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残酷な愛

第十二話



翌朝といってもまだ3時間しか経っていない


一睡もせずに、早めにきて遠くに車を駐車して

歩いてきた。

窓の外をみつめ旦那が来るのを待っていた。


二人は前から歩いて来たが、美佳は少し後ろにいた 。

見ると、美佳はスウェットに大きなサングラスを

していた 、いつもの華やかな美佳ではなかった…


涙で目が腫れているのを隠しているのか?

それとも殴られたのか?

どっちにしても、目の前の旦那が憎かった。


旦那は想像より小柄で細身、美佳とそう変わらない

背格好だった 。

なぜだか、手にはレーシンググローブをしていた。


改札だと人目につくので、外側に出るように

言われ、ターミナルの外側まで付いていった。

それでも人目があったので、私は少しづつ

端の方に移動していた。


当然だが 、


いきなり、電話と同じような事を言われた。が、

あまり耳には入ってこなかった

昨日から既に、何もかも考える事が

出来なくなっていた 。


旦那はいきなり、殴ろうとしてきたので

とっさに腕を握り、止めていた。 目は

旦那をにらんでいたが、我に返り腕を離し

目を伏せた。


すると、また殴ってきたので身を任せた。

何度も何度も殴ってきた

(ただ、痛みは感じなかったが)

(昨日、同じ事を美佳にはしていないだろうな)

 と、そう思ったら怒りが込み上げてきた。


その時、美佳が止めに入ってくれた

 とっさに美佳をかばってしまった。


それが気に入らなかったんだろう


『ちょっと待っておけ』と言いそこを離れた 。


美佳に対して『ついて来い』の様な手振りで

向こうへと行こうとした 。


旦那が向こうへ行こうと、振り返った時

近くにいた美佳が私に何かを渡した。

(気づかれないように)私はとっさに

 左手で握りしめ隠した。



向こうで、美佳に何か言ってた、

殴るような素振り


戻って来て、今度は


『おい!土下座しろ』


『土下座して、申し訳ございませんでした』と言え!


『美佳とは遊びだったのでもう会いません』と言え!


(美佳は俺のもの、お前のものではないと

 言いたげだった)


(不倫は認めている、だから詫びるが

 しかし美佳は物ではない)


それで満足するなら、

 美佳を許してくれるなら、なんでもする

私は素直にしゃがみ、土下座した。


そして、その通りに言ったが、ただ、


「遊びだった」


・・・それは嘘でも言えない、

 口に出したくはなかった …


『言え』『言え』と何度も私を蹴りながら

  叫んでいた。


美佳は旦那の後ろで、背中を向けて

          耳をふさいでくれていた•••


私は言ってしまった

 「遊びでした…」と


そして思った・・美佳とは終わってしまった、と


それでも

何度も蹴られ続けた、身体は倒れそうになりながらも

手は強く握りしめたまま、土下座をしていた

 自分の爪で手の平が傷つくぐらい握っていた。



 遠くに人だかりが出来ていた

何があったんだろうって見ていた。

蹴られてもいるのを人に見られているのも

情けなかったが

私より美佳が見られているのが辛かった。


人目が気になったのか

『二度とするな!』と言って・・

私が土下座のまま、二人は帰って行った…



嵐のような出来事は去っていった。



私は、ゆっくり立ち上がり

改札側には行かず、新神戸の駅の

海側へ向かい川沿いに下って歩いていた。


途中のベンチに座り、服の汚れを

はらいながら、ぼーっとしていた



昨日、送った帰り際になぜ


「愛してる」


と言わなかったのか後悔していた

最後だったのに

伝えれなかった自分に腹が立った。


顔を上げると朝陽がまぶしかった


(この時、美佳が乗った車が遠くを通り過ぎた、

 旦那に見られないように真を見ていた)



昨日からの目まぐるしい1日が終わった。


まだ硬直した左手を開け美佳から

渡されたものを見た


くしゃくしゃになった、紙をそーと開いた


小さなメモだった、見ると美佳が書いた文字が…


隙をみて、急いで書いたんだろう

文字は乱れていた、

美佳もずっと握って隠していたんだろ・・


そこには決して見られてはいけない

文字が…


「今日どんなことが起きても美佳は離れない

 パパとずっと一緒にいるから「愛しているから」


と書かれていた、

美佳を想い涙をこらえ

 私はたち上がって歩き始めた。


 自分は伝える事が出来なかった事を

 悔やんでいた、バカな自分を後悔した



私たちはどうなるんだろう・・・

どこに向かって歩けばいいんだろうか?



    100回の約束をしたとしても

    1回の真実には勝るものがない

 もしも、それが罪だとしても••

    時に愛は残酷で 祈っても、縋っても

 神は助けてくれない••




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