寝顔
第二十七話
◇◇◇◇◇
2021年9月
手術3日前、美佳は入院した
受付で手続きを済ませて
看護師さんに案内してもらった
311号室
こちらが個室部屋になります
手術の日はこちらの服を着ていただきますが、
それ以外はご自分の寝巻きでも結構です。
食事は途中まで運んで来ますので
時間になったら自分で取りにいってください。
食事の時間は、朝食午前8時頃、昼食正午頃、夕食午後6時頃となっております。
今日の夕食から出ますので
「夜はやっぱ早いよな
お腹空く前に早く寝るんだろけど」
「最初は早く寝れないよな」
食物、飲み物の持ち込みはご遠慮ください。
「美佳?個室だね」
「洗面所・テレビ・冷蔵庫・電話・
応接セットがあって家と同じ」
「ここしか空いてなかったの?」
「いいえ、わたし最初から個室でお願いしたの」
「たまたま空いていてよかった」
「パパもいつでも来れるし
他の人に気兼ねしなくていいでしょ」
「完全看護だから、付き添いとかは
いらないんだけど」
「個室だとある程度融通がきくらしいから」
面会は8時までです
療養上必要なお世話は看護師が致しますので、
付き添いの必要はありません。
「ほらね」
それでは着替えて下さい
後ほど、検温など確認にお伺いします。
「まぁ、これから大変だから、個室の方がいいか」
「冷蔵庫に入れるもの買ってくるよ」
「美佳はリクエストはある?」
「ミネラルウォーターが欲しいかな
それと、雑誌が欲しい」
「雑誌はなんでもいいの?
主婦が読むようなのでも」
「いいよ、わたしも元主婦だし」
「了解です」
飲みものもダメって言ってたけど
手術前後以外ならいいよな
真は病院の売店で買い物を済まして
部屋に戻ると••
美佳は窓をあけて、外を見ていた
美佳は外を見たまま…
ほら、パパ中庭があるよ
桜の木かな、たくさん植えられてるね
咲くと綺麗だろうね…
桜が咲く頃まで、いるのかな?
それとも…
「桜は、その前に退院してるだろから
夙川にいこう」
「今度こそ必ずいこう」
正直、真は桜の咲く時期はあまり
好きではなかった、いつもあまり
いい事がなかったので…
けど、来年は必ず美佳といくと決めていた
そんな事を話していると
看護師さんが来て、血圧や体温の
チェックしていた
手術の事は明日以降にご説明させていただきます
それまではゆっくり体調を整えて
手術に備えて下さい
明後日は前日だから今日明日だけは
ゆっくり出来るか?
「ホテルじゃないからねパパ」
「なんか、緊張するね」
「パパが緊張してどうするの?」
主治医の先生も来られた。
どうですか?といいながら
美佳のお腹は優しく触診していた
私は背中を向けて窓の外を見ていた
先生は検査からの痛みはどうですか?
この辺りは痛いですか?
「少し張った感じです、それほど痛くは
ないですね」
………
『それではお大事に』
「ありがとうございます」
ひと通り入院初日のイベントは終了
あとは、夕食まで何もない
美佳は雑誌を見てる
私はスマホ…
沈黙が続く
あの頃は時間が足りないぐらい
おしゃべりがしたかったのに
今日は何もしゃべる事がない
こんな雰囲気はいけないと思っていても
出てこない
何もかも病気がのしかかってくる
とにかく、手術が早く無事に終わって
欲しいと願った。
外が騒がしくなってきた
「美佳夕食が来たみたいだね」
「取ってくるよ」
「いいよ、まだ病人じゃないから、いけるよ」
「そう?こういのは付き添いが
取りにいくのが決まりじゃないの?」
「そんな決まりはありません」
「どれどれ見せて、今日は普通食だから
まぁまぁだね、少ないけど」
「パパはちょっと太ってきたから
これぐらがちょうどいいんじゃない」
「そんなに、太ってるかなやっぱダイエットしよ」
「美佳に嫌われるもんね」
「そうだね、嫌いにならなくても
イヤになるかも」
「何が違うの?」
「ずっと好きだけどぽっちゃりは苦手」
「ふーん、そしたら痩せる」
「頑張れよ パパ 笑」
面会時間の8時に近づいてた
「美佳1人で寝れるか?」
「子どもじゃないから寝れるよ」
「そうそう」
「パパLiveのビデオ通話出来る?
使いこなしてる?」
「使いこなしてるって、他で使ってないから
美佳しか登録してないからね」
「なんかビデオマーク押したらいいんでしょ」
「まぁそうだけど、電話は出れるよね」
「バカにしてる〜」
「だってパパはそういうの疎いでしょ」
面倒時間終了の放送が掛かっていた
「それじゃ、そろそろ帰るね」
「美佳大丈夫?寂しくない?」
「大丈夫だから、行って行って」
「本当だから」
真はもう一度部屋に入って
美佳を抱きしめて軽くキスして
「おやすみなさーい」
「パパが寂しいんでしょうよ」
「ほんと、子どもだね」
パパは居てくれるだけで
嫌な事を忘れさせてくれる
真は家で
ずっと美佳からの電話を待っていた
もう寝たかな?
かけようかな?いやもう少し待つかな?
やっぱかけよう!
「遅いね!」最初の一声がそれだった
「待ってたの?」
「そう」
「こっちも掛かってくるのを待ってた」
「パパから掛けてよ!何してるか
わからないんだから」
「ごめんなさい」
「それで何してたの?」
「ご飯食べて、シャワーして
スマホ見てた」
「美佳は?」
「消灯まではテレビみて時間潰して
それからはベッドでスマホ見てた」
「お互い1時間近く待ってたの?」
「バカみたいだね 笑」
ビデオ通話だと、普通にしゃべれていた
長く喋ってると、美佳は眠くなってきた
といいながら
「美佳?もしもし?」
寝顔が映っていた
化粧をしていない美佳は幼くみえ
26年の月日が経っていたとは思えない
懐かしさがあった…
しばらく寝顔を見ていた
やがてスマホは倒れ見えなくなった
寝落ちしたみたいだね
「おやすみ、美佳」
あの頃のポケットベルから比べると
もの凄く身近で便利だと思う
ただ、ベルにはなんとも言えない
もどかしさが良かった時もあった。
病気が大変で辛い日を過ごす事に
なるのはわかっていたけれど
その分2人の絆は深まっていた。




