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再び

第十三話



 あれからひと月が過ぎようとしていた。

何気ない日常に戻りつつあった、


ただ、

あの泊まりでの事、新神戸での出来事は

夜、車を運転するとフラッシュバック

して心が乱れてしまう。



のちの阪神淡路大震災では

多くの方が震災の出来事がトラウマと

なり、PTSDになる人が大勢いた。


 今も美佳の腕時計をしている

あの時は車に置いて駅に行ったので

取られる事はなかった。

時計とZARDのCD そしてあのメモが残っている。


あれ以来メモは見ていないが

捨てられずにいた


今晩は会社の友人たちと夜釣りにいく

この季節は神戸港にも太刀魚が

回遊してきて、近くの堤防でも釣れるので

週末の神戸、大阪にかけての突堤は釣り人で賑わう


私は久しぶりにみんなと行くことにした。


海にはたくさんの電気ウキの灯りの

赤い光が並んでいた。

横では青いケミホタルをつけた

仕掛けを投げており、青い光の線が

あちら、こちらで飛んでいた。


久しぶりだから、のんびりと

私は浮き釣りを楽しんだ


釣果はたったの1匹だった

そろそろ太刀魚は

時期が過ぎようとしていた。


私たちは、いつも釣り場を転々とする

ブラックバス釣りのように

ポイント移動を繰り返す


第八突堤から西に7•6•5突堤というように、

いつもダメだったらすぐ移動

それも、また楽し

そして最後に4突(新港第四突堤)


4突では、もう釣れないだろけど

ルアーでシーバス(スズキ)を狙う


神戸大橋の橋脚めがけてキャストする

(2匹目のなんとやらで、また釣れるかもと、

 ついつい同じところを狙っている

 まずその後釣れた試しはない)


私はキャストをやめて、対岸を見ていた…


 そこは、美佳と初めて会って口づけを

したところだった…


 もちろん覚えているが、気にしないで

おこうと思ったが


やはり、思い出してしまう。


 あの時、初めてだったのに

切なくも可愛い、愛おしく思えた美佳の

ぬくもりが今もよみがえる


『もう、釣れないから帰るろう』と

 うしろから呼ばれた


思い出をしまい

私はゆっくりと、皆のところにもどった。



 仕事は少しゆっくり出来るようになり

休日も家にいる事が多くなっていた。


週末は家族と買い物に出かける

3ヶ月前と同じ感じに戻っていた。


 妻は雰囲気が違ってたのを感じていただろうが

何も言わない、今までと同じ様に接してくれる。

ありがたい家族だ。



 普通の日常でのんびりと何も不満は

なかった、時が全てを消してくれる

のだろうと••


この時、会社ではわずかな人が

携帯電話を持ち始めていたので

流行り物好きの私もどうしようか

考えていた、


当時は、会社によって電波範囲が

大きく変わる、電話代金が高いなどが

あり、もちろんその時代はNT○ド○モ

が1番だったが、ただ代金がネックだった。

(当初携帯メールと呼ばれる

メール機能は携帯にはなかった

そのサービスは1996年からだった)


ただ、携帯に変えてもよかったのだが

ベルを手放さないといけない

それが、何故か出来なかった


もしかしたら、まだ•••


週があけて、また1週間の始まり


昼休み、みんなと後輩の車をみていた

ああでもない、こうでもないと

言いながら、楽しくやっていた。

みんな、車いじりが好きでそれも

気が合う仲間だった。


 そんな時にベルが鳴った、

みてすぐにわかった、美佳のお店の番号だった。



私はみんなと離れ、会社の電話で

掛けてみた、美佳が出た。


「ハイ、シュクル岡本店でごさいます」

私は美佳の声を確認してから

(ゆっくりと)「真です」


「パパ、元気してた?」

あきらかに美佳の声はいつもの

元気ある声ではなかった、


「元気だったよ、美佳はどうだった?」


「うん、なんとかね

ごめんなさい、時間掛かってしまって」


「あの日、ベルも手帳も何もかも

 パパとの関係になるものは全部

 捨てられてしまったの」

「ただベルは旦那さんが持っていて、

 パパが鳴らさないかチェックしているの、

 だから鳴らさないでね」


「仕事の送り迎えも先週までずっとしていたゎ」


「まだ、いつも近くでみてるんじゃ

 ないかって怖いの」


「あの日は暴力は大丈夫だったか?

 サングラス掛けていたよね」


「うん、やっぱり殴られてちゃって

 目の下が腫れてたの、泣いて目が真っ赤だったし」


 私は昨日の事のように思い出し

くやしくて拳を握りしめていた。


「けど、監視もマシになってきたから」


「ベルの番号は頭に入っていたから

「旦那さんも頭の中までは消せなかったね」


(美佳はケンちゃんとは呼ばなかった)


私は「そうか」しか言えなかった


「パパはあの帰り、ベンチで座ってたでしょう

美佳パパ見てたよ」


「ごめんなさい、きっと連絡するよ」

 って心の中で呟いてたの、1ヶ月も掛かっちゃたね


「メモを見てた…あんな危ないことして

 美佳はバカだよ」


「バカはないでしょ、

    必死だったんだから」


「わかってたよ••声にならなかった




美佳の声がまた聞けたのが

  どうしようもなく嬉しい。


(子どもの時に欲しくて欲しくて

たまらない、たわいないおもちゃを買ってもらった

時の様な感覚だった)


(ただ、同時に買ってもらったおもちゃを

壊してしまった時の感覚もあった)



二人はまた、再び残酷な愛を選んでしまうのか?

祈っても誰も助けてくれない時へと…


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