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おっさん、殺し屋少女と家族になる  作者: Atelier Lotus文庫


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第61話 歴代最強

 恒一は玲を見つめた。


「前に獄蓮会の奴が言ってたよな」


「歴代最強だって」


「ああ」


「どういう意味なんだ?」


 玲は自分の腕を見下ろした。


「冬埜家の人間は」


「普通の人間とは少し違う」


「違う?」


「ああ」


「詳しいことは分からない」


「でも」


「祖先は、昔から日本のある山で自然と共に暮らしていた一族だったと聞いている」


「その体質が受け継がれてるらしい」


 玲は静かに続ける。


「筋肉は大きくならない」


「でも」


「密度が異常に高い」


「見た目より、ずっと力が強い」


「骨も頑丈だ」


「疲れにくい」


「反射神経も速い」


「神経の伝達速度も普通の人とは違う」


「だから」


「小さい頃から身体能力は高かった」


 恒一は何かを思い出したように目を見開く。


「あっ……」


「そういえば」


「ジムでベンチプレスやってた時」


「めちゃくちゃ重い重量を、あんな細い腕で軽々持ち上げてたよな」


「あれか」


 玲は頷く。


「ああ」


「あの程度なら軽い」


「フォームはめちゃくちゃだったけどな」


 恒一は苦笑した。


「あれは教わったことがないからな」


「筋肉の使い方なんて知らない」


「ただ持ち上げただけだ」


「なるほどな……」


 ようやく恒一は納得した。


「でも」


 玲は首を横へ振る。


「私は、それだけじゃなかった」


「冬埜家の人間は」


「人によって特性が違う」


「力が強い人」


「反射神経が優れている人」


「治りが早い人」


「みんな得意なものが違う」


 玲は自分の手を見つめる。


「でも」


「私は違った」


「力も」


「骨も」


「反射神経も」


「神経も」


「疲労耐性も」


「治癒力も」


「全部」


「普通の冬埜家の人間より高かった」


 恒一は息を呑む。


「幸か不幸か」


「冬埜家の特性を、全部強く受け継いだ」


 玲は少しだけ目を伏せた。


「私の父は」


「十七代目当主だった」


 静かな声で続ける。


「でも」


「十歳の時」


「私は父より強くなった」


「だから」


「十八代目当主になった」


 恒一は言葉を失う。


 十歳。


 その年齢で、当主を継いだ。


 それがどれほど異常なことなのか、想像するだけで胸が苦しくなる。


 玲はさらに続けた。


「それと」


「もう一つだけ」


「私には歴代当主にもなかった能力があった」


「能力?」


「ああ」


「戦闘になると」


「世界が遅く見える」


「遅く?」


「ああ」


「相手の動き」


「呼吸」


「重心」


「筋肉の収縮」


「全部が、ゆっくり見える」


「銃弾も?」


「見える」


「スローモーションみたいにな」


 恒一は言葉を失った。


 玲は淡々と続ける。


「だから避けられる」


「だから先に動ける」


「だから勝つ」


「歴代当主にも」


「そんな能力を持った人はいなかったらしい」


 玲は小さく笑う。


「だから」


「いつしか」


「歴代最強」


 そう呼ばれるようになった。


 その声に誇らしさはない。


 あるのは、自分が人間兵器として完成したという、静かな諦めだけだった。

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