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おっさん、殺し屋少女と家族になる  作者: Atelier Lotus文庫


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第88話 人払い

 買い物を終えた帰り道。


 二人はいつもの住宅街を並んで歩いていた。


 玲は買い物袋を揺らしながら、小さく呟く。


「今日はラーメンにする」


「昨日も食べただろ」


「ラーメンは別腹だ」


「いや、意味分からん」


 恒一が苦笑した、その時だった。


 玲の足が止まる。


 表情から笑みが消えた。


「……こういち」


「下がれ」


 その一言だけで、空気が変わる。


 恒一も異変を察し、玲の後ろへ下がった。


 道路には誰もいない。


 少し前まで歩いていた人影も。


 車も。


 犬の散歩をしていた老人も。


 まるで最初から存在しなかったかのように消えていた。


「何だ……?」


 静まり返った住宅街。


 その奥から、一人の男がゆっくりと歩いてくる。


 黒いスーツ。


 歳は五十代半ばほど。


 その背には、一振りの巨大な両手剣が背負われていた。


 男は二人の前で立ち止まると、静かに一礼する。


「初めまして」


「冬埜玲さん」


 玲は恒一を庇うように、一歩前へ出た。


「……天音家」


 男は小さく頷く。


「ええ」


「天音剣吾です」


 恒一の身体が強張る。


 ニュースで見た男。


 二十八年前。


 自分の両親を殺した男が、今、目の前に立っていた。


 剣吾は周囲へ一度だけ視線を向ける。


「ご安心ください」


「人払いなら、すでに済ませてあります」


 その声は、驚くほど穏やかだった。


 だが――。


 玲は知っている。


 その穏やかさの奥に潜む、本物の殺意を。


 静まり返った住宅街。


 張り詰めた空気の中、二人は静かに剣吾を見据えた。

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