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第78話 勇者召喚の余波(その1)

いつもご覧いただきありがとうございます。

 セントラル王国の王都から東に遥か遠く離れた場所に深い深い森がある。

 何れの国にも属さないその広大な森林エリアは「東の森林地帯」あるいは「魔王の森」と呼ばれている。


 その名のとおり森の奥深くには魔王が住むと言われており、その影響なのかどうかは不明であるが、森の中は非常に濃い魔力に満ちている。


 濃厚な魔力の影響で森に住む魔物は独自の進化を遂げており、中には非常に強大な攻撃力や高い知性を持つ魔物も多数生息している。

 

 レベルと知性の高い魔物は任意に人型を取ることもでき、魔物を通りこして魔人と呼ばれることもあるそうだ。

 ちなみに魔人にもいろんな種族があることから、総称して魔族と呼ばれている。

 

 そのような魔物は通常は森の奥深くで活動しており、森と人族の国との境界にある街に出現することはない。

 一説によると、人族と無用のトラブルを起こさないようにと、魔王が魔物達に厳命しているらしいが、真偽は定かではない。


 他方、これらの魔物から取れる魔石、毛皮、骨、爪、外殻等は人族にとっては武器及び防具等の上質な素材であることから、命知らずの冒険者が一攫千金を夢見て森の奥深くに魔物狩りに向かうのである。


 もちろん、そのような冒険者の中には2度と帰ってこない者もいるわけだが、そんな出来事も東の森林地帯にとっては日常茶飯事の1つである。

 

 タク達が王都の外でちょっと変わったゴブリン達と戦っている日から遡ること10日前、東の森林地帯の奥深くで日常の光景には無いちょっとした変化が起こっていたのである・・。



◇◆


 東の森林地帯の奥深く、人の足で歩いて到達するのは極めて困難な場所に大きな湖があり、その湖畔に大きな建物が立っている。


 湖から建物に至る道の入り口には朱色に塗られた木造の大きな構造物が建てられている。


 この世界の人々が見れば変わった様式に見えるであろうその構造物と建物は、この世界に召喚されてくる勇者達が住んでいる国、いわゆる日本では神社と呼ばれているものに極めて近い。


 端的に言うと、朱色の大きな鳥居が建っており、500m程の参道の奥には大きな社が建っているのである。


 その社の主人こそ、この東の森林地帯に住む魔王と呼ばれる者である。


 その魔王は現在、自身の居室で側仕えが淹れてくれたお茶を飲みながら寛いでいるところである。


 ちなみに居室はこの世界における様式とは全く異なり、草を編み上げたようなものを敷き詰めた床にそのまま座る、いわゆる和室の畳である。


 魔王と言うといかにも恐ろしい風貌を想像してしまうが、お茶を飲みながら寛ぐその者は、美しい長い黒髪に透き通るような白い肌を持つ小柄な美しい女性であり、恐ろしさは微塵も感じられない。


 なお、服装もこちらの世界の様式ではなく、ゆったりとした布でできた長い服、いわゆる十二単のような服を着ている。


 他方、その目は縦長の細長い金色の瞳孔であり、人族でないことは一目瞭然である。

 

 この世界の人族の長い歴史の中で魔王の本来の姿を見た者は既にいない。

 伝承として伝わる話では八つの尾を持つ大きな蛇の魔物であると言われているが、真偽は不明である・・。


 なお余談であるが、魔王は時折暇つぶしに人族の街に出かけることもあるらしく、その際はこちらの世界の町娘のような服を着て、自身をフィリフィスと名乗っているらしい。


 髪色や瞳は偽装の魔法をかけてこちらの世界に合わせていることから、気づかれたことは一度もない。


 ちなみにお気に入りは屋台の焼き鳥である。

 味付けは塩も醤油もどちらも好きだとか。


 それはともかく・・・。


◆◇


 ふう、今日も何もしていないけどお茶が旨い・・。

 何か仕事をしては?と言われても、そもそも我にはあまり仕事がないのである。


 じゃあ何が仕事なんだって?


