表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん、殺し屋少女と家族になる  作者: Atelier Lotus


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/39

第8話 冬埜玲

 少女は綺麗に食器を空にすると、小さく息を吐いた。


「ごちそうさま」


 その一言だけは、年相応の少女らしかった。


 恒一は向かいへ腰を下ろす。


「……さて」


「そろそろ話してもらおうか」


「お前は誰なんだ」


 少女は少しだけ考えると、面倒そうに口を開いた。


「冬埜玲」


「十四歳」


「以上」


「いや、それだけじゃ何も分からない」


 玲は呆れたようにため息をつく。


「殺し屋」


「……は?」


「冬埜家十八代目当主」


 恒一は眉をひそめた。


「冬埜家?」


「……知らないのか」


「知らん」


 玲は肩をすくめ、鼻で笑う。


「お前、本当に何も知らないんだな」


「表しか見てない奴って、そんなもんか」


「裏じゃ有名だぞ」


「殺し屋五家」


「その中でも御三家」


 玲は指を折りながら数えていく。


「第一位」


「天音家」


「第二位」


「冬埜家」


「第三位」


「市之瀬家」


「第四位」


「霧島家」


「第五位」


「鬼灯家」


 そして、小さく続けた。


「その中でも」


「天音家」


「冬埜家」


「市之瀬家」


「この三家が御三家」


「規模も」


「実力も」


「他とは一つ抜けてる」


 玲は淡々と言った。


「私は」


「その冬埜家」


「十八代目当主だ」


 あまりにも現実離れした話だった。


 殺し屋の一族。


 五家。


 御三家。


 当主。


 まるで映画や漫画の世界だ。


 恒一は苦笑する。


「そんな話……」


 だが、その笑みはすぐに消えた。


 脇腹がズキリと痛む。


 先ほど受けた一撃。


 空腹でまともに力が入らなかったとはいえ、自分は十四歳の少女に何もできず、一撃で倒された。


 裏路地で見た暗殺。


 証拠を一切残さない鮮やかな手際。


 そして、この少女の異常な身体能力。


 全部が繋がる。


「……本当に」


「殺し屋なのか」


 玲は当然だと言わんばかりに頷いた。


「そう言ってるだろ」


「私」


「プロだから」


 少しだけ得意そうに胸を張る。


 その姿は年相応の少女なのに、口から出る言葉だけが異様だった。


 恒一はゆっくりと息を吐く。


「じゃあ、一つ聞く」


「俺に何の用だ?」


 玲は湯飲みを持ち上げ、一口飲む。


 そして、何でもないことのように答えた。


「口封じ」


 恒一の表情が固まる。


「……口封じ?」


「うん」


「お前」


「さっき見た」


 その一言で理解した。


 裏路地。


 倒れた男。


 血だまり。


 そして、その場に立っていた玲。


「あの現場か……」


「うん」


「見られた」


「だから」


「本来なら殺す」


 あまりにも淡々とした口調だった。


 まるで「雨が降るから傘を差す」とでも言うような自然さ。


 恒一は思わず苦笑する。


「じゃあ、何で俺は生きてる?」


 玲は少し考えるように首を傾げた。


「腹減ってた」


「……は?」


「動けなかった」


「だから」


「お前の家へ来た」


「飯食わせてもらった」


 そこで玲は小さく頷く。


「だから保留」


「保留って何だよ……」


「恩は返す」


「飯の恩人は殺さない」


 恒一は額へ手を当てた。


「その価値観、めちゃくちゃだろ」


「普通」


「普通じゃない」


 玲は不思議そうな顔のまま、お茶を飲み干した。


 満足そうに息を吐くと、当然のように言う。


「まあ」


「今日から」


「お前が飯を作ればいい」


「私は困らない」


 恒一は天井を見上げ、大きくため息を吐いた。


「……俺は、ものすごく困るんだけどな」


 命を狙われていたはずなのに。


 気が付けば、殺し屋の少女へ食事を作る話になっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