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別れ••そして

第二十三話



それは突然訪れた


3月12日 日曜日

今日は美佳の家に来ていた。


復興の再オープンを

10日大安の金曜日にしてから

最初の大切な日曜日だった



美佳はいつにもまして綺麗だった。


きっかけは本当にたわいもない

やりとりだった、いや病気だと

気付いていたのなら、もっと違った

言葉が掛けれてたはず


「どう、パパ?」


「いいと思うよ」

震災があったから少し明る過ぎるかな

けど、お祝いだしね


「いつまでも暗くなってたらダメでしょ!」

 すごく苛立った言葉だった


「そうだね・」



美佳はそれほどでも無かったかもしれないが

 私はすごく気にしていた。


少し気まずい雰囲気だった…


「先、車に行ってるね」


「はい、すぐ行くからね」


美佳は普通に車に乗り込んできた


車を運転しながら

この前の事を聞いた


「美佳、夙川の桜は綺麗だから咲いたら行こうね」


お店の事で頭が一杯だったんだろう

返事は小さかった


「聞いてる?」


「うん!聞いてるよ」


また、嫌な雰囲気になった…


沈黙したまま、お店の近くに着いた。


美佳、これっ•てメモを渡した

私の携帯番号を書いていた

(昨日携帯電話を契約していた)


「電話買ったの?」


「うん、何かあった時に便利だと思って」

「ベルもまだ持ってるから鳴らしても

 大丈夫だよ」


「そう、わかった」


「それじゃね」


「行ってらっしゃい、頑張って」


「うん、ありがとう」


 美佳はお店にいった 背中を見送った


これが最後の「行ってらっしゃい」になった…


見送ったあとも、美佳の機嫌が気になっていた


帰る道中も自分の発した言葉が気になり

六甲山のいつものところで

車を停めて、少し考えていた…


やっぱり

言い方が悪かった、「ゴメン」と一言謝ろうと


六甲山は電波が悪く、携帯は通話できなかった

 私は引き返し路肩に停め電話をした。


しばらくコールしてたが繋がらなかった


また掛けた、しばらくして繋がった

美佳だった


「もしもし」


「パパ?止めてよ!」

「今CATで電話使ってるの掛けてきたら

 クレジット決済が出来ないでしょ!」


「掛けてこないで!」

「もう掛けてこないで!」


(パパはパパだから)

(子どもたちのパパだから••

声を強めながらも

 美佳は心の中でつぶやいていた


電話を切られてしまった…


それから


美佳からの電話はない

ベルもあれからは鳴っていない


美佳とは終わったしまった…

あっけない別れだった


 今から考えると

 余計な事を言い

 余計な事を思い

 余計な事を考え

 余計な事をしたんだと

全てが一言から始まってる


美佳は病気だったとしても

私がした大きな過ちだった。


ほんとうにあっけなかった…

それだけの男だったんだろう



    あなたがくれた思い出だけが

    優しさとして残った…




 ◇◇◇◇◇


2021年7月


私は59歳になっていた


あの日から5年後2000年に離婚


本当に身勝手な離婚だった

 言い出したのは私から

 5年前の出来事を忘れる事が出来なくて

 妻に正直に申し出た

 妻からすれば青天の霹靂ではなかった。

 うすうす感じとってたみたいだった

 大切な辛い年月を犠牲にして

 過ごさせてしまった。



忘れる事といいながらも何かを

 してきた訳でもなく

 償ってきた訳でもない


抜け殻のような30代半ばの5年を過ごした



来年は還暦になる


年相応に病院通いもある

今日は逆流性食道炎で通ってる病院

といっても、50日毎に薬をもらい

1年毎にカメラ検査をしているだけ

今日は診察をして薬をもらいに来た。


診察が済み、外に出て下の階に行こうと

していたら


婦人科の

外待合で看護師さんが

女性に検査の予約を説明していた。


私はもう何度も聞いてるので

勝手知ったるなんとやらで聞かないが


女性は初めてだろう、真剣に聞いてた…


私は会計で待っていた、いつも

ここの会計は混むし

会計の人が丁寧なんで

ぱっぱとやってくれないかなと


やっと私の名前が呼ばれた

野田真(のだしん)さんですね

こちらとこちらのお名前は

お間違いはないでしょうか?

いつもの丁寧な調子

彼女は忠実に職務を全うしてるだけなので

罪はないだろうが、私はぶっきらぼうに

はいとひとつ返事をする


お金を支払い、向かいの薬局受付で

いつもの薬局にFAXをお願いしてると


うしろで弓弦美佳(ゆずるみか)さん

お会計におこし下さい。


苗字が違うが

懐かしい名前を久しぶりに聞いた

一応、男なので


どんな顔かなと、会計終わりにさりげなく見た

(待っていたのでさりげなくは無いが)

さっき外待合で看護師さんに説明されていた

女性だった、今度は正面からはっきりと見えた。


美佳だった!


もう、大人過ぎた女性だったが

センスのある洋服、綺麗な髪

間違いなく美佳だった


とても50歳過ぎには見えない

凛とした綺麗な女性だった

歩く姿も昔のまま


目が合ったが向こうは気づいていない

そりゃそうだろ、白髪頭の黒ぶち眼鏡

どうみてもわたしは昔の面影は残っていない


まぁ仕方ないなと彼女が

横を通り過ぎた時


パパでしょ?



偶然の再会だった

あの日から26年経っていた


嬉しさとともに

また悲しみを背負う事になる真




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