 ふむ、普段であればそんな質問は一蹴するところであるが、今日というか最近は少し機嫌が良いから教えてやろう。


 まあ我の仕事は一言で言うと、異世界から召喚されて来る勇者の査定役といったところかの。


 この世界の大陸の中心にある、とある国の王家が時折異世界から召喚する勇者と呼ばれる者たちの仕事ぶりを評価して、その者たちの願いを叶えるかどうかを査定するという簡単なお仕事じゃ。


 本来ならその王家に勇者の召喚術を伝授した勇者タケルが自ら査定すべきなのであるが・・・、あの者は何かと多忙で飛び回っておるから、いつも暇をしている・・、ゲフンゲフン、比較的時間に余裕のある我が善意で手伝ってあげておる、というわけじゃ。


 あくまでも善意で手伝っているだけじゃぞ?

 決して弱みを握られているわけではない。

 本当だぞ!


 まあ、善意と言えども仕事ではあるので、側で働いてくれるスタッフと我の給金はキッチリと頂いておる。

 

 それに我も少々ながら商売というか素材の取引などを人族の街で内緒で実施しておるからの。


 この森の中は魔力が濃いから、良質の薬草などが簡単に手に入るのじゃ。

 それらをたまに街に卸すだけでもよい収入になるというわけじゃ。

 まあ、出どころは内緒にしておるがの。

 

 たまに人族の街で買い物や食事を楽しめる程度には稼いでおるのじゃ。

 決して最近流行のヒキコモリとかいうやつではない(キッパリ)。

 

 さて話が若干それたが、何故我の機嫌がよいのかと言うとじゃな、そろそろ勇者召喚の時期なのじゃ!


 一昔前までは、と言っても我の時間軸だと百年単位ではあるが、勇者達は不定期に召喚されてきておったため召喚の時期は予想がつかなんじゃったが、ここ最近は何故かきっちり10年ごとに召喚されてくるのじゃ。


 この勇者達というのがなかなか面白いやつらなのじゃ。

 

 基本的には勇者タケルの縁の地である日の本の国、ー今は日本国というらしいがー、から召喚されてやって来る者たちは毎回毎回新たな技術や文化、料理などをこの世界にもたらしてくれるのじゃ。

 

 われが街で買い食いするのが好きな焼き鳥もこの勇者達がもたらしたものの1つなのじゃ。

 醤油や味噌などの調味料の製法も含めてな。


 日の本の国から召喚されてやって来る勇者達は、正直に言えば強引に連れて来られるわけではあるものの、なんだかんだと言いつつこの世界のためにいろいろと貢献してくれていたのじゃ。


 彼らにその理由を聞けば、「困っている人がいれば手を差し伸べる。」「弱きを助け強気を挫く。」という姿勢が彼ら日本人の矜持であるとのこと。


 昔は召喚されて来る者たちは侍や町人などの日の本の国独特の格好をしておったが、いつの頃からかこの世界の者たちと同じような服装になっておったのじゃ。


 どうも開国や文明開化、富国強兵などという大きな変化があったらしい。

 詳しくは聞かなかったがの。


 その後大きな戦に勝ったり、負けたりしておったらしいが、格好は変わっても基本的にはその精神は武士もののふであったのじゃが・・。


 数十年前に大きな戦に負けてからというものの、その考えに少しづつ変化が表れてきての・・。

 

 召喚されてくる者のうち、ごく少数ではあるが「武力を持つから争いが起こる。さあ、武力を放棄して皆仲良くしましょう!」みたいな事を曰う者たちが出てくるようになったのじゃ。


 まあ、そのような者たちはあっと言う間に盗賊や魔物の餌食となって消えていったのじゃがな。

 いったいどういう教えを受けたらそんな馬鹿な発想になるのかは知らんが。


 どんな世界であっても身を守るための最低限の武力は必要であるというのは常識であろうに?


 そのような極端な例外はありつつも、基本的には皆向上心に溢れる熱意ある者たちが多かったのじゃ。

 

 特に大きな負け戦の後で焦土となった日の本の国を立て直すべく頑張っておった者たちは、それと同じくらいの熱意を持ってこの世界の発展にも貢献してくれておった。

 

 若い書生というか学生と言う者たちも、高い向学心と道徳心を備えており、この世界の住人の手本となってくれておったのじゃ。


 なので、彼らが勇者としての旅を終え、我の前でその成果を披露して元の世界へ戻りたいと申し出た際は、断る理由など全く無かったのじゃ。

 皆それぞれ自分の希望する時点に戻れるよう、勇者タケルに言付けたものじゃ。


 中には変わった者もいて、ぎたー?とか言う琵琶のような楽器を使ってみゅーじしゃん?になる!と言ってこの世界に残った変わり者もおったがの。


 今はどこで何をやっているのかはさっぱりわからんが。


 その様子が大きく変化してきたのは30年程前からかの・・・。


 召喚されてやって来た勇者達の服装が大きく変化していたのじゃ!

