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絶え損ないの人類共  作者: くまけん
第二章 ルタ大陸編
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第141話 「そして銭湯へ」

 アレイシアとの訓練が終わったので、俺は食事の片付けを始めた。そこで、ユリーナが不審な動きをしていることに気付く。

「ユリーナ、お前何してる」

「あひゃぃ!」

 ユリーナは奇妙な声をあげ、体をびくりと動かした。

「い、いや……その……」

 ユリーナの足元には、もっこりした土の突起が見える。ついでに言えば、ユリーナの手は泥で汚れていた。推して見るに、ユリーナは手で小さな穴を掘ったのだろう。

「食事を埋めたのか? ユリーナ」

 するとユリーナは涙を見せて俺にしがみついた。

「ぶえぇぇ……。すみませぇんクロムさん……。私、あれを食べきるのはどうしても無理です……。吐き気がしますぅ……」

 捨ててしまったか。勿体無いが、流石に泣いている人に無理やり食べさせるのは気がひける。

「分かった。今回は許そう。あれは初心者には厳しすぎたな」

 まともな飯を食べてきた人間には食し難いものだったからな。徐々にあの苦味に慣れさせていくしかないな。

「クロムさんはよく食べれましたね、あれ」

「俺は苦いものを口にするのは慣れているからな。お前には難しい味だったか」

「でもでも! クロムさんが『あーん』ってしてくれたら食べますよ、私!」

 ユリーナは口を開けて『あーん』と言った。俺に食べさせて欲しいってか。なんて恥ずかしいお願いをするんだお前は。

「『あーん』ってそれはちょっと……。仕方ないな。ほら、『あーん』」

 都合よく、非常用として残しておいた木の枝がここにある。俺は極めて苦い木の枝を、ゆっくりとユリーナの口に挿入した。固くて黒い棒がユリーナの口腔に入っていき、ユリーナはそれを幸せそうな顔つきで咥える。

「んふぅ、おいひいれふ」

 食べながら喋ったせいで、『美味しいです』と言えてない。

「嘘吐け。お前さっき『まずい』って言ってただろ」

 ユリーナは枝をよく咀嚼して、ごっくんと飲み込んだ。

「クロムさんが食べさせてくれたから、美味しく感じたんですよ」

「そんな訳あるか。今度から自分で食えよ」

「えー、嫌ですよー!」

 ユリーナはもう一本の枝を握って、もっと欲しがるような眼差しで俺を見た。

「ヒューヒュー! おアツイわねぇ」

 アレイシアが俺とユリーナを見て茶化してきた。あいつの妙におばさん臭い言動は相変わらずである。

「ずりぃぞユリーナ! 俺もクロムに『あーん』ってしてもらいたい!」

 エリックも俺の前に来て口を大きく開けた。

「お前は一人で食えるだろ」

 俺は食べ物の代わりにパンチを食らわしてやった。俺の拳がエリックの顔面に軽くヒット。エリックは「ぐほぉっ!」と言いながら地面に倒れた。

「痛い……でもこれもまた幸せ……」

「黙れマゾヒスト工場長」

 さて、うるさい奴を黙らせたところで、そろそろあの時間だな。

「クロムさん、今晩、お風呂って入れるでしょうか……?」

 そう、風呂だ。疲れた体を癒し、全身の老廃物を洗い流す時間だ。宿に泊まる金が無いとはいえ、銭湯に行く金くらいはある。是非とも入浴は欠かしたくないところだ。

「安心しろユリーナ。安い銭湯を探せば、風呂に入れる」

 問題は、近くに安価な銭湯があるかどうかだ。9870ヴァルエで入れる風呂があるといいんだが。

「じゃあ、『100ヴァルエ銭湯』に行きましょう」

 カインズが提案した。

「『100ヴァルエ銭湯』? なんだそれは」

「その名の通り、一人100ヴァルエで入れる銭湯ですよ。ルタ大陸ではよく見かけるお店です。手頃なお値段なので、結構庶民に人気なんですよ」

 都合がいい。なんて貧乏人に優しい店なんだ。

「よし、ならその100ヴァルエ銭湯に行くぞ!」

 俺達は意気揚々と100ヴァルエ銭湯に向かった。だが、安いものには裏があるというもの。低価格の理由は、銭湯に着いてすぐに明らかとなった。


 その銭湯は、混浴だった。

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