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第81話 資格
恒一は天井を見つめたまま、小さく息を吐いた。
「俺さ」
「両親が死んでから」
「ずっと思ってたんだ」
玲は黙って耳を傾ける。
「自分だけが」
「世界一不幸だって」
静かな声だった。
「父さんも」
「母さんも」
「突然いなくなった」
「クリスマスも」
「誕生日も」
「家族団らんも」
「全部なくなった」
少しだけ苦笑する。
「だから」
「誰かが幸せそうにしてるのを見るのが嫌だった」
「結婚して」
「子どもがいて」
「笑ってる家族を見るたび」
「いいなって思う反面」
「羨ましくて仕方なかった」
玲は何も言わない。
恒一は続ける。
「でも」
「いつからか思うようになった」
「俺には」
「家族を守る資格なんてないんじゃないかって」
「資格?」
「ああ」
「父さんも母さんも守れなかった」
「そんな俺が」
「妻を守れるのか」
「子どもを守れるのか」
自嘲するように笑う。
「無理だって思った」
「だから」
「結婚しなかった」
「父親になる資格もないって」
部屋に静かな沈黙が流れる。
二十八年間。
恒一は誰にも打ち明けることのなかった本音を、初めて口にした。




