第77話 異世界定番の?戦闘
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更新が遅くてすみません・・・。
年度末で業務多忙なもので・・。
森の側を離れて草原エリアを皆で移動している。
街道も近いし何もないだろうとは思うものの、昨日の暴れ黒牛の事案もあったことから、横一列になって周囲を警戒しながら慎重に歩いている。
アカネちゃんは「気配察知」スキルでの周囲の警戒に余念がない。
僕達も弓を何時でも構えることができるように手で持ちながら移動中である。
スノーとアッシュは僕達の外側を歩き、マイティーは僕達の上空を旋回しながら飛行しており、警戒体制は十分である。
そんな様子を見たチャロンが、
「アカネさんの「気配察知」と、スノーとアッシュ、それにマイティの警戒があれば、この辺りに住んでいる動物の探知には全く問題ないですね。
むしろ過剰戦力かもしれません。」
と語り出す。
「そうだね。
ただこの子達がこの辺りでは珍しい動物だっていうのがちょっと気になるよね。
結果としてついてこなかったけど、血濡熊や地獄山猫の子供がいたのも気になるけど。」
と僕は相槌を打つ。
「そうですね〜。もしかしたら何かしらの変化が森に起こっていたのかもしれません。
まあ、問題があるようなら冒険者ギルドから調査依頼があるでしょう。
少なくとも昨日の段階では依頼は無かったみたいですから、大きな問題はないと思いますよ。」
とチャロン。
まあ、少なくともチャロンは僕達よりはこの辺りの状況に詳しいだろうから、チャロンが問題ないと思うならそうなんだろう。
そう思いながら僕は「そうだね。」と言って頷く。
亜季ちゃんもアカネちゃんも同意するように頷いている。
すると楓ちゃんが唐突に、
「いや〜、今日はたくさん収穫もあったし、アッシュ君も仲間になってくれたりで、とてもいい一日でした!
異世界物の小説だと初心者の冒険者がモンスターと遭遇して命からがら逃げ帰るっていうのが定番だと思ってたんですが、タク先輩とみんなのおかげで、安全安心・快適な野外活動でよかったです!」
と、またまた言ってはいけないフラグの呪文を平然と唱えだす!
「楓ちゃん・・」、「カエデさん・・」、「「楓・・」」、「バウ・・」、「ワウ・・」、
「「「「どうしてわざわざフラグを立てるの!!」」」」
と、僕達は思わず声をそろえて叫んでしまう・・。
すると上空を警戒していたマイティが、
「ピィ〜!!」
と警戒するような鳴き声で僕達に異常を知らせてくれる。
うん、これは間違いなくフラグが立ってしまっている!
フラグ回収イベントは不可避かも!?
マイティからの警告とほぼ同時に、アカネちゃんの「気配察知」にも何かがかかったようで、
「右方向から何かの群れがやってきます!5体くらいの気配を感じます!
しかもかなりの魔力の強さですよ!」
と、アカネちゃんが察知した情報を知らせてくれる。
それを聞いた僕は、
「みんな!何かが近寄ってきているようだ!
危害を加えてくるようなら迎撃するぞ!
総員戦闘用意!!」
と号令をかける。
皆も弓を構えてスムーズに迎撃態勢を整える。
2日連続のフラグ屹立イベントで皆の動きも心なしか良くなっているような気がするぞ。
もしかして楓ちゃんは僕達の訓練のためにわざとフラグを立てているのか?
そういうのは間に合ってるからやめて欲しい!
素早く弓に矢を番えた僕達は、右方向に向き直ると迎撃態勢を整える。
すると、草原の草をガサガサとかき分けながら、何かの群れが僕達の10m程先に現れた!
そいつらは体高1m程の人型で2足歩行の魔物、異世界物では定番のいわゆる「ゴブリン」であった!
どうやら僕達は異世界初の人型の魔物との戦闘を経験することになりそうだぞ・・。
◇◆
草むらから現れたゴブリン達は、全部で5匹。
うち4頭が緑色で、残りの1頭は赤色である。
緑の4匹は手に斧を持っており、赤の1匹は短剣を持って4匹の後方に立って緑の4匹に「ギャウギャウ」と叫んでいる。
どうやら赤は指揮官的な配置のようだ。
見た目は典型的なゴブリンのようであるが、異世界物の小説とは若干イメージが異なっている。
というのも、このゴブリン達は典型的なイメージよりも若干小型で、かつ、身なりや持っている武器もそれなりの品質なのだ。
異世界物の小説とかだとボロボロの腰布に錆びた短剣を身につけているのが定番なのだが・・、どうやらテンプレどおりではないらしい。
どのゴブリンも額に小さな角が2本生えているが、赤いやつは頭頂部付近に更に1本多く角が生えている。
もしかしたら赤いやつは特殊な個体なのだろうか?