 

 それまでは皆、黒、灰色、紺色等の目立たない色の服装がほとんどだったのじゃが、赤や黄色、紫なんかの目が痛くなるような原色の服に変わっておったのじゃ!

 しかも男は鎧の上から上着を羽織っているのか?というくらいに肩が張った服を着ておる者もおったし、女は体の線がくっきりと浮かぶようなピッタリとした服を着ておるし、あれには本当にたまげたのじゃ。


 大人は男女問わず金使いが荒いし、学生達は「いい大学に入って可愛い女子大生と合コン?するんだ!」とか曰っておったの。

 大学とは学問を学びに行く場所ではなかったのかや?

 

 しかも奴らは普通なら少なくとも1年はかかる勇者の旅をたった4ヶ月で終えて我のもとにやってきたのじゃ!

 

 どうやってそんなに早く旅ができたのか?と聞けば、「乗り合い馬車を大金で借り上げて昼夜を問わず御者と馬を入れ替えながら休み無く移動していたらしいのじゃ。

 金で解決するとはとんでもない奴らじゃった。

 この世界の王家や貴族でもやらんような事を平気でやってしまうんじゃからな。


 おかげで少々値は張るものの、私的な高速移動手段がこの世界に導入される切掛にはなったのじゃがな・・。


 加えて奴らは金儲けの手段として、魔物を倒して手に入れた資金で王都の一等地の建物を買い上げて貸物件にしたり、繁華街の建物を買い上げてきゃばくら?や、ほすとくらぶ?なる接待付きの高級酒場を経営したりして荒稼ぎしておったらしいのじゃ。


 どうやらそれらも日の本の国から持ち込んだ経営手法らしい。


 そのおかげで都会の繁華街は大いに賑わって経済が回り、街の景気はとてもよくなったらしいのじゃ。


 しかもどうしてそんなに急いでいたのか聞いてみれば、なんでも有名なでぃーじぇい?がでぃすこ?に来るイベント?があるからそれに間に合うように帰るんだ!とのことじゃった。

 何を言っているのかさっぱりわからんかったが・・。


 おまけに大人の男の1人は旅の途中で知り合ったエルフの女を一緒に連れて帰りたいと言い出したのじゃ。

 2人の愛は異世界をも超える、超えてみせる!と曰う始末・・。

 おまけに図々しくも、男が死んだらエルフの女をこちらの世界のエルフが住む森に戻してあげて欲しいとお願いしてきたのじゃ。


 これには驚いたが、この世界に新たな刺激をもたらしたのは間違いなかったから許可したがの。

 それにエルフは長寿だから男が先に死んで向こうの世界に1人残されるのも可哀想じゃからな。

 まあ、仕方がなかったのじゃ。


 奴らは良くも悪くも一言で言えばギラギラしておったのじゃ。

 なんというか魔物並みの強い意志を感じる奴らじゃった。

 まあ我も魔族であるから、そういう姿勢は嫌いではない。

 むしろ好ましいくらいじゃった。


 そうなると、当然次に来る勇者にも期待してしまうというもの。


 どんな奴らが来るかと楽しみにしておったら、なんとまた極めて地味に戻っておったのじゃ!


 なんでも、ばぶる?が弾けて氷河期がやって来て、職にあぶれて日々の生活もままならんというのじゃ。

 学生達も「いい大学に入らないと就職できない!」と言って焦っておった。


 結局奴らのうち何人かはこの世界に残ったのじゃがな。

 ここには仕事があるからと言っての・・・。

 しかも安定した職業がいいと言って、お城の文官を希望する者が多かった・・。


 なんともまあ真逆の変化じゃった‥。

 ギラギラ感がゼロになってしまったのじゃ。


 それほどまでに氷河期とやらは恐ろしいものだったのであろうか?

