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絶え損ないの人類共  作者: くまけん
第二章 ルタ大陸編
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第160話 「新メンバー」

 モーグモ夫妻が捕まり、ウォレットに金銭援助もしてもらい、一件落着といったところだ。

 クロム隊の5人は、ウォレットが用意した宿に泊まらせてもらった。流石というかなんというか、質の高い宿だった。部屋は綺麗だし、料理も用意してくれるし、接客態度が丁寧だし、至れり尽くせりだ。ウォレットの指導が行き届いているのだろう。あの男のことだから、利益追求のためにサービスの向上に力を入れているに違いない。

 野宿とは天地の差がある贅沢な一晩を満喫し、俺達はウォレットの宿を後にした。


「おはよう諸君! 僕様の経営する宿は素晴らしかっただろう? お気に召したのなら、是非ともリピーターになってもらいたい! ところで、君達にお願いがあってきたんだ! お願いというよりは、要求だね。君達に金銭援助をすることに対する、対価とも言える」

 宿を出てすぐ、待ち伏せしていたウォレットに話しかけられた。朝っぱらからテンションが高い奴だ。こいつはいつも大声で喋っているが、そんな喋り方で疲れないのだろうか。

「要求か。それもそうだな。お前にお世話になりっぱなしという訳にもいかない。俺達ができることなら、どんな要求でも受け入れよう」

 するとウォレットはニヤリと笑って言った。

「そうか。ならば頼もう! この僕様を、クロム隊の一員として受け入れたまえ! それが僕様の求める対価だ!」

 それは、つまり。

「お前……俺達の仲間になってくれるのか?」

「そうとも! 昨夜は僕様の部下になってくれないかと頼んだがね。それが無理というなら、僕様が君の部下になるまでさ。惚れた女性の近くにいたいと思うのは自然なことだろう? 君達も重々理解したと思うが、僕様は極めて有能だ。君達の足は引っ張らないと約束しよう。どうかね?」

 ウォレットは俺の答えを窺っていた。

「断る理由は無いが、お前はいいのか? お前は数多くの企業を取り仕切る社長だろ? 毎日が多忙なはずだ。アイズの活動をする暇があるのか?」

「それは問題無い。忙しさなど、なんとでもなる。万が一、僕様が急死したとしても、会社の運営は滞りなく進むようにしてある。物騒な時代だからね。自分の身に何が起こるか分からない。いざという時の対策はしてある。だから僕様がアイズの活動をしたところで、僕様の会社に影響は無い。僕様の仕事の一部を、部下に任せればいいだけだ」

 ウォレットは自信満々に答えた。

「うーん、そうなのか? 俺には経営のことなんて分からないが、でもお前がそう言うなら大丈夫なんだろう」

「そう。僕様が言うから大丈夫だ。僕様は余計な嘘は吐かないのだよ」

 だったら、これ以上好条件な『取引』は無い。俺達にとっては、得しか無い契約だ。

「じゃあ、よろしくなウォレット。俺はお前を歓迎する」

 ウォレット・ミカウツ。頼もしい仲間が増えたな。

「マジかよ……こいつが後輩になるって……。気に食わねえぜ……」

 エリックは露骨に嫌そうな顔をして言った。『気に食わない』なんて言っておきながら本気で拒まないのは、ウォレットの才能をその目で見たからだろう。

「わぁ、ウォレットもボク達と一緒に来てくれるんだね。楽しくなりそうだなぁ」

 カインズはウォレットの加入に肯定的だった。友達だから、当然か。

「ところでクロム嬢。この隊にはファティオ・ハージ副隊長がいると聞いているが、彼は何処に?」

 ウォレットはこの場にいるメンバーを見渡してから尋ねた。俺、エリック、カインズ、ミミ、ユリーナはいるが、ファティオがここにはいない。

「ファティオは、後でやって来る……かもしれない。来ないかもな。あいつには妻と子供がいるから」

「なるほど、理解した」

 今の俺の返答は明らかに説明不足だったが、それでもウォレットは状況を理解してくれたようだ。

「あともう一人、アレイシア・ルーンは何処だね?」

「あっ」

 アレイシア。俺の親友で、『アレイシア隊』の隊長。

 ダンスパーティーの前に用事があるとか言って、あいつとは別行動を取っていた。

「すっかり忘れてた。アレイシアはどこだ」

 ダンスパーティーのドタバタで、あいつの存在を失念してしまっていた。あいつの居場所も、あいつの連絡先も知らない。

「誰か、あいつの居場所を知ってるか?」

 みんなに聞いてみたが、知ってる人はいなかった。

「クロム隊長が知らないなら誰も知らないですよ」

 カインズはそう言った。確かに、せめて俺には行き先を教えてくれても良かったのにな。アレイシアは教えてくれなかった。

 そういえば、あいつは俺に自分のことを言わないことが多いな。別に、隠し事してるとか疚しい事があるとかじゃないだろうけど。俺は、アレイシアのことをよく知らないのかもしれない。

「では探しに行こう。新入りの僕様は、アイズの先輩である彼女に挨拶がしたいのでね」

 ウォレットの提案に乗って、俺達はアレイシアを探しに出かけた。捜索の手がかりはないが、そう遠くに行ってはないだろうし、適当に探せば見つかるだろう。

 実際、アレイシアはすぐに見つかった。意外なほど早く、意外な場所で。


 アレイシアは、ごみ捨て場のそばで倒れていた。

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