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おっさん、殺し屋少女と家族になる  作者: Atelier Lotus文庫


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第78話 復讐

 部屋には重い沈黙が流れていた。


 玲はテレビの画面を消すと、静かに恒一を見つめる。


「こういち」


「何だ」


「殺しに行くか?」


 恒一は顔を上げる。


 玲の表情は真剣だった。


「私なら」


「いつでも殺せる」


 静かな声で続ける。


「二十八年」


「刑務所に入ってた」


「腕も鈍ってるはずだ」


「天音家序列第三位でも」


「今の私なら問題ない」


 少しだけ目を伏せる。


「私は」


「もう殺しはしないって決めた」


「でも」


「こういちが望むなら」


 一呼吸置く。


「私は」


「こういちのためになりたい」


「だから」


「必要なら殺す」


 その言葉に嘘はなかった。


 もう人を殺したくはない。


 それでも。


 恩人であり、大切な存在となった恒一の願いなら、自分は再び罪を背負う覚悟があった。


 恒一は何も答えない。


 頭の中には、二十八年前の光景が蘇る。


 血に染まった玄関。


 倒れた父。


 母の叫び。


 そして。


 『……取り返しがつかないな』


 あの男の声。


 憎い。


 殺したい。


 この二十八年間。


 一日たりとも忘れたことはなかった。


 けれど。


 目の前には玲がいる。


 ようやく普通の女の子として笑えるようになった少女。


 その手を、また血で汚させたくなかった。


 恒一は静かに首を横へ振る。


「……大丈夫だ」


 玲はその言葉を聞くと、小さく頷いた。


「そうか」


 それ以上は何も聞かなかった。


 恒一の答えを、そのまま受け止めた。


 部屋には再び静かな時間が流れる。


 復讐心は消えていない。


 許したわけでもない。


 それでも恒一は、自分の憎しみのために、玲の未来を犠牲にするつもりだけはなかった。

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