 人の生き方すら変えてしまうほどに。


 更に問題だったのは、その次に来た奴らじゃった。


 なんと過去に例のない、全く働かない、というとんでもない奴らが現れたのじゃ!


 元の世界ではにーと?とか引きこもりとか言われておったらしいのじゃが、堂々と「働いたら負けだ。」とか曰わって、城の部屋に引き籠もって出て来なくなったのじゃ。


 しかもスキルは「自宅警備」「寄生」「すねかじり」「籠城」「光合成」「生活魔法各種」などある意味鉄壁の防御力であった。


 何しろその気になれば食事をしなくても生きられるのじゃからな。

 水も生活魔法でいくらでも作り出せるし。


 本人曰く引きこもることだけに特化した能力を得ることができるように全力で祈ったらしいが。

 その熱意を働くことに向けることはできなかったのじゃろうか?


 これにはかの国の王家もホトホト困ったようで、最後には使者を寄越して我に泣きついてきたから、勇者タケルに連絡して元の世界に強制送還してやったのじゃ!


 その他の者共も、人生にはゆとりが必要だとか、他の世界の価値観を押し付けるべきではないだとか、文化の多様性は尊重すべきだ、等々の理屈ばかりでほとんど何もせんかった・・。


 もちろんその者達も強制送還してやったがの。

 無理やり召喚しておいて言うのもなんじゃが、刺激をもたらさん奴らはいらぬのじゃ。


 唯一刺激をもたらしたのは意外にも元々引きこもりだった若者であった。


 奴の気に入った器量の良い獣人の娘をたくさん集めて、「ケモミミ48」なる歌謡集団を結成し、歌と踊りを披露して収益を得るという新しい仕事を始めたのじゃ。


 歌と踊りは元の世界のものを真似しているらしいが、この世界では珍しかったのと獣人娘達の器量の良さも相まって爆発的な人気となったのじゃ。


 今はこの世界中を旅しながら公演しており、どの公演も満員御礼で大人気らしい。

 あちこちの国から引っ張りだこで、数年先まで予約が埋まっているとのことだそうじゃ。


 我も一度お忍びで興行を見にいったことがあったのじゃが、とても楽しかったのじゃ!

 娯楽の少ないこの世界にはとても良い刺激じゃった。


 まあ、話が少し長くなってしまったが、要するに間もなくやって来るであろう勇者達がとても楽しみというわけじゃ。


 分かってくれたかの?


◇◆


 側仕えが2杯目のお茶と一緒にお茶請けの団子を用意してくれた時、それは起こった。


 森から見て西側の方向に大きな魔力の乱れを感じたのじゃ。

 

 おお!、これこそ勇者召喚の際に生じる魔力の乱れ!

 しかも過去数十年間感じたことのない大きな乱れなのじゃ!


