第127話 「終わりを求めた科学者」
長らくお待たせしました。連載再開です。
滅びを望む者がいた。
復興を望む者がいた。
団結を望む者がいた。
求めた世界を作るために。求めた未来を掴むために。
皆、信念の元に行動を起こした。
そして、人類の行く末を傍観する者が、ここに一人。
「あはは。予想通り、中央都市は落とせなかったね。あと一歩だったんだけどなー」
彼女は膨大な量の資料に囲まれながら、巨大なディスプレイを凝視し、呟いた。文字と図形だらけの、この空間。圧倒的な情報に押し潰されそうな、狂った部屋だった。どこもかしこも、情報、情報、情報。彼女が天才的研究者でなければ、きっとこんな場所にはいられなかっただろう。観察と、推測と、真理のために存在した、彼女だけの観察室だ。彼女のみに許された空間だ。
彼女がディスプレイを見つめる目は、どこまでも無気力だった。何もかもに飽きて、失望している目。期待も、希望も、欲望も無い、乾いた視線だった。
なのに、彼女は笑っていた。ありふれた結果も、予想通りの未来も、全部つまらないと知っているのに。滅したいと思っているのに。でも、彼女は何度でも可能性を捨てなかった。
それは彼女が科学者であるが故なのか。それとも、何かが彼女の心を動かしたのか。
「分かってる分かってる。全部シナリオの範囲内だ。アイズが中央都市を救ったことも、予定のうち。だからさ。そろそろ次のステップに行こうか」
彼女は後ろを振り返り、部下の女に命令した。
「クロムちゃんとカインズ君。二人を生きたままここに連れてきてくれないかな。できれば二人とも連れてきて欲しいけど、難しいようだったらどちらか片方でいいよ」
部下の女は黙って頷き、自らの武器を手にとって部屋を出た。
「返事くらいしてよ。『黙ってろ』って命令は取り消すからさ」
彼女は不満げに言ったが、部下はとうに部屋を出ていた。
静かな部屋に、ディスプレイから出る音のみが響く。
「従順だね、あーちゃんは。そういうところも可愛いよ」
彼女は白衣を脱ぎ、希望の潰えた目で世界を見ていた。
滅んだ国の地下深く、どこよりも悲しいこの場所で。
全ての終わりは、ここから始まったのだった。
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