愛のかたち
第十六話
……………
水曜日の朝
自宅を出る時にまだ薄暗かったが
美佳の家に着く頃には明るくなっていた
もうすぐ日の出だった。
旦那の車はない
自宅からはベルが鳴らせない
旦那が履歴を残すようになったからだ
不倫をした身だから何も言えないが
愛情から来てるとは思えなかった
まして、手を上げるなんて許されざる暴挙だ!
美佳は寒いのに車まで来てくれた
急いで家に向かう
家の中は温かい美佳と暖かい部屋
気になっていた事を先に聞いた
「なぜ、ぜったい大丈夫な日なの?」
「あのね、旦那さんはね、
六甲アイランドの洋菓子メーカー
の工場に勤めてるの」
「それで毎年この時期からクリスマス
まで繁忙期で毎日早出と残業なの」
「パートさんの応援でラインに入るから
1人でも抜けると工場のラインが止まるので
体調悪くても休めない大変な時期なの」
「だから、出勤したらぜったい帰ってこないよ」
「そうなのか、工場も大変なんだね」
といいながらも、人というものは
とんでもない事をする時があるから
心配は完全には消せなかった。
「パパ、2回目だね、おかえり」
うなずいたが
「ただいま」とは返せなかった。
「トースト焼くから食べてね」
「コーヒーでいいよね」
いいよ、って
返事しながら、窓の外を見て
もし、旦那が帰って来たらどうしようかと
考えていた。
こんな事を考えるなら来るべきではなかった
ただなんとなく…
美佳は何か言いたい事を黙ってる
ような気がしていた。
一か月の束縛が大変だったのも
まだ、あれこれ言われてるのも
辛くて萎縮してるんだろうって
病気にならないか心配だったのもある
コーヒーを飲みながら
「美佳、何か言いたい事があるんじゃない?」
「別にないよ」
話しが止まり少し沈黙した
「ほんと、ないけど••」
といいながら泣いていた
私は美佳を引き寄せ抱きしめたまま
部屋の方にいって一緒に座った
「どうした?言ってごらん」
「怒らない?」
「なんで?怒るような事なの?」
「首を振って、「わかんない」
「いいから、思ってる事を
言ってごらん」
「パパは一度も聞かなかったけど」
「パパと出会った、あの伝○ダイヤルの
きっかけはね」
「それまでケンちゃんと
あまり、うまくいってなかったの」
「なんとなく付き合い始めてから
すでにあった
束縛とか暴力とかは結婚してから
ひどくなっていったけど
仕方がないって思ってたんだけど」
それじゃなくて••恥ずかしいけど
「ずっと痛かったの…」
「それはsexの事だとすぐわかった」
「だから、臆病になり
好きになれなかったんだけど…」
「パパに愛されてわかったの」
「ずっとわたしがおかしいんだと思ってたけど
そうじゃなかった」
「だから、あの時それがわかって
嬉しかった」
美佳は大粒の涙を流しながら
私に抱きついてきた。
私も強く抱きしめていた
辛い思いをしてたなんて
気づいてあげられなくてごめん
美佳、ごめんな•••
ふたりは確かめるようにうなずいた
真と美佳は激しく愛し合った
お互いの身体と心を愛撫した
ゆっくり、愛を確かめながら
少しずつ足下の方へ、そして
手を握りしめ、顔を埋めた
美佳は漏れる声を抑え
身体は小さく震えていた
真はうしろから抱きしめ
握りしめた手がほどけ
美佳は乳房を手で覆った
真はその手を上から包み込み
抱きしめた
そして、ひとつになった。
美佳の身体は大きく揺れながら
真の激しくも優しい動きに
シンクロしていた
とけるようなときが過ぎ
いくつも美佳が落ちていく
そして真も美佳の温もりの中に
落ちていった••
美佳の乳房に顔を寄せ、そして
口づけをした、言葉はいらなかった
美佳のせいじゃないよって
心と身体が伝えてくれていた。
ふたりの愛のかたちは誰にも崩せない
二人が出会ってもう少しで半年
1994年もあと少しで終わろとしている
二人には新たに出直す1995年になるはずが
思いもよらない大きな出来事が迫ってくる
神戸の都市を破壊した日の二人の運命は•••




