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【11014】アイタイヨ

第二十話



自宅近くの公園など、みんなが避難している場所を

探し回った、旦那の車がないか?美佳がいないか ?


被災後、住むところが無くなった

人達は避難場所以外では公園や空き地に避難していた

仮設住宅などもまだない初期の段階では

夜は車、もしくはブルーシートで覆った

手作りテント、昼は外で焚き火などをして

暖をとっていた。


色々なところを探し回ったが

美佳の姿はなかった…


後ろ髪を引かれる思いで仕方なく会社に戻った。


どうにかして、安否だけでも知りたい


どうすれば分かるのか考えろ!と自分に怒りを感じた


そうだ、確か美佳のお店は他にも

お店があったはず

たしか本社は本店の上といっていた

他にも数店あったはず 


もしかすれば、そこに電話すれば

何かわかるかも知れない、

きっと社員の安否を把握しているはずだ!

と思い電話番号を調べた。


当時はまだインターネットが急速に

普及する前で

Windows95発売前の1995年1月は

まだ会社でも1人1台の時代では無かった

企業などのWebサイトもまだまだ発展途上段階


しかし、やはり美佳の仕事は

アパレルの会社でしっかりとした

ホームページがすでにあった。

最初は会社名とお店の名前が違うので

案外簡単ではなかった。が、

検索していくうちに分かった。


大阪本社に電話してみよう


さて、電話しても個人情報を簡単に

教えてくれるだろうか?


友人と言って教えてくれるだろうか?

親戚とかで言った方が良いのか?


ウソは付けない、友人として聞こう。


岡本店の店長の友人で色々お世話に

なっている者ですが

「連絡がとれなく安否が分からなくて

 心配してるのですが」


「連絡が入っていますでしょうか?」

 と尋ねると・・

  他に問い合わせが多かったのか

 以外とすぐに教えてもらえた。


『美佳店長は地震の

 翌日早くに美佳さんのお父様

 のところにご夫婦で避難されてる

 と聞いております』


「無事なんですね」


『はい、そのように把握しております』


図々しくも

「どこか分かります?」


『六甲山のご実家だと伺っております』



「ほんとうに無事でよかったです

  ありがとうございます」

 と冷静に電話を切った。


電話では表向きはなんとか平静を保っていたが


本当は

「生きていた!よかった!」

 ほんとうに良かった、あの時が

 最後にならなくてよかった」

 (大晦日のベルに応える事が

   出来なかったのを後悔していた)




一気に身体の力が抜け放心状態だった。


とにかく、無事ならそれでいい

待つことが出来れば、必ず次がある


いつかは美佳から

連絡があるだろうと思える


ただ、ベルはすぐは鳴らなかった••


4、5日した頃の午後



職場の倉庫で片付けをしていると

『電話です』と放送があり

お客様かな?と思って出たらみたら


電話は美佳だった!


「パパ?パパだよね」


「美佳なの?どうしたの?会社だよ」


「会社名と場所をうろ覚えだけで

 番号調べて掛けたら、パパの名前の人が

 いたので出るまで不安だったけど••」


「パパだね、良かった」


「パパ大丈夫だった?」


「大丈夫だよ、

 美佳こそ大丈夫なのか?」


「うん、

 あの日は大変だったの揺れが収まって

 から外に出たけど」


「真っ暗で何も見えない時に

 あちらこちらで『助けて』という

 叫び声が聞こえてきて…

 けど何も出来ず」


「私達も必死で車まで避難したの」

「怖かった」

「その声が今でも頭から離れない••」


「何も出来なかった」


「美佳たちも命懸けだったんだから

 必死だったんだろ?」


「そう、明るくなって辺りをみたら

 ほとんどの家が潰れていた」



「知ってるよ、見たよ」

「心配で美佳の家まで行ったんだ」


「いつ?」 「18日」


「入れ違いだったんだね」


「私たちは翌日の朝

 お父さんのところに避難して

 今はお父さんのところに居るの」


「お父さんの家と言っても実家は

 別にあって、ここは職場かな」



「六甲山頂近くにある電機メーカーの

 保養施設の施設長をしてて」

「そこに住み込みをしているの、

 今は私たちも、そこに居候させて

 もらってる」

 「水もガスも電気もあるから」


「余震もここならまだ安心だから」


「電話は施設の公衆電話を使ってるの

 今も、その電話からしてる」


「岡本のお店も心配だから早く

 行きたいけど

  行ける状態じゃないからそのまま」


「旦那さんは?」


「今、工場に行ってる」

「工場も被災して操業できないので

 今日は様子を見にいくって出たの」


「パパは?大丈夫だった?」


「こっちはぜんぜん大丈夫」

「北区はそっちから比べたら

 ぜんぜん大丈夫だったと思う

 電気もガスと水道も今は普通だよ」



「美佳•••ほんとにありがとう

 生きていてくれて、ありがとう」


「パパ心配させてごめんね」

「すぐ連絡できなくてごめん」

「なかなか、一人になれなかったから」


「また、ベル鳴らすね」


「この電話の番号が入ったら

 連絡ちょうだいね」


「お父さんが呼んでるから、

 もう行くね」


「わかった、気をつけてね美佳」


「うん、パパもね」


そして、電話を切った



こうして二人はお互いの無事を、

知る事が出来た


震災が引き裂いた長くて辛い距離が

少し近くになった


ただ普通の生活に戻るには何か月も

掛かるだろうと思った。


大晦日のあの時ルールを守ったが為の

空白を後悔したが

また、取り戻す事が出来る


電話を切るとベルが震えていた。


メッセージは

【33414】


続けてまた

【11014】


私は同じように旦那が持っている

美佳のベルを鳴らした、ただ

受話器を置いたまま番号を押した・・


【33414】


【11014】


心は届いたはず


さみしいよ••


あいたいよ••


いきてこそ、また会える喜び

生きていて感謝した。



  ただ、震災の影響は少しずつ二人の

   心を蝕んでいくことになる。




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― 新着の感想 ―
[一言]  前回のコメントを振り返って、自分から見ても嫌味たらしいコメントで気になってしまいました。私はいわさきさんのこと断罪するつもりもありませんし、資格もありません。それをここでしても意味がないと…
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