿に泊まって旅の垢を落として身なりを整えて王都に入りたい。

 薄汚れた服装では一流の商店は相手にしてくれないのだ。

 また護衛の冒険者達も宿に泊めて身ぎれいにさせてあげないと、商隊の評判が下がって王都から戻る際に腕の良い護衛を確保できない恐れがある。


 しかしながら街の中は狭く、馬車と一緒に泊まれる宿が少ないし高価であるため、裕福な商隊しか荷物ごと宿に泊まることができず、ほとんどの商隊は野営となる。


 このため、レッドウイングでは野営地における荷物見張り代行ビジネスがある。

 宿に泊まる商隊と護衛の冒険者に代わって、野営地で一晩荷物を見張りますよ、というお仕事である。

 こうすれば商隊と護衛の冒険者は体と自分の着替えと貴重品だけで宿に宿泊でき、荷物の見張り代を払っても、荷物ごと宿泊するより経費を節約できるのである。

 中規模以上でちょっとお金に余裕のある商隊には人気のサービスだそうだ。


 レッドウイングではEランク以上のパーティーであれば、常時2名の見張りを立てることを条件に荷物見張り代行の仕事を受けることができる。

 通常の護衛任務に比べれば報酬は少なめだが、一晩見張ればよいだけだし、他の街に遠征する必要もないので、それなりに人気の仕事である。


 殆どの冒険者は見張り代行を常時2名態勢で一晩中適切に実施しているのだが、レッドウイングの野営地は利用者も多く、見張りの目も多いため、荷物を盗んだりといった犯罪はほとんど発生しない。


 ここに眼をつけたのが副ギルド長とその手下のモーリスである。

 2人は仕事にあぶれ気味のEランク冒険者パーティーに声をかけ、そいつらに荷物見張り代行の仕事を影で回す見返りに、キックバックを得ていたのだ。

 

 初めのうちは真面目に2名態勢で仕事をさせていたが、慣れてくると1名でも十分なことがわかったため、1名は馬車の中にいるふりをして、1名で荷物番をさせていたのだ。

 もちろん依頼主からは常時2名分の料金をもらい、差額を副ギルド長、モーリスと手下の冒険者パーティーで分け合っていたとのことである。


 1回あたりの金額は小さいが、毎日やっていればそれなりに小金も貯まってくるというものである。

 この不正はモーリスたちのよい小遣い稼ぎになっていたのだ。

 

 1名態勢がすっかり状態化してしまっていたところに昨夜の黒ゴブリン騒ぎである。


 荷物見張り代行を依頼した商隊が野営地に行ってみれば、見張りの冒険者がおらず、荷物だけが荷馬車ごと放置されていてびっくり仰天という状況であったとのこと。


 幸いにも荷物の盗難はなかったが、依頼した商隊が朝一番でギルド支部に乗り込んで、見張り代行の冒険者がいなかったことをにクレームを入れて来たのが、今朝のイベントの発端である。


 副ギルド長とモーリスは自分たちの不正を隠すために、手下の冒険者(黒ゴブリンに襲われて逃げたやつ)と口裏を合わせて僕達の仕業にしようと画策をしたらしい。


 どうやら僕達の朝食中に現場を確認するふりをして様子を伺っていたらしく、若い男女の駆け出し冒険者パーティーに見えたことから、ダメ元で守備隊に訴えるという暴挙に出たというのが顛末である・・・。


 モーリスの話を聞いていたが、最後のほうは怒りがフツフツと湧いてきて、思わず、


「はあ〜、なんて自分勝手で粗々な計画なんですかね。

 こんな計画に嵌められて犯罪奴隷にされかかっていたなんて身震いがしますよ。

 守備隊長さん、私達は関係者の厳しい処分を要求します。

 なおこの件は王都に戻ったら然るべきところに報告させていただきますね。」


 と守備隊長にクレームを入れてしまった。


「うむ。言われるまでもなく本件は厳しく処分させてもらう。

 レッドウイングの街の守備隊や冒険者の顔に泥をぬる事件であるからな。

 冒険者タクとその仲間達よ、調査への協力に感謝する。

 これにて協力要請を終了するので今度こそ帰ってもらっていいぞ。」


 と守備隊長からようやくリリースの合図がでた。


「わかりました。では我々は失礼します。

 あとはよろしくお願いしますね。」


「ああ、面倒をかけて悪かった。」


 と、あいさつを交わすと、僕達はようやく守備隊の詰所を出る。


 気がつけば時間はすでに9時を回っている。


 早く王都に戻らないと日が暮れちゃうよ(汗)


 2日連続の野営はちょっとキツイからさっさと王都に帰るとしよう。


 まったくもっていい迷惑なイベントだった。


 てゆうか、楓ちゃんのフラグメイキングを阻止する方法を考えないとね!


最後までご覧いただきありがとうございました。

投稿の遅れを取り戻すべく、コツコツと執筆したいと思います。

引き続き応援よろしくお願いいたします。

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