第138話 「金欠」
アレイシアが加わったところで、俺達は話を再開した。
「俺達はまず、経済都市アーネに向かう。物流の盛んなあの街なら、ルタ大陸中の人々が集まり、情報収集がしやすい。そこで、チェルダード警察の動向を探ろうと思う」
俺が案を出すと、ユリーナが質問した。
「クロムさん。チェルダード警察はこの国には来ないんですよね? じゃあなんで情報収集するんですか?」
「さっきも言っただろ。ルトゥギアが俺達を捕まえて、チェルダードに渡す可能性もある。安心はできない。だから俺達は旅人のふりをして、身を隠しながら生活していく」
ユリーナは「なるほど」と言って納得したようだ。
「とりあえず、今晩泊まる宿を探そう。アレイシア。お前のアジトを貸してくれないか?」
「ダメよ。アーネにあるアジトは警察署の真正面に建ってんのよ」
流石にそんなところでは一泊を過ごせないな。俺達は警察に見つからないように動きたいわけだから。
「そうか。じゃあ、一般の宿屋を探そう」
宿屋に泊まると人目につくだろうが、仕方ない。
「待って下さい、クロム隊長」
俺が立ち上がると、カインズが挙手して発言した。
「お金が……ありません……!」
ヴィルカートスからの連絡を受けた時の俺は、急いでいたため、十分なお金を持っていなかった。俺を追いかけてきたみんなも同様。お小遣い程度の小さな財産しかない。
9870ヴァルエ。それが、クロム隊が現在所有する全財産だった。
少ない。6人が一泊するには、あまりにも少ない金額だった。せめてこの倍のお金があれば……。
「最低品質の宿でも、この金額じゃ泊まるのは無理よねぇ」
アレイシアが憐れむような口調で言った。貧乏とはかくも辛いものだったのか。
チェルダードのお金はルトゥギアでも使える。両国とも貨幣の単位は『ヴァルエ』だからだ。しかし、チェルダードよりもルトゥギアの方が若干インフレ気味だ。故に、チェルダードで100ヴァルエの物がルトゥギアでは130ヴァルエだったりする。物価が高いのだ。
「どうする? 俺は野宿でもいいぜ」
エリックから新たな提案。アイズは仕事上、野宿することもある。俺とエリックは長い間アイズに所属していたので、野宿は慣れっこだ。
だが、そうじゃない者もいる。
「えー、野宿ですかー?」
ユリーナは最近アイズに入ったので、野宿には慣れてなさそうだ。
「文句言うなよ、ユリーナ。金が無いんだから」
エリックが説得する。するとユリーナは「分かりましたよ」と譲歩してくれた。
「家を担保にした時、野宿生活の覚悟は決めてました。今更文句は言いません」
そういえば、ユリーナは借金で家を失ったんだっけ。初めて会った時にそう言っていた気がする。
「こっから北に行ったところにある、農業都市ポロクロロのアジトなら人目につかないところに建ってるんだけどね。あそこに行くまでに1日以上かかるから、本末転倒ね」
アレイシアがポロクロロの方のアジトについて話してくれたが、彼女の言う通り、アジトに着くまでに野宿するなら意味が無い。
「仕方ないか。今晩はどこかで野宿にするか」
すると、カインズがまた挙手して発言した。
「いえ、まだ希望はあります。ボクの友達が、アーネに住んでるんですよ。彼に頼めば、資金援助をしてくれるかもしれません」
カインズの友達か。この前、友達がルタ大陸にいるって言っていたな。その人物か。
「カインズ先輩のお友達ですか。どんな方ですか?」
ミミが聞くと、カインズは答えた。
「アーネの貴族だよ。名前はウォレット・ミカウツ。ミカウツ家の次男で、幾つかの会社を経営している大富豪。はっきり言って天才だ」
稀代の天才カインズに、『天才』と言わせる程の人物。只者じゃないのは、既に理解できた。
「ウォレット君に久しぶりに会ってみたいし、彼に協力を頼むのはどうかな? もちろん、お金を借りたら返すよ。彼はお金に関して厳しいから」
特に止める理由はない。なら行くべき道は決まった。
「分かった。ウォレット・ミカウツに会いに行くぞ」