これは調べてみる必要があるようだぞ。
僕は「目利き」スキルを発動すると、素早く緑ゴブリンのうちの一匹と赤ゴブリンを目利きする。
すると、
・種族 グリーンゴブリン:
出身地 東の森林地帯
状態 若い個体
特徴 東の森林地帯の魔力を吸収して進化したゴブリン
ただのゴブリンより戦闘力大
見た目に騙されてはいけない。
・ 種族 レッドゴブリン:
出身地 東の森林地帯
状態 若い個体
特徴 グリーンゴブリンから派生した特殊個体
俊敏性と指揮統率力が向上している。
その他 レッドスターの異名で冒険者に恐れられている。
と表示された。
なんと!なかなか危険な奴らであった!
普通のゴブリンだと思って舐めてかかると痛い目をみる可能性が高い!
僕は「目利き」スキルで得た情報を皆にすばやく共有する。
「みんな気をつけて!
どうやらただのゴブリンじゃないぞ!
東の森林地帯出身で普通のゴブリンより戦闘力が大きいらしい!
しかも赤いやつは異名持ちの特殊個体だ!」
それを聞いた皆は驚いている。
特にチャロンは「どうして東の森林地帯から?」と動揺を隠せないようだ。
そんな僕達をあざ笑うかのように、レッドゴブリンが「ギャウ!」と叫ぶと、グリーンゴブリンが斧を振り上げながら突進を開始してくる!
どうやら友好的に話し合える相手ではなさそうだ。
「みな、奴らを迎撃するぞ!
チャロンと僕で奴らの足を止めるから、亜季ちゃんとアカネちゃんは狙い打て!」
と指示すると、チャロンは「土いじり」スキルで、僕は「土壁」の魔法でグリーンゴブリンの前に障害物を設置する。
グリーンゴブリン達は突如発生した障害物に一瞬ひるんだが、足を取られることなく素早い身のこなしで跳躍してそれらを躱す!
しかし、それも僕の計算のうちだ!
必中の弓を構えた亜季ちゃんとアカネちゃんに向かって飛び上がるなど、的にしてくれと言っているようなものである。
亜季ちゃんとアカネちゃんが素早く狙いを定めて放った矢が4匹中2匹に命中する!
2匹のグリーンゴブリンは眉間を射抜かれており、地面に落ちるころには力なくグッタリしていた。
既に絶命しているようだ。
流石は亜季ちゃんとアカネちゃんである。
残りの2匹のグリーンゴブリンは亜季ちゃんとアカネちゃんの弓の攻撃に怯んだのか、僕とチャロンに向かって攻撃してくる!
どうやら近接戦闘が苦手の魔法使いと思われているらしい。
ふっ、侮ってもらっては困るぞ。
僕とチャロンは素早く腰の片手剣を抜くと、剣でグリーンゴブリンの斧を弾く!
普通のゴブリンより戦闘力大とは言っても、小さな体が災いしてか、腕力はたいしたことはない。
体重差からくる勢いもあり、グリーンゴブリンは斧を持った右腕を大きく弾かれると体の前面を無防備に隙だらけで晒す結果となる。
無防備になった瞬間を逃すことなく、僕は素早く踏み込んで間合いを詰めるとグリーンゴブリンの喉に突きを放つ!
グリーンゴブリンは僕の攻撃を避けようとするが、時既に遅し!
素早い踏み込みから放たれた僕の攻撃はグリーンゴブリンの喉に深く、確実に刺さり一撃でその命を刈り取る!
僕の隣ではチャロンも片手剣で最後のグリーンゴブリンと相対している。
剣と斧で数合切り結んだあと、グリーンゴブリンが斧を大きく振りかぶった瞬間にできた隙きを逃さずチャロンは一瞬で間合いを詰めると、片手剣の切り上げで斧を持つグリーンゴブリンの右手首を切り落とすと、返す刀で袈裟斬りで上半身を大きく切り裂く!
チャロンの素早い攻撃の前に最後のグリーンゴブリンは力なく地面に倒れ伏す。
さあ、あとは赤いやつだけだ!
手下?のグリーンゴブリンが全て倒されたのを見たレッドゴブリンは「ギャウギャウ!」と叫んでいる。
どうやらとても怒っているようだ。
突然一方的に襲いかかってきたのはそっちだから、返り討ちにあったからといって怒らないで欲しいのだが・・。
レッドゴブリンは左右にジグザグにすばやく動きながら剣を刺突の態勢に構えて突進してくる。
左右にぶれながら動くことで弓での攻撃を躱しているようだ。
その証拠に亜季ちゃんもアカネちゃんも二の矢が打てないでいる。
なかなか侮れないやつだぞ!
