二人のクリスマス
第二十九話
◇◇◇◇◇
2021年10月
抗がん剤治療が始まっていた
美佳は最初の
1~2週間は吐き気や食欲がなくなり
倦怠感、口内炎、下痢などの症状で
苦しんでいた
2週間を過ぎると手足のしびれ
皮膚の異常、乾燥してよく痒いと
言っていた、そして脱毛…
ずっとあるのは、だるく、吐き気や
嘔吐それとひどい口内炎
しゃべるのもままならない状態だった。
先生は副反応が出て、さらに投与しなければ
がんに対する効果は出てこないと言っていたが
ほんとうに
耐え抜いたあとに光は射すのだろうか?
やめれるものなら
やめさせてあげたかった
それだけ、見ていても辛かった。
もちろん、本人が一番辛く、苦しい
思いをしているのはわかっていた。
ただ一言も
嫌だと美佳は言わなかった
耐えて耐えて苦しんでいた
月日の掛かる抗がん剤治療に
少しずつ効果が出てきたかもと思った
矢先の10月も終わりかけの検査で
肺への転移が見つかった。
まだ、ごく小さながんだったが
ふたりは大きな絶望を感じた
もう、心が折れてしまった…
美佳の折れた心をどう支えるか
どう立ち直していくか、励まし鼓舞した。
永遠に変わらない今なんてないのだから
いつかきっといい事が起きると
信じて、諦めない
そう言い聞かせていた…
◇◇◇◇◇
2021年11月
美佳には酷な2度目の手術だった
美佳は手術室に行く前
「パパ」
「もういいよ••お家に帰っていいよ」
と言って手術に行った
私は自分を悔いた
美佳にあんな思いをさせる自分に
腹が立っていた
もう、ぜったい消極的な自分を見せる事はしない
ずっと笑顔で美佳を応援し続けると
きっと美佳を元気にするんだと
手術のあとも抗がん剤治療は続けていた
◇◇◇◇◇
2022年12月
クリスマスがやってくる
クリスマスも年越しも病室で過ごす
もちろん仮退院も許されない
美佳は歩く元気もほとんど残っていない
ただ、治療のあと周期的に
まだ調子の良い日があり
そんな時は少し窓の外を眺める事は
出来ていた。
「美佳、もうすぐクリスマスだね」
「初めて一緒にクリスマスを過ごせる」
「そうだね、あの頃は
お店が忙しい時期は
自分がクリスマスを楽しむ余裕は
なかったゎ…」
「パパは子供たちとクリスマスを
していたんでしょう」
「まぁ、子供たちにはね」
「けど、ダメなんだけど
美佳からのベルを待ってたよ」
「わかってないね、パパは」
「クリスマスはパパをしないと
いけないの
だから、わたしは鳴らさなかった」
「ほんと、男は自分勝手なんだから」
「ごめんなさい」
「今あやまっても仕方ないよ」
窓の外はチラチラと雪が舞っていた
美佳は雪を見て、嬉しそうに
「パパ雪だよ」
「六甲山の裏で寒いから、ここは
雪は降るよ」
「年々少なくなって積もる事は
すくないけどね」
「ほんと?積もるといいね」
「みんな雪で包んで真っ白にして
消して欲しい、わたしの病気も••」
2021年12月24日
病室での
二人きりのクリスマスイブだった
「美佳どう?気分は」
「まぁまぁかな」
「窓まで来れるかな」
「どうしたの?いけるよ」
「あっ!パパ何あれ?」
「桜の木が光ってる!」
「イルミネーションだぁ」
「うん、病院の人にお願いして
自分で飾ったんだ」
「看護師さんたちも手伝ってくれた」
「あそこはまわりから見えるから
子供たちも喜ぶだろうって」
美佳の為にしたんだけどね…
「メリークリスマスだね」
「それと、これ」
「懐かしい、シャンメリーじゃん」
「そうだよ、これも許可もらってるよ」
「ノンアルコールだからね」
「乾杯しようか」
「けど無理して飲まなくていいからね」
「飲みたい飲みたい」
「それじゃ、乾杯!」
少しだけでもクリスマス気分を
味わってもらいたかった。
それから、また美佳は苦しみに
耐える日々が続いた……
抗がん剤治療は年末年始もなく
定期的に必ずある
大晦日は治療の翌日で美佳は苦しんでいた
苦しみながらの年越しだった
次の最終話は1時間後12時に掲載致します




