↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶え損ないの人類共  作者: くまけん
第一章 チェルド大陸編
107/1030

第101話 「血の覚悟」

 その言葉は心の底から放たれたような、根強い意思を感じさせた。絶対に殺してやるという『執念』……。それが『手』を伸ばして、俺達の首を掴もうと迫ってくるような……そんな感覚を覚えた。

 俺達人類は、50年前の『はじまりの日』に絶え損なった……?


「そもそも、何で『はじまりの日』って言うか知ってるか? 人間が大量に死んだ日なら、『終わりの日』とかでもいいのによ」

 センは声色を崩さずに聞いてきた。言われてみればそうだ。『はじまりの日』には、何が『はじまった』んだ。

「作為的なものを感じないか? 誰にとっての、どんな『始まり』だったのか。その答えを、オレは少しだけ知っている。教えてやんねぇけどな!」

「そうか。なら聞くつもりもない。さっさと土に還れ」

 俺は腰のポーチから麻酔針を取り出し、センに向かって投げた。俺の武器は『クロミール』だけじゃない。戦況を変えるためには、戦術を変えるのだ。

 センは俺の手の動きを見て、何かが来ると察したらしい。体を右に傾け、立ち位置をずらした。結果、俺の麻酔針はセンに当たらず、道路に突き刺さった。

 やはり、センの反応速度は目を見張るものがあるな。

「麻酔針、か。ショボい攻撃しやがって。そんな小細工でオレを殺せると思ってんのかよ!」

 またしても挑発。センの方も焦っているのか?

 一刻も早く敵を殺したいのは、どちらも同じ。なら、焦ってミスを犯した方の負けになるだろう。


 切迫する戦場に鳴り響く銃声。

 オーディンが拳銃でセンを撃っていた。センは咄嗟に体を回し、オーディンに肩を向けるようにして立った。そして『セナージ』で銃弾を切り裂く。真っ二つになった銃弾は、木の枝のように二股に分かれて飛んでいった。銃弾の欠片がセンの体のスレスレを通り、道路に衝突していく。

 俺はその様子を目で捉えるのが精一杯だった。なのにセンは、素早く的確な対処をしていた。

「くたばれ」

 センの斬撃がオーディンを襲う。だがオーディンはセンが攻撃モーションに入った時点で、既に回避行動を終了していた。『セナージ』が、何もない空間を切断する。

 素早い攻撃と巧みな回避。その繰り返しが続いていた。


「その狂ったような殺意……。我が輩の悪意に匹敵する脅威だ」

「オレは狂ってねぇよ。欲望に忠実。至って健康な精神だ。テメェ等の方がよっぽど狂ってるぜ。己の中に潜む殺意と向き合わないなんてよぉ……」

 殺意と向き合ってお前のようになるくらいなら、狂った方がマシだ。

 ……と思ったが、殺意から逃げてばかりはいられない。

 俺は自分の殺意から逃げてきた。心が弱い故に、自分の殺人を正当化してきた。いざという時には殺す覚悟があるつもりだったが、やはり殺人が怖かった。仲間を守るために本当の殺意を持つことすら、出来ない女だった。

 今こそ向き合う時なのかもしれない。弱さを断ち切る時だ。ここでセンを殺し、人々の命を守り、俺は覚悟を決めてやる。


 そのためには、俺は血に染まってやるよ。


              *   *   *

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。