流石はレッドスターの異名持ちである。
アカネちゃんが短弓から矢を放つもレッドゴブリンは素早くそれを躱してアカネちゃんに突進していく!
アカネちゃんは短弓を手放して腰の短剣を抜いて迎撃準備をすると、レッドゴブリンが持つ短剣を弾くが如く素早い突きを繰り出す!
うん、さすが斥候職、切り替えが早い!
レッドゴブリンはそのままアカネちゃんに突進する!と思いきや、右に素早くステップを切るとアカネちゃんの攻撃をヒラリと躱す。
そのままアカネちゃんの左側を駆け抜けると、その後ろにいる楓ちゃんに向かって突進していく。
狙いはどうやら楓ちゃんのようだ!
武器を何も持ってないので一番戦闘力が低いと思ったのだろう。
手下のグリーンゴブリンを全部倒されたので、誰でもいいから1人倒して一矢報おうといったところか。
どうやら戦闘中にこちらの戦力を冷静に分析していたようである。
確かにただのゴブリンとは違うようだ。
異名持ちは伊達ではなさそうだ!
ただ感心している場合ではない。
このままではまずいぞ!
「奴の狙いは楓ちゃんだ!
スノーは奴の足を止めろ!アッシュは楓ちゃんを守るんだ!」
と素早く号令をかけて迎撃態勢を再構築する。
スノーは「わかった!」とばかりに「バウ!」と吠えるとレッドゴブリンの行く手を阻む。
スノーもスピードでは負けていない。
レッドゴブリンに素早く追いつくと2m程の間合いを取りつつその行く手を阻む。
俊敏性が高いレッドゴブリンといえども、狼の魔物?であるスノーは躱せなかったらしく膠着状態となってしまっている。
今が仕留めるチャンスだ!
「今だ!亜季ちゃんとアカネちゃんは弓で攻撃だ!
僕とチャロンは奴の左右に回り込んで逃げ場を防ぐぞ!」
「「「はい!」」」
僕とチャロンはアイコンタクトを取りながらレッドゴブリンの左右に回り込むと片手剣を構えてレッドゴブリンの反撃に備える。
その様子を見たレッドゴブリンは苦々しい表情を浮かべている。
どうやら不利を悟ったらしい。
それと同時に亜季ちゃんとアカネちゃんが弓の照準を終えた様子を確認した僕は、
「スノー、横に移動して前を空けろ!
亜季ちゃんとアカネちゃんは今だ!」
と号令をかける。
スノーが横に飛んでレッドゴブリンの正面を空けると同時に2人が素早く矢を放つ!
亜季ちゃんとアカネちゃんの矢はほぼ同時にレッドゴブリンを捉えた!・・、と思いきや、なんとアカネちゃんの矢を見切って躱すと同時に亜季ちゃんの矢を短剣で弾いて逸した!
何という動体視力と身のこなし!
侮れないな、レッドスター!
既にアンゴルモアゾーンに入っていた亜季ちゃんは、
「何!我の必中の矢を弾くだと!」
と、異世界初の経験に驚きを隠せないようだ。
僕はチャロンとスノーに、
「奴を逃すな!再度囲むぞ!」
と号令をかける。
正面と左右から僕達が駆け寄ってくるのを見たレッドゴブリンは自分の不利を悟ったのか、「ギャウ!」と叫ぶと草むらの奥に素早く撤退して行った。
なんという引き際の良さ!
不利な状況で決して無理をしない姿勢に知性の高さを感じるぞ!
さすがレッドスター!、引き際の良さも輝いている!
スノーが追いかけようとするが、
「待てスノー!、他に仲間がいるかもしれないから深追いしなくていい。
奴を追い払っただけで十分だ。
とスノーを止める。
僕は「よくやった、えらかったぞ。」と言ってスノーを撫でてあげる。
「皆も怪我はないかい?」
と皆の無事を確認すると、
「「「「はい!」」」」
と、元気な返事が返ってきた。
「レッドゴブリンを取り逃がしたのは残念だったけど、皆が無事なのが最優先だからね。
怪我がなくて良かったよ。
それにみんないい戦いぶりだったよ。」
と皆を褒めておく。
確かにいい戦いぶりだったからね。
初の人型魔物との戦闘としては十分な成果だろう。
しかも普通のゴブリンじゃなかったからね。
「取り逃がしたのも残念でしたが、私の必中の矢を弾かれたのが悔しいです・・。」
と亜季ちゃんが心底悔しそうな表情で心境を吐露する。
「まあ、仕方ないさ。奴は俊敏性の高い特殊個体だったようだしね。
しかもレッドスターの異名で冒険者にも恐れられている存在みたいだし。
それに亜季ちゃんの矢が外れていたわけじゃない。狙いはバッチリだったよ。」
と慰めておく。
皆も「そうだよ。」と言って頷く。
亜季ちゃんは、
「くっ、『赤い彗星』め・・。次は逃さぬ!
