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第80話 結婚
静かな夜。
部屋の明かりは消え、二人はそれぞれ布団へ入っていた。
先ほどまで話していた重苦しい空気は、少しだけ和らいでいる。
しばらく静寂が続いた後、玲がぽつりと口を開いた。
「そういえば」
「ん?」
「お前」
「どうして結婚しない?」
恒一は思わず吹き出した。
「急だな」
「気になった」
「冬埜家では」
「大人になると結婚する」
「ほとんど親戚同士だけどな」
「子どもを産んで」
「次の世代を残す」
「それが当たり前だった」
恒一は苦笑する。
「普通は親戚とは結婚しないぞ」
「そうなのか?」
「ああ」
「好きになった人と結婚するんだ」
玲は少しだけ考え込む。
「好きな人か」
「うん」
少しの沈黙。
玲は再び尋ねた。
「それで」
「どうしてお前は結婚しない?」
恒一は天井を見つめ、小さく息を吐く。
「……長くなるぞ」
「構わない」
玲はそう答えると、恒一の方へ少しだけ身体を向けた。
静かな夜は、まだ終わりそうになかった。




