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絶え損ないの人類共  作者: くまけん
第二章 ルタ大陸編
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第176話 「9体のドラゴン」

 1体だけでも脅威になるドラゴンが、9体も。

 ナナはこんなに多くのドラゴンを腹に潜めていたのか。一体全体、ナナの腹はどんな仕組みをしているんだ。

「またドラゴンですか。チェルド大陸で見て以来ですね」

 ファティオは9匹のオリジンピースを興味深そうに見ていた。チェルダード王国のルクトシン第一バイオ研究所では、子供のブラッドドラゴンと戦闘をしたことがある。オリジンピース達と子供のブラッドドラゴンは同じくらいの大きさで、戦闘能力もほぼ等しいと言えた。

 ドラゴンの実力は、この場の全員が理解している。


「来るわよ。みんな気を付けて」

 アレイシアが警告した次の瞬間、オリジンピース達が俺達に襲い掛かった。一対一ならともかく、多数で攻められると対処が難しい。

「ウゼエんだよっ、トカゲ共!」

 サジェッタが思いっきり鞭を振って、オリジンピースを薙ぎ払った。地面に叩きつけられたオリジンピース達だが、またすぐに体勢を立て直す。タフな奴らだ。

 そこにカインズが飛び出し、二匹のオリジンピースを同時に蹴った。激しく吹っ飛ばされたオリジンピース達。それでもまだ動き出した。やはり弱点を突かなければ、簡単には殺せないようだ。

「よぉ、カインズ。久しぶりだなぁ」

 サジェッタがカインズを睨んで言うと。カインズはサジェッタの方を向いた。

「えっと……『イーヴィル・パーティー』のサジェッタ……だったっけ? うん、久しぶりだね」

 カインズはサジェッタと戦ったことがあるようだが、それはしばらく前のことだった。カインズがサジェッタの名前をうろ覚えなのも、仕方ないだろう。

「呼び捨てしてんじゃねーよ。あん時よりは強くなったみてーだな、クソ貴族さんよぉ」

「うん。おかげさまで」

 カインズは喋りながら、もう一匹のオリジンピースにかかと落としを決めた。それが偶然にも翼の付け根に直撃したため、オリジンピースは唸り声をあげて息絶えた。

「あ、ここが弱点みたいだね」

 カインズが言うと、アレイシアが両手の手のひらを合わせて謝った。

「ごめんねぇ。それ伝えるの忘れてたわぁ。オリジンピースは背中の羽の付け根が弱点なのよ」

「おいおい。それ、早く教えて欲しかったぜ……」

 エリックが左手を抑えながら呟いた。アレイシアの情報があれば、エリックは楽にオリジンピース達と戦えていたかもしれない。そうすれば、怪我をせずに済んだかも。

「だからごめんってば」

 アレイシアはエリックに謝罪を重ねながら、オリジンピースをもう一匹仕留めた。喋っていても戦闘に集中し続けている。流石アレイシアだ。


「うーん、驚いたね。まさか伝説の生き物をこの目で見れるとは! 貴重な経験ができてよかったよ……おおっと、危ない!」

 ウォレットが喜びを語っている最中に、ウォレットの顔面目掛けてオリジンピースが襲ってきた。しかしウォレットは素早く躱し、敵を距離を取った。『戦闘の心得がある』というのは嘘じゃないようだ。

「この僕様を簡単に殺せると思わないことだ。そして……」

 ウォレットは、温泉の外にいるナナに向かって走った。

「君は隙だらけだね!」

 オリジンピースに戦闘を任せっきりのナナは、俺の目から見ても隙が大きかった。そこを見逃さず、ウォレットは敵の指揮官であるナナに接近する。

「ふえええええっ!」

 ナナは慌てふためいて尻餅をついた。

 ウォレットがナナの目の前まで来た時、新たな殺気が姿を現す。

 ウォレットの足元に投げられる注射器。ウォレットはそれを感知し、すぐさま注射針を回避した。その勢いでウォレットは地面に転倒したが、咄嗟に受身を取って衝撃を和らげた。そしてコロコロと転がって、ナナから離れた位置で体勢を整えた。

「またもや僕様を襲う危機! だが僕様は回避できてしまうのだよ! フハハハハハハ!」

 いつも通りの手前味噌な台詞を吐いて、ウォレットは立ち上がった。俺とウォレットは、注射器が飛んできた方向に視線を向けた。


 ナナの後ろから、白衣姿の男が歩いてくるのが見えた。彼は知性を感じさせる老人で、威圧的な目つきをしていた。両手には注射器を持っている。いずれも、毒々しい色の液体が入っていた。

「その娘に乱暴な真似をするのは控えてもらおうかね、ウォレット・ミカウツ」

 この男とは面識がある。こいつはルクトシンの研究所で所長を務めていた男で、『執念の手』のメンバー。

 マジマジ・オブズアブだ。

「君も『執念の手』の一員なのかね、ご老人?」

 ウォレットの問いにマジマジが答える。

「そうだ。儂は『執念の手』の『観察者』、マジマジ・アブズアブ。今はドラゴンの研究をしている」

 俺はマジマジを睨んで言った。

「カインズから聞いたぞ。高名な科学者が、殺人集団の仲間とはな。お前もナナと同じく、俺を殺しに来たのか?」

「いや、今の儂に戦意は無い。この娘を連れ戻しに来ただけだ」

 マジマジは両手を前に出して言った。

「武器を収め、戦いを中断してはくれんかね」

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