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転生先は無人の森でした ~エルフの王子と紡ぐ、ほのぼの子育てならぬ村づくり~  作者: チュチュ


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7/14

王子様、畑仕事は未経験


数日が経ち、リアンの傷もだいぶ塞がってきた。まだ本調子とは言えないが、寝たきりだった頃を思えば見違えるほどだ。


「そろそろ、畑を作ろうと思うんだけど」


ある朝、俺がそう切り出すと、リアンは怪訝そうな顔をした。


「畑?」


「そう。いつまでも森で採れるものだけに頼るわけにもいかないだろ。野菜くらい自分たちで育てないと」


自分たちで、という言葉が自然と口をついて出たことに、少し遅れて気づく。リアンも一瞬何か言いたげな顔をしたが、結局何も言わなかった。


「手伝ってくれるか?」


「……仕方ない。世話になっている以上、無為に過ごすつもりはない」


そう言うわりに、どこか及び腰な様子が気になった。だが理由を聞く前に、俺はふと思いついて言ってみた。


「そういえばさ、リアンって王子なんだろ? だったら農作業とか得意そうだよな」


以前、うわごとのように漏らしていた「王子」という単語を、俺はまだ覚えていた。リアンは一瞬顔を強張らせたが、やがて観念したように頷いた。


「……そうだ。私はエルフの王家の末子だ」


「へえ、王子様か」


言われてみれば、その整いすぎた顔立ちにも、時折覗く尊大な物言いにも納得がいく。だが実際に本人の口から聞くと、思っていた以上に実感が湧かないものだった。


「じゃあ余計に期待できるな」


「王子が大根を植えると思うか」


にべもない返事だった。


「思うだろ普通。エルフなんだから土いじりくらい――」


「私は、剣と弓の稽古はしてきたが、畑仕事など一度もしたことがない」


なるほど、これは前途多難そうだ。


結局、二人で畑を耕し始めることになったのだが――案の定、リアンの手つきはひどいものだった。種を蒔く位置は不揃いで、畝の高さもばらばら。鍬の持ち方すら危なっかしく、力任せに振り下ろしては、せっかく耕した土をまた元通りに崩してしまう。


「あー、そこ、種入れたばっかりだったのに」


「……すまない」


珍しく素直に謝る姿がおかしくて、俺は思わず噴き出してしまった。かと思えば、次は水を撒く量を間違え、畝の半分を水浸しにしてしまう。何をやらせても、危なっかしいことこの上ない。


「いや、悪い悪い。でも、王子様がこんなに畑仕事下手だとは思わなかったわ」


「うるさい。剣を持たせれば、お前より百倍は役に立つ」


むきになって言い返すリアンの顔が、いつもよりほんの少し赤い。それが照れなのか、単に不服そうにしているだけなのか、俺にはまだ判断がつかなかった。


けれど、こうして軽口を叩き合えるようになったこと自体が、数日前には考えられなかった変化だ。畑の隅で盛大に土を被ったリアンを眺めながら、俺は密かにそう思っていた。案外、この暮らしも悪くないのかもしれない。

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