↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生先は無人の森でした ~エルフの王子と紡ぐ、ほのぼの子育てならぬ村づくり~  作者: チュチュ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/14

王子様、虫が駄目です


畑仕事が進むにつれ、リアンも少しずつコツを掴んできたようだった。とはいえ、まだまだ覚えることは多い。


「次はこっちの畝も耕さないとな」


「わかった」


意外にも素直に従うようになったリアンに、俺は内心少しだけ驚いていた。最初の頃の刺々しさが嘘のようだ。もっとも、口調自体は相変わらず偉そうなままだが。


「そこの土、もう少し柔らかくしてから種を蒔け」


「はいはい、承知しました王子様」


軽口を叩きながら土を掘り返していたそのとき、大きな芋虫がひょっこりと顔を出した。前世でもそれなりに見慣れたサイズのそれを、俺は特に気にせず手に取ろうとする。


「――っ」


隣から、小さく息を呑む音が聞こえた。振り返ると、リアンが妙に硬直した様子でその芋虫を凝視している。


「……どうした?」


「……いや、何でもない」


明らかに何でもなくはなさそうだった。俺は試しに、その芋虫をリアンの方へ少し近づけてみる。


「うわっ」


普段の落ち着いた様子からは想像もつかない、素っ頓狂な声が上がった。リアンは思い切り後ずさり、剣を持てば誰よりも頼りになるはずの体が、明らかに及び腰になっている。


「……もしかして、虫苦手?」


「そんなわけがあるか」


強がってはいるものの、目は明らかに芋虫から離れないようにしながら、こちらから距離を取ろうとしている。あからさまな矛盾だった。


俺は笑いを堪えながら、素手でその芋虫をつまみ上げた。リアンの顔が、さらに強張る。


「……お前は、恐ろしくないのか」


真顔で聞かれ、俺は思わず吹き出しそうになった。


「矢を向けてきたエルフよりは、全然怖くないな」


そう答えて、俺はその芋虫を畑の外へと逃がしてやった。振り返ると、リアンは安堵したような、それでいてどこか気まずそうな顔をしている。


「……別に、怖がっていたわけではない」


「はいはい」


「本当だ。ただの……不意打ちに驚いただけだ」


「その言い訳、無理があるって」


たまらず声を出して笑うと、リアンは初めて、本当に初めて、俺の前で声を上げて笑った。低く、けれど確かに楽しそうな笑い声だった。


「……お前、笑うこともできたんだな」


「失礼な。私だって、笑うくらいはする」


そう言いながらも、リアンの耳は今にも真っ赤に染まりそうだった。王族らしからぬ、意外すぎる弱点。それを見つけたことが、なんだか無性に嬉しかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。