 どうやら今回の召喚でやって来た勇者は「当たり」かもしれんな。

 期待できそうなのじゃ。


 これはきちんと確認しておく必要があるな。


 我は側仕えに「左大臣を呼べ。」と伝える。


 側仕えが部屋を出てから数分ほど経過したあと、1人の壮年の男が部屋に現れた。


 人型をとってはいるが、魔王の配下なのでもちろん魔族である。

 魔王と同じく縦型の細長い瞳がそれを物語っている。


ちなみにこの男の服装もこちらの世界の服ではない。

タク達のように召喚される勇者達から見れば、平安貴族?と思うような装いである。


 男は魔王の前に座り一礼すると、


「左大臣、参上しました。」


 と告げる。


「うむ。ご苦労。

 急に呼び出してすまんが、1つ仕事を頼まれてくれるか?」


「はっ!もちろん。どのような仕事でしょうか?」


「うむ。かの王家が再び勇者を召喚したようじゃ。」


「おお、もうそんな時期でしたか。」


「うむ。先ほど大きな魔力の乱れを感じた。間違いないであろう。

 しかも今回はどうやら『当たり』っぽいのじゃ。」


「左様でしたか。それは楽しみですな。」


「うむ。そこでじゃ。

 どのような者たちが召喚されたのか早めに知りたくての。

 気の効いた者にちょっと様子を見させて来て欲しいのじゃ。」


「なるほど。見てくるだけでよろしいのですか?」


「そうじゃ。特に干渉する必要はない。

 召喚された勇者達のスキルや人柄などを見てくるだけでよい。

 勇者達はしばらくの間はかの国の王城で訓練を実施するじゃろうからそっと様子を見てくるのじゃ。」


「承知しました。ですが今から出発だと急いで飛んで行ってもスキルを確認する儀式に間に合わないと思いますが。」


「心配はいらぬ。

 こちらの森林地帯からかの国の王都の外の森をつなぐ転移の細道を設置するから、そこを通って行けばよい。

 そなたの配下に蝙蝠に変身できる忍びがおったであろう。

 一月ほど細道を繋ぎっぱなしにしておくから自由に行き来すればよい。」


「御意。ただそれだと他の魔物も通過できてしまいますが問題はないですか?」


「よい。ごくごく細い道だから、通過できるのは小型の魔物か、魔物の子供くらいであろう。

 それくらいなら人族の冒険者なら追い払うくらいはできるじゃろう。

 むしろちょっとした刺激になって丁度よいのではないか。」


「はっ!では早速取り掛かります!」


 というと、左大臣は音もなく退室していった。

 奴ならいつも通り抜かり無く仕事を片付けてくれるじゃろう。


「さて、今回はどのような者どもが召喚されてくるのやら。

 楽しみじゃわい。」


 と魔王は独り言をつぶやくと、側仕えにお茶のおかわりを淹れてもらってくつろぎの時間を再開するのであった・・・。


◆◇

 

 魔王の住む社から小一時間歩いた距離にある大木の前に2人の魔人の姿があった。

 

 大木には編み込まれた藁の束、いわゆるしめ縄が飾られており、森に住む魔族にとっては大事なもののようである。

 御神木といったところなのであろうか。  

 

 2人の魔人のうち、1人は左大臣、もう1人は彼の部下である。

 先ほど魔王が言っていた、蝙蝠に変身できるという忍びのようだ。


 大木の前面に開いた大きなうろの中には怪しく光る小さな魔法陣が描かれている。

 これがきっと「転移の細道」とやらの入り口であろう。


 大木の前で左大臣は部下に任務を命ずる。


「よいか。細部は先ほど達したとおりだ。

 新たに召喚されたと思われる勇者達のスキルや人物像を密かに調査してくるのだ。

 魔王様が準備してくれた細道を通って速やかにセントラル王国の王城に向かえ。

 王城内の騎士や魔法使い達に決して見つからないようにな。

 抜かるでないぞ!」


「はっ!」


 と短く返事をすると、忍びは黒い小型の蝙蝠に変身すると、転移の細道の入り口に吸い込まれるように飛び込んで行った。


 それを見届けた左大臣は静かに頷くと音もなくその場から姿を消す。

 後に残されたのは大木のみであった・・。


◇◆


 左大臣とその部下の忍びが立ち去ってから少し時間が過ぎ、森にいつもの静寂さが戻ってきた頃、大木の周りにはいつもの光景が戻ってくる。


 大木の周囲の空間はいくつかの獣道が交わる場所であり、普段は育ち盛りの魔物の子供達が集う遊び場となっている。

 

 また、大木のうろは一夜の宿を求める小型の魔物の安息の場所なのであった。


 そのような魔物達が、大木のうろの中にある怪しく光る魔法陣が気にならないわけがない。


 いつの間にか魔物の子供達が吸い寄せられるように魔法陣に飛び込んで行った。

 その中には熊、狼、山猫の子供達や、巣立ちに若干失敗した若鷹なんかもいたらしい。


 また色とりどりの小型の鬼も隊列を組んで魔法陣をくぐっていった。

 森の中の激しい生存競争から逃れて新天地を目指したのであろうか・・。

 

 森に夜の帳が降りて夜行性の魔物が活動を始めると、大木のうろに入って来た蛇や梟の魔物なども魔法陣に吸い込まれていった・・。


 勇者召喚が切掛けとなって、東の森林地帯が意外な形で一時的にセントラル王国に影響を及ぼした事を知る者はごくごく僅かであった・・。


最後までご覧頂きありがとうございました。


感想など頂けると励みになります。


引き続きよろしくお願いいたします。

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