次に我に出会った日が貴様の命日になるであろう!」
とアンゴルモアゾーンに戻ってしまった(汗)
それにしても『赤い彗星』って、某公国の少佐の異名みたいだな・・。
もしかして亜季ちゃんはそっち系も好きだったのかな?
まあ、僕も大好きだけど。
するとチャロンが亜季ちゃんを現実世界に引き戻すが如く、
「それにしても東の森林地帯出身というのが気になりますね。
ここからだとかなり遠い場所になりますから、そんなところからどうやってたどり着いたのかが不思議ですね。
あの小さい体で徒歩でやって来るのは相当時間がかかったはずですよ?」
と、疑問を呈する。
ナイスアシストだぞ!
「この辺りでは珍しいのかい?」
「はい、かなり珍しいと思いますよ。
それに見た目が普通のゴブリンより小さいので、舐めてかかって返り討ちに合う冒険者がいるかもしれません。
登録したての初心者なら良くて大怪我、悪ければ殺されてしまっても不思議じゃない強さでしたね。
私もタクさんの「目利き」スキルで得た情報がなければ油断したかもしれません。」
「そういうことなら冒険者ギルドに情報提供したほうがいいかな?」
「そうですね。
ただ、タクさんのスキルの件は内緒のほうがいいですから、たまたま遭遇したゴブリンが油断ならない強さだったとだけ伝えておきましょう。
ゴブリンの耳を切り取って持って行けば僅かですが討伐報酬ももらえますし、魔石を回収して持って行けば買い取ってくれますからね。」
「なるほど。じゃあ、他の魔物が寄って来る前にささっと処理してしまおう。」
「はい!お手伝いしますね!」
とやり取りすると、僕とチャロンでグリーンゴブリンの処理をする。
両耳を切り取って布袋に放り込む。
感触はあまり気持ちのいいものではないが、解体スキルを発動して淡々と処理する。
魔石は心臓あたりにあるということだったので胸を切り開いて手を入れて回収する。
取り出した魔石は大人の親指くらいの黒い石だった。
チャロン曰く普通のゴブリンの魔石は大人の小指の先くらいの大きさらしいので、それにくらべるとかなり大きいらしい。
「やはり東の森林地帯に住む魔物は魔石が大きいですね。
あの森林地帯は魔力がとても濃いらしいので、魔物の格も上がるんでしょうね。」
「東の森林地帯って、確かあの魔王様が住むという森のことだっけ?」
「ええ、そうです。
魔王様の影響なのか、もともと魔力が濃いところに魔王様が居を構えたのかはわからないらしいのですが。
ただ、これを見る限り森林地帯に住む他の魔物も相当強いと思われます。」
「なるほど。元の世界に帰るには魔王様と面接する必要があるとクレア王女が言ってたけど、森林地帯に住む強力な魔物を倒せる力がないと、そもそも面接会場にたどり着けないということか。
パーティーを組んで旅に出ろ、というのも理解できる話だね。」
「そうですね。
ゴブリンですらこのレベルですから、他の魔物の強さも推して知るべきでしょう。」
「だね。まあ訓練をしてスキルのレベルを向上させる必要性が理解できたのは今日の大きな収穫だね。
ところで、このグリーンゴブリンの死体はどうすればいいのかな?
ギルドで買い取ってくれるんだろうか?」
「いいえ。ゴブリンの死体は不味くてとても食べれるものではないので、その場で燃やすか、深く穴を掘って埋めてしまうかのどちらかですね。
森の中なら放置しておけば他の魔物のエサになりますが、ここは街も近いので燃やすか埋めるかのほうがいいでしょう。」
「じゃあ埋めてしまおう。草原地帯で火を使うのも危険だからね。
火事になったら大変だし。」
と言うと、僕とチャロンで「土いじり」のスキルで地面に穴をあけ、折りたたみスコップで形と深さを整えるとグリーンゴブリンの死体を放り込む。
重ならないように適当に並べると、上から土を被せて埋戻して、最後に「物体作成」スキルで土の表面を固めておく。
死体から出る匂いで他の魔物が寄ってくると街道を往く旅人に危険が及ぶかもしれないからね。
「よし!これで処理は終わりだね!
じゃあ、街に戻ろうか!」
と皆に声をかける。
「「「「はい!」」」」、「バウ!」「ワウ!」という皆の元気な返事を確認すると僕達は街に向かって帰路につく。
なお、楓ちゃんは二度とフラグを立てないようにと、亜季ちゃんとアカネちゃんから強く怒られていた。
まあ、しょうがいないよね(汗)
次からは本当に気をつけてね!
最後までご覧いただきありがとうございました。
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